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これからの事
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佐伯を部屋に招いた祐二。
菅沼の件を外で話す訳にはいかず、警察まで出て来たのだから尚更だった。
「すみません、片付けてなくて散らかってますが」
そう云いながら、佐伯に椅子を勧める。
取り敢えず冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出すと、それをコップに注いで前に置いた。
「ありがとうございます、いただきます」
コップを持って一口飲んだ後で、佐伯は祐二が話し出すのを待った。なんとなく悪い予感はしている。表情が暗いし、祐二の醸し出すオーラが重そうだった。
「実は、驚かないで欲しいんですけど、.....菅沼さん、自分の胸を包丁で刺して病院に運ばれたんです」
「........ええっ?!ホントですか?いったいどうしてそんな.........」
思った通りの言葉に、祐二は少しためらいながらも、あの部屋で起こったすべての事を佐伯に話して聞かせた。気が重かったが、会社の同僚でもある佐伯には知らせるべきだと思った。これからの事もあり、どんな結末を迎えるのか、今のところは想像でしかないが、多分誰にとっても気持ちのいい物ではないと思う。
「彼女、そんな過去を...........。なんていうか、ちょっと想像出来ませんね。あんなに物静かで穏やかそうな人が..........」
佐伯は顔を曇らせる。
「もう、僕らは菅沼さんに会う事も出来ません。警察に任せるしかないので、岬さんの行方不明の事も、その内ハッキリするかと思いますが。多分、会社の方も大変な事になるのではないでしょうか。最悪の事態を考えておく方がいいと思います」
「.......そうですね。来週には岬さんの親御さんが東京に来るそうです。会社に残した荷物もあるし、寮の部屋の事も。多分、警察の方からも何か話が云っているかもしれないですね」
「ええ、明日になれば、状況はガラッと変わるかもしれない」
祐二も佐伯も暗い表情のまま、俯きながら話すだけ。
「佐伯さんには色々お世話になって、なんだか、ややこしい話を持ち掛けてしまったんじゃないかな」
「いえ、奥村さんの方こそ。岬さんは会社の同寮だし、菅沼さんにしたって、同じ会社に居る者としては関係がありますから。奥村さんの方が巻き込まれて大変な思いをしたんじゃないですか」
確かに、従妹の美乃利が持ち込んだ話とはいえ、祐二は関係者ではない。が、水野を巻き込んだ事で、必然的にこうなってしまったのだ。なんとなく、イヤな予感はあったのに、どうしても水野には引っ張られてしまう。
まあ、それでも、水野の好奇心があったからこそ、此処まで辿り着けたのかもしれなかった。
「美乃利さんたち、大丈夫でしょうかね。そんな光景を目の当たりにして、ショックだったでしょうに」
そう云うと佐伯は首を捻ってうな垂れる。話しを聞くだけでも、ショックが大きいのだ。それなのに、そんな場面に遭遇したらと思うと、精神的にまいってしまうのではないかと考えた。
「水野さんが一緒に居ますから、多分、なんとかしてくれると思います。彼女は強い女性ですから」
頭の中に水野の顔を想像しながら云った。弱音を吐いた姿を見た事がないので、なんとなくだがそう思ってしまった。
「奥村さんは大丈夫ですか?」と訊かれて、はたと自分の事を思い返した。そして、ドラッグストアで睡眠導入剤を買った事を思い出し、「僕は、眠れる薬を買いましたよ」と云う。
「なんですか、それ。用意がいいですね」と、佐伯は堪える様に苦笑いをする。
その顔を見て、祐二も少しだけ気が紛れた。
ひとりで居なくて良かったと、この時、心の中で佐伯に感謝した祐二だった。
菅沼の件を外で話す訳にはいかず、警察まで出て来たのだから尚更だった。
「すみません、片付けてなくて散らかってますが」
そう云いながら、佐伯に椅子を勧める。
取り敢えず冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出すと、それをコップに注いで前に置いた。
「ありがとうございます、いただきます」
コップを持って一口飲んだ後で、佐伯は祐二が話し出すのを待った。なんとなく悪い予感はしている。表情が暗いし、祐二の醸し出すオーラが重そうだった。
「実は、驚かないで欲しいんですけど、.....菅沼さん、自分の胸を包丁で刺して病院に運ばれたんです」
「........ええっ?!ホントですか?いったいどうしてそんな.........」
思った通りの言葉に、祐二は少しためらいながらも、あの部屋で起こったすべての事を佐伯に話して聞かせた。気が重かったが、会社の同僚でもある佐伯には知らせるべきだと思った。これからの事もあり、どんな結末を迎えるのか、今のところは想像でしかないが、多分誰にとっても気持ちのいい物ではないと思う。
「彼女、そんな過去を...........。なんていうか、ちょっと想像出来ませんね。あんなに物静かで穏やかそうな人が..........」
佐伯は顔を曇らせる。
「もう、僕らは菅沼さんに会う事も出来ません。警察に任せるしかないので、岬さんの行方不明の事も、その内ハッキリするかと思いますが。多分、会社の方も大変な事になるのではないでしょうか。最悪の事態を考えておく方がいいと思います」
「.......そうですね。来週には岬さんの親御さんが東京に来るそうです。会社に残した荷物もあるし、寮の部屋の事も。多分、警察の方からも何か話が云っているかもしれないですね」
「ええ、明日になれば、状況はガラッと変わるかもしれない」
祐二も佐伯も暗い表情のまま、俯きながら話すだけ。
「佐伯さんには色々お世話になって、なんだか、ややこしい話を持ち掛けてしまったんじゃないかな」
「いえ、奥村さんの方こそ。岬さんは会社の同寮だし、菅沼さんにしたって、同じ会社に居る者としては関係がありますから。奥村さんの方が巻き込まれて大変な思いをしたんじゃないですか」
確かに、従妹の美乃利が持ち込んだ話とはいえ、祐二は関係者ではない。が、水野を巻き込んだ事で、必然的にこうなってしまったのだ。なんとなく、イヤな予感はあったのに、どうしても水野には引っ張られてしまう。
まあ、それでも、水野の好奇心があったからこそ、此処まで辿り着けたのかもしれなかった。
「美乃利さんたち、大丈夫でしょうかね。そんな光景を目の当たりにして、ショックだったでしょうに」
そう云うと佐伯は首を捻ってうな垂れる。話しを聞くだけでも、ショックが大きいのだ。それなのに、そんな場面に遭遇したらと思うと、精神的にまいってしまうのではないかと考えた。
「水野さんが一緒に居ますから、多分、なんとかしてくれると思います。彼女は強い女性ですから」
頭の中に水野の顔を想像しながら云った。弱音を吐いた姿を見た事がないので、なんとなくだがそう思ってしまった。
「奥村さんは大丈夫ですか?」と訊かれて、はたと自分の事を思い返した。そして、ドラッグストアで睡眠導入剤を買った事を思い出し、「僕は、眠れる薬を買いましたよ」と云う。
「なんですか、それ。用意がいいですね」と、佐伯は堪える様に苦笑いをする。
その顔を見て、祐二も少しだけ気が紛れた。
ひとりで居なくて良かったと、この時、心の中で佐伯に感謝した祐二だった。
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