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入学試験
しおりを挟む魔法学都市の入学試験は、3段階に分かれている。始めに1時間の筆記試験。次に魔力の測定。そして魔法の試験だ。およそだが、昼過ぎには終わるらしい。
俺は今、妹と魔法学都市の中を歩いている。魔法学都市は多くの店が学院を中心に並んでいるのだ。その中でも最も賑やかと言われている大通りを学院に向けて歩いている。
「兄さん、あのお菓子美味しそう!」
先ほどからしきりに妹が話しかけてきている。妹と俺は初めて村から出た。珍しいものを見てテンションが上がっているのかもしれない。
「イタッ!」
俺の方を向いて歩いていた妹が向こうから歩いてきた人に当たってしまった。キリリとした目に金色のウェーブのかかった気の強そうなメスの人間だ。
「あ、すいません」
「気をつけて歩きなさいよ!……あなたたち、もしかして試験を受けにきたの?」
よく見ると、彼女と同じ服を着た人が周りに多くいた。俺たちのようなザ・村人という姿の人は一人もいない。
「ああ、そうなんだ。入学できたらよろしくな、先輩」
「あなた、目上の人への言葉遣いを習わなかったの?全く最近の子供は……」
ブツブツ言いながら先輩と思われる人間は離れて言った。
「あの方と年齢ってそんなに違いましたか?」
「同い年だろう」
この魔法学都市は、魔法の才能と知識さえあれば何歳でも入れるので、同い年でも先輩や後輩はあるという。
「でも、綺麗な人でしたね」
俺たちはまた歩き始めたんだが、話すことはだいたいあの人のことだった。
「そうか?俺にはよくわからん」
「あー、兄さんはそういう人でしたね」
妹がまたよくわからないことを言い出した。
◇
「ぎりぎりね。でもわかったわ。二人とも試験、頑張ってね」
俺たちは学園についた。城のような巨大な建造物の門では、先生と思われる人が受付をしてくれた。俺たち以外の人は遅くても10分前には来ていたそうだ。少しゆっくり歩いていたため、遅くなってしまった。
少し急いで移動したほうがいいかもな。
受付の人に聞いた場所に向かう。そこてまは、受験生と思われる人たちが静かに待っている。多くの椅子と机があった。机の上には名前が書いてあったので、そこに座れと言うことだろうか。
俺たちが部屋につくとすぐに試験が始まることになった。
「では、頑張りましょうね」
俺から見て、妹は筆記試験が一番不安だ。たまにわけのわからない行動をするようなところがあるからな。不安な時、人間はよく縁起を担ぐのだったか?頭でも撫でておこうか。
「それでは、行ってまいります」
妹は恥ずかしそうに自分の席へと移動した。俺も変わったな。より人間らしくなったというのだろうか?
さてと、暇つぶしに謎解きの時間だ。俺は席に着いた。
◇
筆記試験の内容は魔法についてだ。魔法の学校なんだから当然だな。
しかし、適当に解いていたらすぐに終わってしまった。問題は魔法の発動方法や概念。ああ、あと魔法を使う魔物のこともあった。
俺が少しゆっくりしていると見回りをしている人が近寄って来た。
「わからない問題でも諦めるなよ?」
いい人なのだろうか。小声で俺に行ってきた。しかし、俺はわからないのではないのだ。
「いえ、解き終わりました」
「え?まだ15分くらいしか経ってないぞ?」
確かにそうだが、問題数はそんなに多くなかったのだ。一度も止まらずに書いていたら、たいした時間はかからない。すると俺の答案を覗き込み
「うーん、確かに終わってるな。お前は次の魔力測定に行ってよし!」
見回りの人が俺の机の上からテスト用紙を奪って行った。ふむ、終わった人から次に移動できる仕様なのか。
妹の方をちらりと見るがまだ悩んでいるようだ。だが妹なら大丈夫だ。俺は先に行くことにしよう。魔力測定は筆記試験の会場の隣の部屋で行われるようだ。
近かったのですぐに着く。俺はドアをノックして入室の許可を取った。
「今年はやけに早いのね」
魔力測定の準備がまだできていないようだった。メスの人間が椅子に座り、机に隠れて何かごそごそとしていた。どこかで見たことのあるような気がするな。
「あら、あなたはさっきギリギリで来た……」
受付の先生だった。準備が終わったようで、こちらを向いたのだ。
「ギリギリできたのに一番乗りなんて優秀なのね。ところで彼女さんは?」
彼女?一体誰のことだろうか。私の近くにいたメスは妹しかいなかったよな?俺が何も言わないと、少し不思議そうな顔をした。
「まあ、いいわ!さあ魔力測定しちゃいましょう?この水晶に手を置いてね」
時間が惜しいのか先生は俺に急かすように言った。俺は先生の前にある机に置いてある水晶に近づく。このような道具を作り出すところが、人間の特異性だろうか。少し尊敬する。
俺が水晶に触れると水晶が真っ黒になった。
「え、嘘……。測定不能なんて……。何年振りなの……」
ふむ、やはり人間を平均で見ているらしいな。そう考えれば俺の魔力量は異常だな。母親の言っていた通り、俺の種族は魔法が得意らしい。
「ま、まあ、次に行ってちょうだい?あなたならきっと特進クラスになれるわ」
この学院では、生徒のレベルを合わせるために魔法の才能によりクラス分けをしている。5段階あり、高い方からS・A・B・C・Dとなっている。実はこの入学試験。ここまでの試験で入学できるかが決まり、これからやる魔法の試験でクラスが決まるのだ。ちなみに特進クラスとはSクラス。
俺は軽く会釈しながら、試験会場を出た。次の試験はグラウンドで行われるという。
学園は広くここからグラウンドまで10分ほどかかった。
「ん?今年はやけに早いのじゃな」
グラウンドに出ると、皺だらけの長いヒゲを生やした人間がいた。
「わしは校長じゃ。今からお主に自分が出せる最大規模の魔法を放ってもらう。それが試験の内容じゃ。ちなみに、タイミングはいつでもいいのじゃ」
そう言って、老人は離れて行った。あの老人外見に似合わず、とてつもない生命力を持っていることがわかる。
……校長。聞いたことがないな。著名人なのか?やはり人間は数が多く名前が覚えづらい。しかし、最大規模か。今できる最大規模といえば……。
俺は手の上に直径10センチほどの火の玉を出した。
「……はよせんと、次の受験生がくるぞい?」
あの老人はまだやっていないと思っているらしい。順番にくるのだから、初めに来るものは優秀だと思うだろう。
「……これが俺の全力だ」
老人が近くに来て俺の掌の上にある火の玉を指差した。
「これかのお?」
「そうだが?」
老人は何度か俺と火の玉を何度か見てから首を振った。
「……もう行って良いぞ。お主はDクラスじゃ」
やはりそうか。化けの術を使っているので期待はしていなかったが、やはり悔しいな。あれ?俺が悔しいだなんて……。人間になってから感情の起伏が大きくなった気がする。
俺は何も言わずに合格発表がされるであろう、中庭に移動した。
◇
するとそこにはいくつかの椅子と、先ほどの金ウェーブのメスがいた。
「入学おめでとう。私たちはあなたを歓迎する……わ」
うん。向こうも気づいたみたいだな。大きく目を見開いたあとに、急にキリッとして、腕を組んだ。
「あなたが一番だなんて今年の新入生はどうなっているのかしら」
先ほどから俺がすでに入学したかのような喋りようだ。一番乗りだから、というわけではないのだろう?
「その顔、絶対わかってないわね。あなた3つの試験をしたでしょう?どれかに落ちると、学院から追い出されるのよ。そんなことも知らないのね!ちなみに私は生徒会長よ!あなたより1つ上の2等生ね!」
どうやら中庭に着いた時点で合格だという。落ちる気は無かったがやはり安心するな。あとは妹を待つだけか。
ところで、このメス。これだけ敵対的な態度をとっておいて、なかなか優しい。俺の妹には負けるが、面白いやつだ。
「な、なによ!急に笑って!」
おっと、怒らせてしまったか。これ以上敵対されては困るな。
「いや、ごめんな?このメスは優しいやつだと思っただけだ。ありがとう」
俺の言葉を聞いて、金ウェーブは顔を赤くした。
「や、優しい!?あんた一体なんなのよ……しかもメス?!」
メスではないのか?人間は変なところでこだわるものだ。そんなことはどうでもよいのだが、どうしたのだろうか。まさか調子が悪いのか?
俺は金ウェーブのおでこに手を当てた。
確かに少し熱いな。これは調子が悪そうだ。ん?どんどん熱くなってきているな。それに口をパクパクさせている。一体どうしたのだ?本当に調子が悪そうだ。
「……兄さん?なにをしているんですか?」
お。妹が来たようだ。俺は後ろを振り返って、祝辞でもいうことにした。
「ああ、どうやらここに来れたら入学決定らし……どうした?そんな目をして」
俺が振り返って、妹の顔を見ると目が死んでいた。しかも、少しずつ泣きそうになっている。
「兄さん。私という妹がいながら……」
ん?俺が目を離したうちに、金ウェーブはどこかへ行ってしまったようだ。
そんなことよりも妹をなんとかしないとな。
「どうしたんだ?いきなりそんな」
「こっちのセリフですよ!入学もまだしてないのに色恋沙汰とかなんなんですか!どんなプレイボーイですか!」
求愛行動なんて、人間でない俺がするわけない。まあ、こんな時は
「妹よ勘違いだ。俺はそんなことに興味はない」
頭を撫でてやればいい。
「……本当に嘘じゃないですよね?………では、世界で一番好きな人は?」
一番好きな人?人類で最も好意的な存在か……考えたことがなかったな。だが答えは簡単だ。
「お前に決まっているだろ?俺は人間の中で一番お前が好きだよ」
確かに人類の中では一番妹のことを好意的に思っている。生命で言えば、母親だろうか。
「……では、今日は私と一緒にねt」
妹が何か言おうとした所で他の入学生がぞろぞろとやって来た。彼らはそれぞれが喜びをあらわにしていた。その後ろには先生と思われる人間ども。みんな同じ服だからもう確定だな。
そして、一番後ろからあの校長と名乗る老人がやって来た。
「皆の者。合格おめでとう。色々と言いたいことはあるが、長々と喋るのは苦手なのでな。すぐに移動してもらう。では、それぞれのクラスの紙を持っている先生の元に行くのじゃ」
どうやらこれから移動するようだ。そういえば、学校は広いため、一年に5クラスあっても教室は余ると聞いたな。
「……邪魔が入りました。さあ、行きましょう」
どうやら妹も自分の感情を押さえつけたようだ。初めからしろと言いたい。
俺はDのカードをさがす。あの受付の先生が持っていた。つくづく運のある話だ。俺はそこに向かって行った。
「兄さん。Sはあっちですよ?」
妹が俺の服の裾を持つ。違うのだ妹よ。
「俺はDクラスだ」
俺がそう言うと妹は驚愕の顔をした。今まで一度も何かで妹に負けたことなどなかったのだ。当然だろう。ちなみに魔法で勝負はしたことない。
「あ!すいません!それでは行ってまいります。大丈夫ですよ兄さん。人には苦手なことくらいありますから」
妹よ、苦手ではなくできない……。そんなことはどうでもいいか。とりあえず早く移動しなければ。
「ては、また後で門の前で会おう」
妹とはそこで別れて、俺は受付の先生と3回目の邂逅を果たすのだ。
俺が近づいて行くと、先生と目があった。すると妹が向かった方……Sクラスの方を指差した。あの人も勘違いしているようだ。
「俺はあなたのクラスだ。よろしく頼む」
「え?!そうなの?……よろしく…お願いね?」
なんだか腑に落ちていないようだが、本当なのだから仕方がない。
先生の周りには俺を抜いて5人の人間がいた。どうやらこれがDランクらしい。他のクラスには50人くらいいるのだが?
「では、これで全員のようなので教室に移動しますね」
こうして俺の魔法学都市での生活が始まった。
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