ホウセンカ

えむら若奈

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白いアザレアを貴方へ

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「あ、いたいたー!桔平ー!」

 後ろから声が聞こえた。振り返ると、楠本さんが手を振りながら駆け寄ってきている。

「ななみんからのLINE、見るの遅くなっちゃってさ。良かったぁ、合流できて」
「かけるん、ひとりで来たの?」
「今日はひとり。夕方バイトあるし、桔平の絵を見たいだけだからさ。明日、友達連れてくるよ」

 楠本さんは、ななみんって呼んでいるのね。ななみん、かけるん。知らないところで友情?が育まれていたんだなぁ。

「てか桔平、やっぱり見つけやすいわ。めっちゃピンク!」
 
 そう言って、ひとりで大笑いしている。この人こんな感じだったっけ?もっと真面目そうなイメージだったけれど。

「展示観に行くなら、早く行こうぜ。混むからさ」

 楠本さんの言葉をスルーして、桔平くんが言う。米田さんや小林さんのキャラに動じないのは、もしかして楠本さんもそっち系のノリだから?

 とりあえず、4人で絵画科の展示をしている校舎へと向かうことにした。

「愛茉ちゃんは久しぶりだよね。覚えてる?俺のこと」

 楠本さんがニコニコしながら話しかけてくる。すごく人当たり良さそうな笑顔。
 
「覚えてますよ、楠本さん」
「やだなぁ、他人行儀で。翔流でいいよ。敬語もナシね」
「じゃあ、翔流くんで」
「いつも桔平が面倒かけてるでしょ。愛茉ちゃんはしっかりしてそうだから、安心して桔平を任せられるよ」

 翔流くんの言葉に、桔平くんがフッと鼻で笑う。

 ……どうせ子供っぽくてワガママですよ。しっかりしているんじゃなくて、私はただ神経質で潔癖なだけ。桔平くんは、ちゃんとそれを分かっている。

 子供の頃から身の回りのことは自分でやっていたから、家事力という面ではしっかりしているかもしれないけれど。桔平くんの方が世の中のことをよく分かっているし、頭の回転が速くて判断力もある。ただ生活リズムとか食事が適当すぎるだけ。

「……なんか今、2人でアイコンタクト取らなかった?」
「ダメだよ、かけるん。ラブラブな2人の間に割って入ったら」

 桔平くんと私の顔を交互に見比べる翔流くんの腕を、七海が笑顔で引っ張る。やっぱりこの2人って、お似合いな気がするんだけどなぁ。雰囲気とノリが合いそうなんだよね。
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