Girls×Basket〇

遠野そと

文字の大きさ
33 / 51
第1章3 総体地区予選

33. 地区予選迫る

しおりを挟む
 
 放課後、視聴覚室に集合した。
 先日の練習試合の動画から課題を確認するためだ。

「全員集まってるな」

 岩平が入ってきた。無駄な前置きはなしで動画を再生する。動画は東陽の部員が撮影してくれたものだった。
 時間的に全試合は観られない。観たい人はDVDに焼いてくるから続きは家でとのことだ。

 自分が出ている試合をみんなで観るのは楽しみである反面気恥ずかしくもあった。
 岩平の選んだ場面場面の映像を観終わった。

「個人技は抜きにして、チームの動きとしてどう思った」
「やっぱスペースの取り方が悪い。試合中も思ってたけど、こうやって動画で確認するとさらにひどいね」

 先陣を切ったのは舞だった。

 スペーシングの悪さによって、オフェンス時にスクリーンをかけるわけでもないのに隣の選手との距離が近くなり、ディフェンスが一人で二人を守れてしまう状況や、味方が邪魔になってディフェンスが増えたような状況を作ってしまっている場面が多々あった。

「そっ。チームプレー=スペーシングだからその辺しっかり理解した上で練習するぞ」

 再び動画を再生する。今度は岩平の解説付きだ。チャプターをつけてあったらしく際立ってスペーシングの悪いシーンへ飛んだ。
 抜粋した悪いプレーの解説が終わった。体育館へ移動する前に岩平が言った。

「さあ、ステップアップしようか」

 遥は一つ上の段に足をかけたような気持ちになった。
 練習試合では負けた。総体で勝たなければいけない相手はもっと強いかもしれない。それでも遥はこれから強くなれるチームの可能性にわくわくした。


 地区予選抽選日当日。

 放課後。練習メニューをこなし、クールダウン中のことだった。もなかが帰ってきた岩平を目ざとく発見した。

「おかえりー」

 岩平は体育館に入るやもったいぶった顔つきになった。

「どうだった?」

 杏が聞いた。

箕澤みのさわ高校」
「強いの?」
「うちの地区の第二シード」
「地区で二番目に強いってことだよね」
「そうなるけど第一シードとほとんど差はないらしい。二人でかいのがいて高さだけなら箕澤のほうがあるらしい」
「えー、なんとなく第一シードより怖いね。それでどんくらい強いの、どんくらいでかいの」
「まあそう慌てるなって」

 地区予選は八校で行うトーナメント戦。県大会に出場できるのは三校。決勝まで勝ち進んだ二校と、それ以外の負けチームで行う敗者復活戦トーナメントでの優勝チームが県大会出場権を得る。



 初練習試合からしばらくして、「そろそろオフェンスで一本組み立てたいときのフォーメーションとかセットプレーほしいよね」と持ちかけたのは舞だった。

 満場一致で賛成となり、早速チームに適したフォーメーションやセットプレーを考えたり探したりが始まった。

 こんなこともあろうかと、と動画サイトで再生リストに登録しておいた目ぼしいセットプレーなどの動画や、自分で録画した試合をシーンカットで編集したもの、さらにはそれらの動きを図解したプレイブックまで、国内外のプロ・学生に関係なく様々な参考資料を環奈が用意していた。

 岩平は、自分たちでいろいろ考えて練習試合で試してみろ、と言った。俺もいくつか用意するけどな、とも。

 遥は幸せだった。こんな一体感を味わうことは中学時代には決してできなかった。
 全員が同じ方向へ進もうとしている。奇跡だと思った。
 反面、何か悪いことが起きるんじゃないかと怖くなることがあった。あまりにも順調すぎたからだ。



 ぱらぱらマンガをめくるような早さで月日は流れ、地区予選前日を迎えた。

 金曜日の練習後、赤と白、二種類のユニフォームが配られた。
 番号の若い順に一人ずつ呼ばれ受け取る。部員数的にユニフォームを貰えるとわかっていても岩平が名前を呼ぶ瞬間は緊張した。自分が何番をもらえるかはお楽しみだからかもしれない。

『4』舞。『5』杏。『6』もなか。『7』つかさ。『8』遥。『9』早琴。

『8』過去に一度もつけたことのない番号だった。これまでこの数字に特別な気持ちを抱いたことはなかったが、自分の番号になった途端に愛着が湧いた。

 体育館を後にし、いつものように自動販売機前でたむろしていると、考え事をしているのか、つかさの様子がどことなくいつもと違うような気がした。

「つかさちゃん。どうかした?」
「れのも大会に出てくるのかと思って」

 つかさの元チームメイトを目撃した早琴の情報が正しければ、彼女は日本の高校に通っている可能性が高い。
 環奈がこちらを向いた。

「れのさんってどういうプレーヤーなんですか」
「れのは、ディフェンスのスペシャリストって言われてた」
「強いチームの、しかも高校生に混じってる中学生がそう言われるって相当ですね。つかささんでもそのディフェンスは手強かったですか」
「うん。あんまり楽には打たせてくれない。敵にしたら厄介だと思う。でもおもしろそう」

 つかさちゃんにそう言わしめるほどのディフェンス……。
 どれほどのものなのか遥にはうまく想像できなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...