やる気が出る3つの DADA

Jack Seisex

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王国の大統領⇔アート界のキング⇔合衆国の王様

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「あの小便器が、芸術作品だって?」
 倉橋が呟く。
 兄貴に脅されたばかりで、さすがに大きな声は出せなかった。
「そう。どこかの国の(毒舌の漫才師)と同じだ」
「毒舌の漫才師?」
「うん。つまり、権威を茶化すような表現によって、王様を権威の座から引き摺り下ろす。そして、次は、自分が王様になるんだ」
「それが、マルセル・デュシャン?」
 倉橋は声を上げた。
 
 兄貴と倉橋は、いつの間にか、授業中の教室に座っていた。
 先生が、黒板にチョークで何か書いている。美術の授業のようだ。(よく見ると、先生も子供だ)
 新築の建物の匂いのする小学校の美術室。
 二卵性双生児の二人は、実際には教室が同じになることなんて無い。
 なぜって? だって、そんなことしたら、担任もクラスメートも混乱しちゃうじゃないか。
 だから、倉橋には
「これがフィクションに過ぎない」と分かっていた。

  窓から、校庭で子供たちが遊んでいるのが見えている。
 あの楽しそうな遊びは、『ドッチボール』という名前だったっけ。

「……兄貴。俺たちのガキの頃のケンカって、当時は必死だったけど、時間がたったら、ゲラゲラ笑い合って、すぐに仲直りできて……割と素敵だったかもな」
 倉橋が言った。
「ジュニア、無理に美化するなよ」兄貴が笑った。
 なぜか、兄貴の横顔はとても寂しそうだった。

 本物の兄貴は、あの女に刺し殺されていて、目の前の兄貴は「ホログラム」に過ぎないのだ。
(過去を美化するのは、互いを傷つけるだけ)
 倉橋は、自分の腕を眺めた。
 俺はアンドロイド、生身の人間では無い。
 倉橋は、この『DADAの王国』は、自身がアンドロイドであることを、片時でも忘れる為に、兄貴が見せてくれている幻影なのだと気付いた。
(よし)
 倉橋は、立ち上がった。
「兄貴。今から、キャッチボールしようぜ」
 倉橋は、努めて明るく言った。
「OK、ジュニア」
 兄貴が頷く。

 こうして時代錯誤で、芸術的なほどに歪な双子は、校庭へ向かった。
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