三尺刀使いの仮想現実戦記

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華の都へ

土煙に巻かれて

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『なっ、』
「くっ、」
土煙の中で刀とツノの強烈な競り合いを繰り広げます。
「らぁぁぁぁ!」
モォォォォォ!
一寸先は土の色がする。土煙がまだ舞い上がり、刀は依然重い。二度だけ軽くなったがすぐにまた重くなる。
「グゥぅぅ、らぁ!」
私は後ろに飛び土煙からの脱出を謀る。
『逃がさん!』
「っ、清水!」
しかし声が聞こえてすぐに私は刀に何かがぶつかる重い感触を取り戻すことになる。
清水で受けてなんとか崩れた状況から簡易的な構えで受けたが気を抜いたら一瞬で崩れる。非常に不味い状況だ。
「此処は何としても止め続けないと!」
闇雲に横に飛んだしでもしたら刀が折れる可能性がある。折れたらその瞬間にリーチという牛と渡り合う為に必須なアドバンテージを失い流れる様に敗北するだろう。
「土煙が晴れるまでこのままだと良いんですがねぇ」
視界の無い状態での戦闘であれば四人の中じゃ私が最弱だ。幾ら「清水」があるとは言え強敵と視界ゼロで戦えってことは出来ない。
「こういうのは小炎とか楓の方が得意なんだけどなぁ、」
無いものを数えて欲しても意味は無い。ならば、雷雷の様にしてみるか。
目を閉じて、口を閉じる。全身神経に意識を集中させる。
あいつは技一つ一つが早すぎてしてる本人でさえも目では追えない。というか開けると最悪空気抵抗で潰れる。あいつ、神伝神技で自身が燃えてたっけ。
「ッ!」
押しが急に強くなった。何か来るな、
足を踏ん張り飛ばされない様に気をつけて周囲に気を張る。後ろから石が飛んできましたー、とか冗談じゃ済まされない。頭に当たって脳を揺らされたら負ける!
私の生命線は今斬りつけているツノの耐久力だ。ツノを斬り落としたら突進が飛んでくる。ツノを切り落とさない様に、でも私が押されないように絶妙な力加減で刀を押す。
土煙が少し晴れてきた。一寸先は闇状態ではなくなったね。まぁ闇、ではないんだけど。
「またかぁ!」
更に強くツノを押してくる。
「チッ!」
後ろに生じた違和感。コレは、魔法だ!
炭鉱での狩りの途中に魔法を使う敵が居た。ソイツが準備している時とおんなじ感覚。ただ、こっちの方が遥かに強く重い。
後ろから迫ってくる違和感。
私は後ろから迫ってくる魔法が自分の頭を狙う物だと仮定して選ぶ。生命線を離して脳を揺らされる可能性を下げる選択肢を。
ダッ!
私は深くまで入った刀を強引に飛び退きながら刀を抜く。
そして後ろを向き腰を落として屈伸の体を下げている状態にしながら腕を頭の前でクロスさせて頭に何かが当たる可能性を減らす。
頭上を何かが過ぎたのか風が吹き前髪を散らす。
頭には当たらなかった。ただ、背を向けてかがんでいる。非常にまずい状況だ。
私は立ち上がりながら前に跳び着地しながら後ろを振り向く。
土煙は視界が少し土色になるくらいまで晴れていた。
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