影色人生

1 私とは

　私は、どういった人物なのでしょうか。
　人からは真面目だと言われますが、私はそうは思えないのです。もっと、別の何かではないかと、私は常々思っているのです。だって、真面目であれば努力をするでしょう。真面目であれば悪いことなどしないでしょう。真面目であれば、もっともっと。そういう風に私は思うのです。
　全く違う。それは私ではない何かです。私は真面目ではありません。真面目な人間は死にたいと考えることなどないでしょう。
　誰もかれもが表面上の私しか見てくれないのです。誰もかれもが私の作った『私』に騙されているのです。私に最も近しい家族ですらも。

　いつからでしょうか。私が『私』になったのは。少なくとも、幼く、何も知らなかったあの頃は、こんな『私』ではなかったと記憶しているのです。
　何故こんなにも歪んでしまったのでしょうか。
　何故こんなにも苦しいのでしょうか。
　誰かに認めてもらいたいと、愛してほしいと願うのに、私は誰も認めず愛しもしない。
　私という私が他者の存在を否定し、容認する。
　恨めしいと憎みながらも、うらやましいと尊敬の念を向ける。

　矛盾、矛盾、矛盾。
　ああ、なんという矛盾。

　私はいったいどうしたかったのでしょう