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第一章 転生<脱ニートを目指して・・・・・・>
第12話 問題を片付けましょう
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きれいな姿になったクロは、ルディウスに姿をいじられる前の姿とほぼ同じだった。服と靴も新しいものに変えられている。ただ違うのは吊り上がり気味だった目が、今は不安そうに下がっていることだろうか。
「君の名前を教えてくれるかい?」
「……クロ?」
「……どこから来たのかわかるかい?」
「……ど、こ?」
「ルディ、アル。この子はどうしたんだい。」
ロージェスは難しい顔をしてルディウスとアルディスに聞く。
「あのね、どこから来たのか分からないんだって~。」
「きおくそうしつ?なんだ。」
「……そうか。」
そう言って、ロージェスは考えこんでしまった。ティアラーゼは暗い顔になっている。
一方当の本人は――
《こ、これでいいですか?》
自分の演技力でうまくだませているか心配していた。
《うんうん。母上はもともと騙せると思っていたけど、父上もうまく騙せるなんて……すごいね!》
《ああ。詐欺師とか向いてるんじゃないか?》
《……お2人の方がすごいですよ。演技だって知っていても騙されてしまいそうになりました。》
《いや~。》
《照れるな。》
《あ、あんまり表情変えちゃだめだからね。》
《わかってますよ。》
「クロ君、君はこの子達と一緒に居たいのかい。」
「ん……友達、て、…言って、くれた……から……。」
「そう。」
「何か問題でもあるの?」
「父上?」
「ルディとアルにはまだ言ってなかったわね。この人はね、伯爵でお兄様―国王陛下の覚えもめでたい宰相様なのよ。」
「ティア!」
「あら、どうしたの?」
「まだ伝えるのは早い。」
「はくしゃくって、伯爵?」
「ええ、我が家はウィンドーラ伯爵家っていう建国した時からある、由緒正しい家なの。」
「「えぇ!!」」
ルディウスとアルディスは驚く。
《家が意外とすごかったことについて。》
《伯爵って……貴族の中で3番目にえらいんだよな?》
この国の名前はセルジュール国といい、古い文化を残しながら新しいことを取り入れて、様々なことに力を入れている、先進国である。家庭教師は誰もが王は国の奴隷のようなものだと教え、王族はその教えを聞いて育つため、王位の擦り付け合いが激しい。どんなに低くても王位継承権を持っていれば王位を擦り付けられそうになるので、王位継承権を持っている者は自然と有能なものばかりになるそうだ。少しでも油断すると言質を取られ、王様一直線なので嫌でも勉強する。貴族も似たようなものだ。位が高ければ高いほど王族と同じような責任が問われる。当主が次の当主を決めたとき当主になる者は必死に拒否し、当主にならない者たちはその日お祭り騒ぎを起こすのが恒例となっている。
この国は上から、公爵・侯爵・伯爵・辺境伯・子爵・男爵・準男爵・騎士爵があり、例外的に大公爵・名誉爵がある。ウィンドーラ家はこの国で3番目に高い爵位を持ってるのだ。
「ん?母上、お兄様って……。」
「うふふ、私のお兄様は国王様なのよ。」
「ということは……。」
「ルディとアルも王位継承権を持っているの。」
「ルディは7番目、アルは8番目だ。」
《わぁ!お2人ともすごいですね……どうしたんですか、顔真っ青ですよ?》
ヤバいヤバいヤバいヤバイ……。
「今のところ、第一王子と第一王女が最有力国王候補だから、隙さえ見せなければ大丈夫だと思うよ。」
そう言って苦笑するロージェスを見て、ルディウスとアルディスは息を吐く。
「まあ、そういうことで、身分があまり確かでないものを傍に置くのはまずいんだ。」
「そう……ですか。」
「どうにかならないのですか?」
「あらあら、ルディとアルはその子と一緒に居たいのね。」
「「はい!」」
乗り物としてだけど
《ひどいです!》
「なら、少しだけ力を貸しましょう。ビルシュ男爵家の養子にしてもらって、この子達専属の侍従にしましょう。それならいいでしょう?」
「……なるほど。その手があったか。」
「じゃ、じゃあ?」
「大丈夫よ。その代わり、クロ君にはたくさん勉強してもらわなくちゃいけないけど。」
「がん、ばる……!」
「じゃあ、手続きを済ませてしまおう。」
「ありがとう!父上、母上!」
「ふふ、どういたしまして。」
「まあ、これくらいは当然だ。」
こうして、クロはルディウスとアルディスの専属侍従になったのだった。
「改めまして、クロス・ビルシュと申します。これからよろしくお願いします。」
「いやいやいやいや、口調戻ってるよ。ていうか、前より丁寧になってない?」
「記憶喪失の子供の演技はどうしたんだよ。」
「直されました。」
そう言ってにっこりと笑うクロの完璧な笑顔に何かを感じて黙ったルディウスとアルディス。クロはここ1か月、彼が養子となるビルシュ男爵家に滞在していた。そこで何かあったようだ。微妙に自棄になっている感じがぬぐえない。余談だが、クロがいなかったこの1か月、黙って外に出ていたことを咎められ、そんなに暇なら勉強でもしていろと武術と魔法の家庭教師の先生をつけられ、勉強漬けの日々をおくっていた。もっとも、勉強漬けだったのは最初の1週間のみだったが。
「まあ、いっか。」
「はい。私のことは放っておいてくださって結構です。」
「えっと、クロスって呼んだ方がいい?」
「クロとお呼びください。」
「うん。じゃあクロ。僕のことはアルって呼んでね。」
「俺はルディで。」
「かしこまりました。ルディ様、アル様。」
「うんうん。じゃあ行こうか。」
「どこに向かわれるので?」
「「森。」」
「え。」
「実は森に珍しい薬草が生えてるって聞いて。」
「クロが帰ってきてから行こうと思って。」
「よし、行こうか。」
「え……え?」
「「いざ、推定Aランク迷いの森へ!!」」
「えーーーーーー!?」
元魔王と元勇者は、ダークドラゴンを従えて森へ行くのだった。
「君の名前を教えてくれるかい?」
「……クロ?」
「……どこから来たのかわかるかい?」
「……ど、こ?」
「ルディ、アル。この子はどうしたんだい。」
ロージェスは難しい顔をしてルディウスとアルディスに聞く。
「あのね、どこから来たのか分からないんだって~。」
「きおくそうしつ?なんだ。」
「……そうか。」
そう言って、ロージェスは考えこんでしまった。ティアラーゼは暗い顔になっている。
一方当の本人は――
《こ、これでいいですか?》
自分の演技力でうまくだませているか心配していた。
《うんうん。母上はもともと騙せると思っていたけど、父上もうまく騙せるなんて……すごいね!》
《ああ。詐欺師とか向いてるんじゃないか?》
《……お2人の方がすごいですよ。演技だって知っていても騙されてしまいそうになりました。》
《いや~。》
《照れるな。》
《あ、あんまり表情変えちゃだめだからね。》
《わかってますよ。》
「クロ君、君はこの子達と一緒に居たいのかい。」
「ん……友達、て、…言って、くれた……から……。」
「そう。」
「何か問題でもあるの?」
「父上?」
「ルディとアルにはまだ言ってなかったわね。この人はね、伯爵でお兄様―国王陛下の覚えもめでたい宰相様なのよ。」
「ティア!」
「あら、どうしたの?」
「まだ伝えるのは早い。」
「はくしゃくって、伯爵?」
「ええ、我が家はウィンドーラ伯爵家っていう建国した時からある、由緒正しい家なの。」
「「えぇ!!」」
ルディウスとアルディスは驚く。
《家が意外とすごかったことについて。》
《伯爵って……貴族の中で3番目にえらいんだよな?》
この国の名前はセルジュール国といい、古い文化を残しながら新しいことを取り入れて、様々なことに力を入れている、先進国である。家庭教師は誰もが王は国の奴隷のようなものだと教え、王族はその教えを聞いて育つため、王位の擦り付け合いが激しい。どんなに低くても王位継承権を持っていれば王位を擦り付けられそうになるので、王位継承権を持っている者は自然と有能なものばかりになるそうだ。少しでも油断すると言質を取られ、王様一直線なので嫌でも勉強する。貴族も似たようなものだ。位が高ければ高いほど王族と同じような責任が問われる。当主が次の当主を決めたとき当主になる者は必死に拒否し、当主にならない者たちはその日お祭り騒ぎを起こすのが恒例となっている。
この国は上から、公爵・侯爵・伯爵・辺境伯・子爵・男爵・準男爵・騎士爵があり、例外的に大公爵・名誉爵がある。ウィンドーラ家はこの国で3番目に高い爵位を持ってるのだ。
「ん?母上、お兄様って……。」
「うふふ、私のお兄様は国王様なのよ。」
「ということは……。」
「ルディとアルも王位継承権を持っているの。」
「ルディは7番目、アルは8番目だ。」
《わぁ!お2人ともすごいですね……どうしたんですか、顔真っ青ですよ?》
ヤバいヤバいヤバいヤバイ……。
「今のところ、第一王子と第一王女が最有力国王候補だから、隙さえ見せなければ大丈夫だと思うよ。」
そう言って苦笑するロージェスを見て、ルディウスとアルディスは息を吐く。
「まあ、そういうことで、身分があまり確かでないものを傍に置くのはまずいんだ。」
「そう……ですか。」
「どうにかならないのですか?」
「あらあら、ルディとアルはその子と一緒に居たいのね。」
「「はい!」」
乗り物としてだけど
《ひどいです!》
「なら、少しだけ力を貸しましょう。ビルシュ男爵家の養子にしてもらって、この子達専属の侍従にしましょう。それならいいでしょう?」
「……なるほど。その手があったか。」
「じゃ、じゃあ?」
「大丈夫よ。その代わり、クロ君にはたくさん勉強してもらわなくちゃいけないけど。」
「がん、ばる……!」
「じゃあ、手続きを済ませてしまおう。」
「ありがとう!父上、母上!」
「ふふ、どういたしまして。」
「まあ、これくらいは当然だ。」
こうして、クロはルディウスとアルディスの専属侍従になったのだった。
「改めまして、クロス・ビルシュと申します。これからよろしくお願いします。」
「いやいやいやいや、口調戻ってるよ。ていうか、前より丁寧になってない?」
「記憶喪失の子供の演技はどうしたんだよ。」
「直されました。」
そう言ってにっこりと笑うクロの完璧な笑顔に何かを感じて黙ったルディウスとアルディス。クロはここ1か月、彼が養子となるビルシュ男爵家に滞在していた。そこで何かあったようだ。微妙に自棄になっている感じがぬぐえない。余談だが、クロがいなかったこの1か月、黙って外に出ていたことを咎められ、そんなに暇なら勉強でもしていろと武術と魔法の家庭教師の先生をつけられ、勉強漬けの日々をおくっていた。もっとも、勉強漬けだったのは最初の1週間のみだったが。
「まあ、いっか。」
「はい。私のことは放っておいてくださって結構です。」
「えっと、クロスって呼んだ方がいい?」
「クロとお呼びください。」
「うん。じゃあクロ。僕のことはアルって呼んでね。」
「俺はルディで。」
「かしこまりました。ルディ様、アル様。」
「うんうん。じゃあ行こうか。」
「どこに向かわれるので?」
「「森。」」
「え。」
「実は森に珍しい薬草が生えてるって聞いて。」
「クロが帰ってきてから行こうと思って。」
「よし、行こうか。」
「え……え?」
「「いざ、推定Aランク迷いの森へ!!」」
「えーーーーーー!?」
元魔王と元勇者は、ダークドラゴンを従えて森へ行くのだった。
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