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青嵐
一 元治元年八月
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夜半を過ぎても、京のじっとりとした蒸し暑い空気は少しも和らぐことはなく、壬生にある新選組の屯所にまとわりついていた。
屯所のひとつとして借り受けている前川邸は、いつになくひっそりとしている。久方ぶりの、静かな夜だった。眠っている者もいるだろうが、大半は花街である島原か祇園に出かけているのだろう。
土方歳三は、細い月明かりだけを頼りに目当ての部屋へと向かっていた。
元治元年八月。
この二月、新選組は休みなく働いていた。
始まりは六月五日。風の強い日に京の町へ火を放ち、混乱に乗じて帝を長州へ連れ去るという企てをした長州藩や土佐藩の者たちを、新選組が、彼らの会合場所となった旅籠の池田屋で斬ったことである。
さらに六月二十四日、新選組は京へと迫る長州藩兵を迎え撃つために九条河原へと出陣し、陣を敷いた。長州の目的は、新選組の後ろ盾である会津藩と戦い、その藩主であり京都守護職の任に就く松平容保を亡き者にすること。元より長州藩は昨年起きた政変などを理由に、会津藩とは対立を深めていたが、池田屋の件で藩士が死んだことで、ついに会津への怒りが頂点に達したのである。
六月末に、京近くへ長州が布陣してからは睨み合いが続いた。
動きがあったのは七月十九日である。長州は会津と戦う許可を朝廷に求めていたが、それが棄却され、逆に長州を討つように帝から勅命が下った。訴えを退けられた長州藩兵たちは、会津が御所内に陣を敷いていることを理由に、蛤御門へ攻め込んだ。知らせを受けて、新選組も九条河原の陣から御所へ向かって参戦し、敗走する長州藩兵を京の南西にある天王山へと追い詰めた。
戦いを終えた新選組が屯所へ戻ってきたのは、七月二十三日。一月ぶりの帰還だった。
ほかの部屋と続きになっていないその部屋に明かりが灯っていることを確かめると、土方は声もかけずに障子を開けた。
「池田屋の一件に対する恩賞金が、隊士一人一人に配られたと聞いたが」
土方が声をかけるよりも早く、この部屋の主、山南敬助が振り向きもせずにそう言った。
「お前からは隊費にという提案もあったが、ここ最近、隊士たちには無茶をさせているからな」
土方はずかずかと部屋の中へ入り、山南の横に腰をおろす。その視線は、文机の上の書に向けられたままだった。山南は土方より一つ年下の二十九歳だが、互いに余計な気をつかうことはない。
「あれは私の案ではなく、勘定方から頼まれたから提案したものだ。気にする必要はない」
うだるような暑さだというのに、汗ひとつかいていない山南は、その素っ気ない態度も相まって冬の朝を思わせる。小柄でほっそりとした体格と、白い肌に薄く柔らかな顔立ちで、女子どもや町人相手には優しく振る舞うものだから、親切者などと呼ばれているが、冷たく冴えるこの空気が山南の本質だ。ただしそういう姿を見せるのは、真剣を構えているときや、こうして土方と腹蔵のない会話をしているときに限られるので、ほとんどの者は山南の本性を知らない。
「それに、私が言ったのはそういう意味ではない」
「ではなんだ」
「恩賞金が出て、隊士たちのほとんどが島原や祇園へ飲みに出ているのに、なぜお前がここにいるのか聞いている」
「用があるからに決まっているだろう。これを」
土方は懐から布に包まれた金子を取り出して、畳に置いた。ようやく山南の視線が書から外れて、ちらりと金子を見る。
「五両ある。尾形に渡しておいてやってくれないか」
「池田屋の件に尾形君は参加していない。恩賞はないはずだが」
「尾形と山崎に屯所の警備を命じたのは俺だ。結果的に、俺が恩賞を奪ったことになる。山崎には俺から渡しておくが、尾形にはお前から渡してくれ。出動した隊士たちに比べれば少ないが」
山崎烝と尾形俊太郎は、池田屋の夜に屯所の警備に当たっていた隊士だ。
二人以外にあの夜屯所にいたのは、体調を崩していて刀をとれない山南と、暑気あたりで倒れていた三名の隊士、それから池田屋に新選組が踏み込むきっかけとなった古高という男だった。
拷問にかけられたら古高は何をどこまで話すだろうか、あるいは何も話さないだろうと信じるべきか。仲間である古高を助けに行くべきか、それとも見捨てるしかないか。
古高が捕えられたと聞いたときに、彼の仲間が何を考えたか、土方には手に取るようにわかった。古高と新選組への対処を決めるためにどこかへ集まって認識を合わせるはずだという確信もあったが、それでも屯所に山崎と尾形を置いたのは、追い詰められた鼠が何をするかわからなかったからだ。
「お前が渡せばいい」
「俺からでは受け取らない。いただく理由がありませんと言われて終わりだ。だが、お前から渡されれば、尾形は素直に従う」
尾形は山南のことをよく慕っている。山南に言われれば、どんなことでも従うようなところさえあった。
あの夜、土方は山崎と尾形に、屯所が襲撃されたときは山南の指示に従えとしか命じていない。山南とは相談もしなかった。襲撃があれば古高の逃亡を許さぬように殺し、二人のどちらかを走らせて本隊へ連絡し、弔い合戦を挑んでくる者たちを相手取る選択をすることはわかりきっていたからだ。空にしていた屯所を急襲された挙句に古高を逃がせば、新選組の名に傷がつく。
屯所に山崎と尾形を残したのは、二人であれば山南の指示に、命を懸けて従うことがわかっていたからだ。
山南と山崎と尾形は、土方にとってそういう男たちだった。
「わかった。私が、お前からだと言って渡しておこう」
山南が、金子を懐に入れる。
「……山南。今回の件、お前はどう見た」
「一歩進んだと思う。蛤御門での戦いを指揮したのは、禁裏守衛総督の一橋候だ。あの方の道は間違いなく、新選組の目指すところと一致されている。もちろん、帝が目指すところとも」
複雑に絡み合っていても、政局を見つめる山南の眼は冷静で正確だ。土方はその眼を信頼していた。
今上帝、一橋慶喜、会津の松平容保、そして京都所司代であり、松平容保の実弟でもある桑名藩主の松平定敬が目指しているのは、朝廷と幕府が一体化した強固な体制である。異国の脅威が迫る中、国力を最大に保つことは、日本がこれからも独立国家として歩むためには必要不可欠であり、そのためには最も力のある朝廷と幕府が手を組むべきだという考えだ。新選組も会津の元で、同じ考えを持って動いている。
今上帝は妹婿でもある将軍の徳川家茂に篤い信頼を置いており、幕府と共にことに当たろうという考えも強い。今回、長州ではなく会津に味方したのも、彼らと考えを同じくしているという表明だった。
「一橋候を買っているようだが、今、京ではあの人の人気は地に落ちているぞ」
新選組が捕縛した古高は、七月十九日からの争いの中、獄舎で殺された。一橋慶喜の命だという。逃亡の危険があるからと獄中にいる者たちを無惨に殺したと、元より長州贔屓の京の民からは非難轟々だ。
「判断の早い将は、それだけでも有能だ」
山南は変わらずに一橋慶喜を称賛する。山南とてあの池田屋の夜に、ことが起これば同じことをしようと思っていたはずなので、当然かもしれなかった。
「それに人気がないのは、会津も、私たちも同じだ」
「それもそうだな」
会津の京での評判はすこぶる悪い。蛤御門の戦いの最中に起きた火災で京の町のかなりの範囲が焼けたが、これは会津の失火だという根も葉もない流言が町では飛び交っているほどだ。当然、その手先である新選組も人気などあるはずがなかった。
「……私は今回の件を、江戸の幕閣がどうとらえるかが気になっている。京から遠く離れた江戸からでは、この国の現状が正しく見えていないのではないか」
将軍のお膝元である江戸は、幕府の支配が最も強い場所だ。そこにいる幕閣からすれば、幕府がわざわざ朝廷と組む必要性などないに等しい。彼らからすれば、幕府と近しい一橋慶喜や会津が朝廷の信頼を得て、その勝手を抑えられるならば、それで十分に見えているのだ。
「黒船が来る前の、江戸にある幕府だけで政治をして、朝廷は黙って幕府に従っていればいいという考えは、もう古い」
「ああ、私もそう思う。恐ろしいのは、この微妙なすれ違いが、破滅につながるのではないかということだ」
朝廷と幕府が一つの政体を成すべきという考えと、幕府のみで政治を進めるという考えは絶対に両立しない。
幕閣も帝を敬う気持ちはあるし、帝や一橋慶喜、会津にも幕府を重視する気持ちはある。しかしその目指すところは、最後の最後で決定的に違うのだ。
「大樹公のお考えが、俺には一番わからない。義理の兄である帝のことも、かつて後見役だった一橋候のことも悪くは思っておられないとは思うが、江戸の幕閣を切り捨てて京都へ来られることもない」
「板挟みなのかもしれない。聡明で、お優しい方だと聞く。みなの心がわかるからこそ、余計に道を選べないのではないか」
「……なるほど。お前が一橋候を評価している理由が、わかった気がする」
土方の言葉に山南が小さく笑んだ。
「山南。近藤さんとも、話はしたか」
新選組の局長を務める近藤勇は、多摩の百姓の生まれだが、剣の腕を見込まれて江戸市ヶ谷の試衛館道場に本拠を置く天然理心流の跡継ぎになった男だった。現在の新選組の幹部は、ほとんどが近藤を慕って試衛館に出入りしていた者たちで構成されている。総長を務める山南、そして副長の土方も、この試衛館の者だった。
「いや、していない。この間も、体調はどうだ、剣はいつになったらとれそうかと、お気遣いいただいたが」
「……俺は、近藤さんとお前にこそ、こういう政治の話をしてもらいたい。昔のように」
江戸にいたころ、政治談議よりも剣術談議が好みのほかの者たちを放って、夜毎、近藤と土方と山南の三人は、これからの日本はどうなっていくのか、どうあるべきかという話を交わしていた。あの頃の山南は長州に近いような考えを語っていたが、今の山南はもっと大局を見る眼を養っている。今こそ、山南の考えは近藤の役に立つように、土方には思えた。
「……近藤さんのお考えも、進んでおられる道も、間違っていると思えば言う。だが、今の近藤さんの考えに、私が口を挟むところはない」
山南の声からは、先ほどまであった自信が消えている。
「調子は……よくないのか」
昨年の秋に大きな怪我をして以来、山南は刀を握っていなかった。商家に押し入った不逞浪士を捕えようとしたときに大刀を折られ、傷を負ったのだ。
山南がどこか近藤と距離をとるようになったのは、それからだった。剣客集団である新選組にあって刀をとれないという事実が山南に負い目を感じさせているのか、それとも近藤が山南に遠慮をしているのか。恐らく両方だろうと土方は思っていた。
「刀はまだ振れない」
山南が怪我をしたと最初に聞いたとき、ありえないと、土方は思った。
山南の剣の腕は一級品だ。江戸で一番といわれる剣法である北辰一刀流を納め、それでは飽き足らず、実戦剣法である天然理心流に鞍替えした山南は、道場でも実戦でも映える、美しく磨き抜かれた極上の剣を振るう。その腕は昨夏、会津侯の前で開かれた御前試合で、剣術の最終試合を務めたほどだ。そこらの不逞の輩がいくら束になろうとも、山南に傷ひとつ負わせることはできない確信があった。
しかし事実として山南は生死を彷徨うような傷を負い、ようやく怪我が治ってきたと思った頃からはずっと、体調を崩している。
「医者はなんと言っている」
「刀は駄目だと」
埒があかなかった。
伝染するような病ではないと聞いているが、どこが悪いのかを山南は土方に言わない。
「……お前はいつも、死に場所を探しているように見える」
調子を聞いたのに、いいとも悪いとも返ってこず、ただ刀を握れるかどうかだけが返ってくるのがいい例だ。
「どういう意味だ」
「そのままの意味だ。昔……死ぬならば戦いの中でと、言っていた」
聞いたのがいつだったかは、土方自身も覚えていない。まだ市ヶ谷の試衛館道場にいたころに聞いた話かもしれなかった。
「武士ならば、戦場で散りたいと思うのはそうおかしな話ではない」
「俺はお前を、戦場で死なせる気はない」
土方はそう言って山南を睨みつけた。山南は平然と土方の視線を受け流している。
「お前には剣以外の価値もある」
「私に、刀を振るわなくてもいいと言うのか。お前」
「そうだ」
今度は、山南の剣呑に光った刺すような視線を土方が受け流す。
「……呪いだな、それは」
「馬鹿、寿ぎだ。畳の上で死ぬ方がよほど幸せだと思わないか」
山南は思わないとも思うとも言わなかった。土方もそれ以上は問わない。
無駄だということも、わかっていた。文も武も、人並み以上にできる男なのだ。どちらか一つで生きるという考えを、受け入れるわけがなかった。土方も本気で言ったわけではない。
「山南先生、失礼します。尾形です」
障子の向こうから、少し高い柔らかな声が聞こえた。
「どうぞ」
山南の返事を待って障子が開き、尾形が顔を出す。月代を綺麗に剃って髷を結い、細面に切れ長の目をした尾形は、神経質な雰囲気の漂う男だ。
「……お話声がしたと思ったら、いらしてたんですか。土方先生」
「俺がいたら、何か都合でも悪いのか」
落胆したような雰囲気を感じて、土方は尾形に尋ねる。
「いえ。ただ、恩賞金も出ましたので、土方先生は島原に行ったものとばかり。烝さんも、今日は土方先生を含めたほとんどの隊士が、島原や祇園にくりだすんじゃないかと言ってましたし。土方先生も飲まれますか」
「ああ」
首肯すると、尾形が杯を畳の上に置く。山南の前に一つ、土方の前に一つ。
「用意がいいな。それはなんだ」
盆の上に置かれたままの杯を土方は指差した。
「これは烝さんの分です」
「俺を外して、三人で飲もうとしていたわけだ」
「土方、あまり虐めるな。どうせ土方はいないと、最初に言ったのは私だ」
やんわりと山南が尾形を庇う。尾形は銚子と山崎の分だという杯を置くと、またすぐに来ますと言って部屋を出て行った。
「お前、体調が悪いのに酒を飲むつもりか」
「舐める程度だ」
山南が手酌で自分の杯に酒を注ぐ。
「お前こそ、いいのか。不在の間に、屯所まで女たちから文が届いていたが」
「商売女だ。誰も本気ではないし、俺は別の女と遊んでいるんだろうと思うだけだ。それに、女に求められているのが俺自身とも限らないと考えるより、お前たちと飲む方がよほどいい」
土方は自他共に認める美男子だ。町を歩いて流し目の一つでも送れば、女たちの黄色い悲鳴が聞こえるし、花街でも買われたがる妓女がいくらでもいる。
ただ、馴染みの遊女は何人かいても、これと決めた女はいなかった。どれだけ土方の前でいい顔をしていても、新選組と敵対している者たちと情を交わしている女かもしれない、新選組の内情を知りたいだけかもしれないという思いが拭えず、心の内を全て曝け出して、情を交わすような仲になりたいと思えない。
「江戸にいた頃、飲みに行くと必ず女関係のいざこざに周囲を巻き込んでいた男の言葉とは思えない」
珍しく山南が声を上げて笑う。
江戸にいたころ、土方の相手は、評判の商家の看板娘から、箱入り娘、人妻まで様々だった。手当たり次第に手を出しては別れるを繰り返していたので、妹を泣かされただの恋人に手を出されただのと因縁をつけられて絡まれたものだ。
土方の剣技が実戦向きなのは、そういう修羅場を経てきたからなのだろうと、昔、山南が妙な納得の仕方をしていたことを思い出す。
「お前がいれば、喧嘩は負けなかったな」
「お前も、喧嘩は強かった。道場では殴りも蹴りも砂かけも許されないから弱かっただけで」
「言っておくが、弱くはない。お前たちが強すぎるだけだ」
「そういうことにしておいてやろう」
山南が銚子を差し出してきて、土方も杯を持ち上げる。
「たまには、こんな夜もいい」
土方の言葉に山南が頷いて、宣言通り、ほんの僅かだけ酒を舐めた。
屯所のひとつとして借り受けている前川邸は、いつになくひっそりとしている。久方ぶりの、静かな夜だった。眠っている者もいるだろうが、大半は花街である島原か祇園に出かけているのだろう。
土方歳三は、細い月明かりだけを頼りに目当ての部屋へと向かっていた。
元治元年八月。
この二月、新選組は休みなく働いていた。
始まりは六月五日。風の強い日に京の町へ火を放ち、混乱に乗じて帝を長州へ連れ去るという企てをした長州藩や土佐藩の者たちを、新選組が、彼らの会合場所となった旅籠の池田屋で斬ったことである。
さらに六月二十四日、新選組は京へと迫る長州藩兵を迎え撃つために九条河原へと出陣し、陣を敷いた。長州の目的は、新選組の後ろ盾である会津藩と戦い、その藩主であり京都守護職の任に就く松平容保を亡き者にすること。元より長州藩は昨年起きた政変などを理由に、会津藩とは対立を深めていたが、池田屋の件で藩士が死んだことで、ついに会津への怒りが頂点に達したのである。
六月末に、京近くへ長州が布陣してからは睨み合いが続いた。
動きがあったのは七月十九日である。長州は会津と戦う許可を朝廷に求めていたが、それが棄却され、逆に長州を討つように帝から勅命が下った。訴えを退けられた長州藩兵たちは、会津が御所内に陣を敷いていることを理由に、蛤御門へ攻め込んだ。知らせを受けて、新選組も九条河原の陣から御所へ向かって参戦し、敗走する長州藩兵を京の南西にある天王山へと追い詰めた。
戦いを終えた新選組が屯所へ戻ってきたのは、七月二十三日。一月ぶりの帰還だった。
ほかの部屋と続きになっていないその部屋に明かりが灯っていることを確かめると、土方は声もかけずに障子を開けた。
「池田屋の一件に対する恩賞金が、隊士一人一人に配られたと聞いたが」
土方が声をかけるよりも早く、この部屋の主、山南敬助が振り向きもせずにそう言った。
「お前からは隊費にという提案もあったが、ここ最近、隊士たちには無茶をさせているからな」
土方はずかずかと部屋の中へ入り、山南の横に腰をおろす。その視線は、文机の上の書に向けられたままだった。山南は土方より一つ年下の二十九歳だが、互いに余計な気をつかうことはない。
「あれは私の案ではなく、勘定方から頼まれたから提案したものだ。気にする必要はない」
うだるような暑さだというのに、汗ひとつかいていない山南は、その素っ気ない態度も相まって冬の朝を思わせる。小柄でほっそりとした体格と、白い肌に薄く柔らかな顔立ちで、女子どもや町人相手には優しく振る舞うものだから、親切者などと呼ばれているが、冷たく冴えるこの空気が山南の本質だ。ただしそういう姿を見せるのは、真剣を構えているときや、こうして土方と腹蔵のない会話をしているときに限られるので、ほとんどの者は山南の本性を知らない。
「それに、私が言ったのはそういう意味ではない」
「ではなんだ」
「恩賞金が出て、隊士たちのほとんどが島原や祇園へ飲みに出ているのに、なぜお前がここにいるのか聞いている」
「用があるからに決まっているだろう。これを」
土方は懐から布に包まれた金子を取り出して、畳に置いた。ようやく山南の視線が書から外れて、ちらりと金子を見る。
「五両ある。尾形に渡しておいてやってくれないか」
「池田屋の件に尾形君は参加していない。恩賞はないはずだが」
「尾形と山崎に屯所の警備を命じたのは俺だ。結果的に、俺が恩賞を奪ったことになる。山崎には俺から渡しておくが、尾形にはお前から渡してくれ。出動した隊士たちに比べれば少ないが」
山崎烝と尾形俊太郎は、池田屋の夜に屯所の警備に当たっていた隊士だ。
二人以外にあの夜屯所にいたのは、体調を崩していて刀をとれない山南と、暑気あたりで倒れていた三名の隊士、それから池田屋に新選組が踏み込むきっかけとなった古高という男だった。
拷問にかけられたら古高は何をどこまで話すだろうか、あるいは何も話さないだろうと信じるべきか。仲間である古高を助けに行くべきか、それとも見捨てるしかないか。
古高が捕えられたと聞いたときに、彼の仲間が何を考えたか、土方には手に取るようにわかった。古高と新選組への対処を決めるためにどこかへ集まって認識を合わせるはずだという確信もあったが、それでも屯所に山崎と尾形を置いたのは、追い詰められた鼠が何をするかわからなかったからだ。
「お前が渡せばいい」
「俺からでは受け取らない。いただく理由がありませんと言われて終わりだ。だが、お前から渡されれば、尾形は素直に従う」
尾形は山南のことをよく慕っている。山南に言われれば、どんなことでも従うようなところさえあった。
あの夜、土方は山崎と尾形に、屯所が襲撃されたときは山南の指示に従えとしか命じていない。山南とは相談もしなかった。襲撃があれば古高の逃亡を許さぬように殺し、二人のどちらかを走らせて本隊へ連絡し、弔い合戦を挑んでくる者たちを相手取る選択をすることはわかりきっていたからだ。空にしていた屯所を急襲された挙句に古高を逃がせば、新選組の名に傷がつく。
屯所に山崎と尾形を残したのは、二人であれば山南の指示に、命を懸けて従うことがわかっていたからだ。
山南と山崎と尾形は、土方にとってそういう男たちだった。
「わかった。私が、お前からだと言って渡しておこう」
山南が、金子を懐に入れる。
「……山南。今回の件、お前はどう見た」
「一歩進んだと思う。蛤御門での戦いを指揮したのは、禁裏守衛総督の一橋候だ。あの方の道は間違いなく、新選組の目指すところと一致されている。もちろん、帝が目指すところとも」
複雑に絡み合っていても、政局を見つめる山南の眼は冷静で正確だ。土方はその眼を信頼していた。
今上帝、一橋慶喜、会津の松平容保、そして京都所司代であり、松平容保の実弟でもある桑名藩主の松平定敬が目指しているのは、朝廷と幕府が一体化した強固な体制である。異国の脅威が迫る中、国力を最大に保つことは、日本がこれからも独立国家として歩むためには必要不可欠であり、そのためには最も力のある朝廷と幕府が手を組むべきだという考えだ。新選組も会津の元で、同じ考えを持って動いている。
今上帝は妹婿でもある将軍の徳川家茂に篤い信頼を置いており、幕府と共にことに当たろうという考えも強い。今回、長州ではなく会津に味方したのも、彼らと考えを同じくしているという表明だった。
「一橋候を買っているようだが、今、京ではあの人の人気は地に落ちているぞ」
新選組が捕縛した古高は、七月十九日からの争いの中、獄舎で殺された。一橋慶喜の命だという。逃亡の危険があるからと獄中にいる者たちを無惨に殺したと、元より長州贔屓の京の民からは非難轟々だ。
「判断の早い将は、それだけでも有能だ」
山南は変わらずに一橋慶喜を称賛する。山南とてあの池田屋の夜に、ことが起これば同じことをしようと思っていたはずなので、当然かもしれなかった。
「それに人気がないのは、会津も、私たちも同じだ」
「それもそうだな」
会津の京での評判はすこぶる悪い。蛤御門の戦いの最中に起きた火災で京の町のかなりの範囲が焼けたが、これは会津の失火だという根も葉もない流言が町では飛び交っているほどだ。当然、その手先である新選組も人気などあるはずがなかった。
「……私は今回の件を、江戸の幕閣がどうとらえるかが気になっている。京から遠く離れた江戸からでは、この国の現状が正しく見えていないのではないか」
将軍のお膝元である江戸は、幕府の支配が最も強い場所だ。そこにいる幕閣からすれば、幕府がわざわざ朝廷と組む必要性などないに等しい。彼らからすれば、幕府と近しい一橋慶喜や会津が朝廷の信頼を得て、その勝手を抑えられるならば、それで十分に見えているのだ。
「黒船が来る前の、江戸にある幕府だけで政治をして、朝廷は黙って幕府に従っていればいいという考えは、もう古い」
「ああ、私もそう思う。恐ろしいのは、この微妙なすれ違いが、破滅につながるのではないかということだ」
朝廷と幕府が一つの政体を成すべきという考えと、幕府のみで政治を進めるという考えは絶対に両立しない。
幕閣も帝を敬う気持ちはあるし、帝や一橋慶喜、会津にも幕府を重視する気持ちはある。しかしその目指すところは、最後の最後で決定的に違うのだ。
「大樹公のお考えが、俺には一番わからない。義理の兄である帝のことも、かつて後見役だった一橋候のことも悪くは思っておられないとは思うが、江戸の幕閣を切り捨てて京都へ来られることもない」
「板挟みなのかもしれない。聡明で、お優しい方だと聞く。みなの心がわかるからこそ、余計に道を選べないのではないか」
「……なるほど。お前が一橋候を評価している理由が、わかった気がする」
土方の言葉に山南が小さく笑んだ。
「山南。近藤さんとも、話はしたか」
新選組の局長を務める近藤勇は、多摩の百姓の生まれだが、剣の腕を見込まれて江戸市ヶ谷の試衛館道場に本拠を置く天然理心流の跡継ぎになった男だった。現在の新選組の幹部は、ほとんどが近藤を慕って試衛館に出入りしていた者たちで構成されている。総長を務める山南、そして副長の土方も、この試衛館の者だった。
「いや、していない。この間も、体調はどうだ、剣はいつになったらとれそうかと、お気遣いいただいたが」
「……俺は、近藤さんとお前にこそ、こういう政治の話をしてもらいたい。昔のように」
江戸にいたころ、政治談議よりも剣術談議が好みのほかの者たちを放って、夜毎、近藤と土方と山南の三人は、これからの日本はどうなっていくのか、どうあるべきかという話を交わしていた。あの頃の山南は長州に近いような考えを語っていたが、今の山南はもっと大局を見る眼を養っている。今こそ、山南の考えは近藤の役に立つように、土方には思えた。
「……近藤さんのお考えも、進んでおられる道も、間違っていると思えば言う。だが、今の近藤さんの考えに、私が口を挟むところはない」
山南の声からは、先ほどまであった自信が消えている。
「調子は……よくないのか」
昨年の秋に大きな怪我をして以来、山南は刀を握っていなかった。商家に押し入った不逞浪士を捕えようとしたときに大刀を折られ、傷を負ったのだ。
山南がどこか近藤と距離をとるようになったのは、それからだった。剣客集団である新選組にあって刀をとれないという事実が山南に負い目を感じさせているのか、それとも近藤が山南に遠慮をしているのか。恐らく両方だろうと土方は思っていた。
「刀はまだ振れない」
山南が怪我をしたと最初に聞いたとき、ありえないと、土方は思った。
山南の剣の腕は一級品だ。江戸で一番といわれる剣法である北辰一刀流を納め、それでは飽き足らず、実戦剣法である天然理心流に鞍替えした山南は、道場でも実戦でも映える、美しく磨き抜かれた極上の剣を振るう。その腕は昨夏、会津侯の前で開かれた御前試合で、剣術の最終試合を務めたほどだ。そこらの不逞の輩がいくら束になろうとも、山南に傷ひとつ負わせることはできない確信があった。
しかし事実として山南は生死を彷徨うような傷を負い、ようやく怪我が治ってきたと思った頃からはずっと、体調を崩している。
「医者はなんと言っている」
「刀は駄目だと」
埒があかなかった。
伝染するような病ではないと聞いているが、どこが悪いのかを山南は土方に言わない。
「……お前はいつも、死に場所を探しているように見える」
調子を聞いたのに、いいとも悪いとも返ってこず、ただ刀を握れるかどうかだけが返ってくるのがいい例だ。
「どういう意味だ」
「そのままの意味だ。昔……死ぬならば戦いの中でと、言っていた」
聞いたのがいつだったかは、土方自身も覚えていない。まだ市ヶ谷の試衛館道場にいたころに聞いた話かもしれなかった。
「武士ならば、戦場で散りたいと思うのはそうおかしな話ではない」
「俺はお前を、戦場で死なせる気はない」
土方はそう言って山南を睨みつけた。山南は平然と土方の視線を受け流している。
「お前には剣以外の価値もある」
「私に、刀を振るわなくてもいいと言うのか。お前」
「そうだ」
今度は、山南の剣呑に光った刺すような視線を土方が受け流す。
「……呪いだな、それは」
「馬鹿、寿ぎだ。畳の上で死ぬ方がよほど幸せだと思わないか」
山南は思わないとも思うとも言わなかった。土方もそれ以上は問わない。
無駄だということも、わかっていた。文も武も、人並み以上にできる男なのだ。どちらか一つで生きるという考えを、受け入れるわけがなかった。土方も本気で言ったわけではない。
「山南先生、失礼します。尾形です」
障子の向こうから、少し高い柔らかな声が聞こえた。
「どうぞ」
山南の返事を待って障子が開き、尾形が顔を出す。月代を綺麗に剃って髷を結い、細面に切れ長の目をした尾形は、神経質な雰囲気の漂う男だ。
「……お話声がしたと思ったら、いらしてたんですか。土方先生」
「俺がいたら、何か都合でも悪いのか」
落胆したような雰囲気を感じて、土方は尾形に尋ねる。
「いえ。ただ、恩賞金も出ましたので、土方先生は島原に行ったものとばかり。烝さんも、今日は土方先生を含めたほとんどの隊士が、島原や祇園にくりだすんじゃないかと言ってましたし。土方先生も飲まれますか」
「ああ」
首肯すると、尾形が杯を畳の上に置く。山南の前に一つ、土方の前に一つ。
「用意がいいな。それはなんだ」
盆の上に置かれたままの杯を土方は指差した。
「これは烝さんの分です」
「俺を外して、三人で飲もうとしていたわけだ」
「土方、あまり虐めるな。どうせ土方はいないと、最初に言ったのは私だ」
やんわりと山南が尾形を庇う。尾形は銚子と山崎の分だという杯を置くと、またすぐに来ますと言って部屋を出て行った。
「お前、体調が悪いのに酒を飲むつもりか」
「舐める程度だ」
山南が手酌で自分の杯に酒を注ぐ。
「お前こそ、いいのか。不在の間に、屯所まで女たちから文が届いていたが」
「商売女だ。誰も本気ではないし、俺は別の女と遊んでいるんだろうと思うだけだ。それに、女に求められているのが俺自身とも限らないと考えるより、お前たちと飲む方がよほどいい」
土方は自他共に認める美男子だ。町を歩いて流し目の一つでも送れば、女たちの黄色い悲鳴が聞こえるし、花街でも買われたがる妓女がいくらでもいる。
ただ、馴染みの遊女は何人かいても、これと決めた女はいなかった。どれだけ土方の前でいい顔をしていても、新選組と敵対している者たちと情を交わしている女かもしれない、新選組の内情を知りたいだけかもしれないという思いが拭えず、心の内を全て曝け出して、情を交わすような仲になりたいと思えない。
「江戸にいた頃、飲みに行くと必ず女関係のいざこざに周囲を巻き込んでいた男の言葉とは思えない」
珍しく山南が声を上げて笑う。
江戸にいたころ、土方の相手は、評判の商家の看板娘から、箱入り娘、人妻まで様々だった。手当たり次第に手を出しては別れるを繰り返していたので、妹を泣かされただの恋人に手を出されただのと因縁をつけられて絡まれたものだ。
土方の剣技が実戦向きなのは、そういう修羅場を経てきたからなのだろうと、昔、山南が妙な納得の仕方をしていたことを思い出す。
「お前がいれば、喧嘩は負けなかったな」
「お前も、喧嘩は強かった。道場では殴りも蹴りも砂かけも許されないから弱かっただけで」
「言っておくが、弱くはない。お前たちが強すぎるだけだ」
「そういうことにしておいてやろう」
山南が銚子を差し出してきて、土方も杯を持ち上げる。
「たまには、こんな夜もいい」
土方の言葉に山南が頷いて、宣言通り、ほんの僅かだけ酒を舐めた。
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