オリンピック選手金メダリストが転生後、最高の武器屋のマスターになった

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【第3章:王都編】 第3話「灰の楽園、再起動」

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夜。
王都の片隅――かつて地下監獄として使われていた廃区画。

その奥深く、闇の中で複数の足音が響いていた。

「……報告通り、《プロメテア》の炉には、“核鋼(コアスチール)”がある。精錬されたそれは、我らが計画の“起動鍵”だ」

鈍く光る仮面を被った男が、そう言った。

「第七分隊、すでに接近済み。作戦は“強奪”ではなく、“奪取と破壊”……」

「灰に還せ」と、男は呟く。

かつて隼人が世界武具大会で撃退した反乱組織《灰の楽園》。
その残党は、王国の混乱に乗じて再び動き出していた。

 



 

そのころ、《プロメテア》では、炉の火が再び灯っていた。

「……さて、クロード。お前に頼みたいことがある」

「また無茶言うんだろ、どうせ」

「王都の北部、〈黒煙の谷〉に、“竜骨鉱”ってのが採れるらしい。
ミスリルの代替として使えそうなんだが、扱いが難しいらしい」

「はいはい。要するに、“危険な場所に素材を取りに行け”ってやつな?」

クロードは肩を竦めながらも、どこか楽しげに笑った。

「わかったよ。久々に外の空気も吸いてぇしな。リリィ、お守り頼むぞ」

「はいっ!」

 

クロードとリリィが素材採取に出発した翌日――

隼人は、王都騎士団からの新たな依頼を受けていた。

「“機動型強化鎧”の試作をお願いしたい、と?」

依頼書に目を通しながら、彼は眉を寄せる。

「ただの鎧じゃねえな……。これは、“軍用”だ」

 

まさに“戦争の兆し”が、少しずつ現実味を帯びてきていた。

だがその夜。

店の裏口が、音もなく破られた。

足音はしない。気配もほとんど感じられない。
それでも――隼人は気づいていた。

「……おい」

背後にいた気配へと、隼人は鉄槌を投げる。
壁に激突した影は呻き声とともに倒れた。

「一人目、っと……」

と同時に、屋根から数体の黒装束が降り立った。

仮面に刻まれた“灰”の紋様。

「……“灰の楽園”か。懐かしい連中が、また来たもんだな」

 

リーダー格の男が、静かに言葉を発する。

「我らの目的はただひとつ。“核鋼”の奪取。そして――鍛冶場の破壊」

「貴様の武器が、この国を乱す。だから、灰に還せ」

 

「……なるほどな」

隼人は、真っ赤に染まった炉の前で、鉄槌を握った。

「やっぱり……俺の武器は、まだ“試されてる”んだな」

 

──ゴォォン! 

槌が振るわれ、鉄と鉄がぶつかり合う音が夜に響いた。

仮面の男の剣を受け止め、そのまま火花の中で反撃に転じる。

「いいぜ。今夜は、焼き入れにちょうどいい!」

 

敵は数で優るが、隼人の動きに一分の隙もない。
鍛冶で鍛えられた肉体、戦士としての本能、そして“技術者”としての鋭さが融合した戦い。

 

「俺の武器を、奪うな。俺の“魂”に、触るな!」

一人、また一人と倒れゆく影。

仮面の男が血を吐きながら呟く。

「お前の武器が……魂を持つ限り……世界は、お前を放ってはおかぬ……」

「だからこそ」

隼人は槌を構え直す。

「守るしかないんだろ。“俺の在り方”をな」

 

その夜、《プロメテア》は炎に包まれた。
だが燃えたのは、店でも炉でもなく――隼人の“決意”だった。
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