オリンピック選手金メダリストが転生後、最高の武器屋のマスターになった

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【第3章:王都編】 第5話「演習と陰謀」

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〈王都・東演習場〉

空が赤く染まりはじめた早朝。
王都近郊の演習場には、無数の兵士たちが整列していた。

中央に立つのは、貴族派筆頭ヴァロア・エスカロット。
その顔にはいつもの冷笑が浮かんでいる。

「よくぞ集まった、王国の栄光を担う兵たちよ……本日、この場で披露されるのは、我が派閥が開発した“次世代兵装”だ」

彼の背後に現れたのは、黒銀に輝く重装鎧。
人間の背丈を優に超える機動鎧。その名は《鋼闘型兵装・ヴェルディア》。

「この兵装こそ、王国の未来を切り拓く鍵だ。力なき騎士団など、時代遅れだと証明してみせよう!」

 

その場に、整備士を装って潜り込んでいた隼人は、演習機体のフレームに目を走らせた。

「……この動力機関、どこかで見た気が……いや、まさか……!」

彼の目が鋭くなる。

「こいつ……“灰の楽園”の魔導炉と同じ構造してやがる……!」

兵器の核に使われているのは、“人の魔力”を無理やり燃料に変換する装置――かつて灰の楽園が使っていた“命喰い炉”。

その技術が、堂々と王国の兵器に使われていたのだ。

 

「隼人、こちら騎士団側。作戦通り、演習場外の魔導回線を制御した。今なら証拠も取れる」

ゲオルグの通信が届く。

「了解。俺が内部に潜って、“炉”を停止させる」

 

ヴァロアの演説が最高潮に達する中、ひとつの機体が突然暴走した。

「……ッ!? なにごとだ!?」

機体の魔力炉が赤く染まり、内部から“叫び”のようなノイズが響いた。

「制御不能!? いや――これは……“誰かの意志”を取り込んでる……!」

 

暴走した機体は、味方兵を薙ぎ倒しながら演習場を駆ける。

その暴走の中心には、“誰かの魂”が引きずられていた。

「――灰の楽園、テメェら……人の命を“試作燃料”にしてやがったのか!」

隼人は全力で駆け、炉の中枢部に鉄槌を叩きつけた。

「目ェ覚ませ! こんなもんに命使ってんじゃねぇよ!!」

炉が爆ぜ、暴走は止まった――しかし、ヴァロアは口元に薄い笑みを残し、演習場を去っていた。

「証拠は……揃った。だが、奴は逃げ切るつもりだ……!」

 



 

〈黒煙の谷・鉱脈最深部〉

 

「クロード! あれ見て……!」

谷の裂け目の奥、巨大な竜の頭蓋骨のような岩肌。
そこから、黒く脈打つ“竜骨鉱”が露出していた。

「ありゃあ……すげぇな……けど、妙だ。周囲の地面が、まるで……“呼吸してる”みたいだ」

リリィが結界を張った直後、地面が突然盛り上がり、巨大な腕のようなものが飛び出した。

「魔獣!? いや、これは……!」

クロードの目が見開かれる。

「“鉱石と融合した古代生物”か……!」

その生物の背中には、灰の紋様がうっすらと残っていた。

「……まさか、ここにも灰の楽園の痕跡が?」

 

戦闘が始まる。
炎の魔法、岩を砕くハンマー、そして竜骨鉱の共鳴音が谷に響く。

「リリィ、俺が囮になる! 魔核を叩け!」

「はいっ!! ――精霊よ、大気を裂いて、力を貸して!」

魔力が集中し、巨大な閃光が魔核を砕いた。

 

爆音の後、谷に静寂が戻る。

クロードが深く息をつきながら言った。

「やれやれ……素材採取ってレベルじゃねぇな……けど、こいつが必要なんだろ? あいつには」

「……うん。隼人さんの“本当の戦い”が、始まってるから」

 

そして、リリィが拾い上げた魔核の破片に、奇妙な“印”が残されていた。

それは、ヴァロア家の古い家紋だった――。
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