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もう一人の剣士
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―――――レブン王国領、ハイドの地下迷宮―――――
たった一人。薄暗い迷宮の奥で、深紅のドレスを纏う少女の長い髪が少し靡いた。
白髪が毛先に向かって蒼くグラデーションしている髪は、徐々に重力を無視して逆立つ。
静かに、開いた両手を胸の前へ突きだすと目の前のゴツゴツした石の地面に、大きな魔方陣が一つ映し出される。
そこからヌボーっと浮かび上がって来たのは、全身が骨だけの巨大なドラゴンだった。
「スカルドラゴン。上位の魔獣……さぁ、始めましょう」
ボソリと呟く少女の左手には紅い剣。
突如、骨のドラゴンは大きな骨の尻尾を少女に向けて突きだす。
受ければ即死は間違い無い一撃を避けると、次の瞬間には少女の剣がドラゴンの膝辺り目掛けて振られていた。
剣が骨に当たる大きな音が迷宮に反響する。全く気にしない様子のドラゴンの口から炎が吐き出された。
少女は転がるようにして間一髪でそれを交わす。
「効かない!?魔力防御ですのね……」
少女は少し侮っていたのだ。
いつものように召喚魔法で魔獣を呼び出し。自分の剣術の修行を行うつもりだった。
剣術に自信を持つ少女は、少し強いアンデット系の魔獣を出したのだが、それがそもそもの間違いだった。
アンデット系の魔獣は、魔力によってその身体を維持している。その魔力が全体を覆う障壁となり、物理攻撃を通さなかったのだ。
少女は魔法使いとしてはかなりランクが高かった。故に、魔法で攻撃出来れば余裕だっただろう。
だが――――少女は召喚魔法以外は、ろくに魔法が使えなかった。
だからこそ自衛手段として、剣術を鍛練しているのだから。
召喚魔法は召喚の時に契約を定める。
敵か。味方か。
そして召喚魔獣の消滅条件として。
主人の言葉か。または……倒されるまでか。
今回のドラゴンとの契約は、敵であり、倒すまで消えない。
しかも召喚出来るのは一体。
それが消えるまで次は召喚出来ない。つまり、他の魔獣を召喚して戦わせる事は不可。少女とドラゴンの戦いは長引いた。
アンデットであるドラゴンは疲れを知らない。そこにきて少女の攻撃は効かない。いくら、少女が剣術に長けていても限界が来る。
ドラゴンの爪が迫り、少女は剣でそれを受け止めた。
パキンと音を立てて紅い剣が砕けた。
その剣はルビーの結晶で造られていた。自分の髪も赤なら良かったと思う程、赤い色が大好きな少女が職人に作らせた剣だ。
宝石の中でダイヤモンドは最も硬いと言われているが、実は割れにくいのはルビーの方だったりする。
ダイヤモンドの剣は何かの拍子に欠けてしまうが、柔軟性のあるルビーは欠けにくい。
と、まぁ……そんな話を知っての事ではなく。
単純に赤が好きだから、少女はルビーに拘ったのだ。
あくまで自己満足な一本だった。
だが、その剣が無くなった事は少女の敗北を意味している。そして、その先にあるのは『死』だった。
少女が一歩後退りすると直ぐに身体が壁に触れた。
「あーあ。失敗しちゃいましたわ」
頭上から再びドラゴンの爪が迫り少女は目を閉じた。
しかし自分の頭に落ちて来たのは、細かい石ころの様な破片だったのだ。目を開けると、ドラゴンの腕が砕けていた。
今度は直ぐに、ドラゴンの体が(と言っても骨だが)ボロボロと崩れ落ちていった。
「赤い……」
少女は見た。崩れ落ちるほんの一瞬前。
無数の赤い光がドラゴンの周辺に縦横無尽に飛び交ったのだ。まるでドラゴンを切り刻むかのように。
崩れ落ちて動かなくなったドラゴンの背後に立っていたのは、赤く光る剣を手にした少年だった。
「やっぱアンデットには炎属性かぁ。剣でもゲームの定番通りなんだなぁ。これは使えるぞ」
ブツブツ独り言を言う少年と赤く光る剣に、少女は目が釘付けだった。
やがて赤い光は徐々にその色を消していく。
「あ……赤が……消える」
「これは魔法なんだ。だから暫くすると散っちゃうんだよ。それより大丈夫だったか?」
「あ……えぇ。どなたか知りませんが、助かりましたわ。ありがとうございました」
その少年の『なら良かった』と、答えた屈託無い笑顔に少女は心を奪われていた。
自分の最上級の召喚魔法で現れたスカルドラゴンをアッサリと斬り伏せてしまった剣術。
そして命を助けられた事もあり、徐々に少女の心は目の前の少年に侵食されていった。
「ちょっと。一人で無茶しないでよ~」
「本当ですよ!魔法は十分しか持たないんですよ?」
「おぉ、悪い。つい咄嗟に動いちまうんだよな」
少年の後を追うように二人の少女が現れる。
何やら楽しげに話す三人を見ていた少女は、寂しげに呟いた。
「やっぱり私は一人だ……」
自分のドレスにふりかかった、ドラゴンの破片をパンパンと叩き落とすと。その場を去ろうと歩きだす。
「ねぇ!君……ちょっと待ってて。俺達、そこの泉の水を汲みに来たんだ。外まで送って行くよ」
そう告げて少年は近くにある泉の水を汲みに行った。
その三人の背中を見届けると、少女は少年達を待たずにその場を去った。
少女は気付いていた。
何かが近付いて来るのを。
暫く歩いた所で、少女と鉢合わせたのは飛び回る小さな虫。それが少女に話かける。
「カリザリス、ウタレル。ケンヲツカウ、ショウネン。サガセ。クリカエス。カリザ……」
「あぁ!いたいた!ちょっと待ってよ!」
突然背後から声をかけられた少女は咄嗟に目の前の虫を握り潰す。少女が振り向くと、先程の少年と一緒にいた亜麻色の髪をした少女が走り寄って来た。
「危ないから一緒に行きましょうよ」
「いいえ。ご迷惑ですので……」
「大丈夫よ。誰もそんな事思わないから」
「そう……では。お言葉に甘えさせていただきますわね」
「私の名前はルカ・プレーンよ。よろしくね」
「私は、レイチェル・エル・デボン・ストレングス。ですわ……」
たった一人。薄暗い迷宮の奥で、深紅のドレスを纏う少女の長い髪が少し靡いた。
白髪が毛先に向かって蒼くグラデーションしている髪は、徐々に重力を無視して逆立つ。
静かに、開いた両手を胸の前へ突きだすと目の前のゴツゴツした石の地面に、大きな魔方陣が一つ映し出される。
そこからヌボーっと浮かび上がって来たのは、全身が骨だけの巨大なドラゴンだった。
「スカルドラゴン。上位の魔獣……さぁ、始めましょう」
ボソリと呟く少女の左手には紅い剣。
突如、骨のドラゴンは大きな骨の尻尾を少女に向けて突きだす。
受ければ即死は間違い無い一撃を避けると、次の瞬間には少女の剣がドラゴンの膝辺り目掛けて振られていた。
剣が骨に当たる大きな音が迷宮に反響する。全く気にしない様子のドラゴンの口から炎が吐き出された。
少女は転がるようにして間一髪でそれを交わす。
「効かない!?魔力防御ですのね……」
少女は少し侮っていたのだ。
いつものように召喚魔法で魔獣を呼び出し。自分の剣術の修行を行うつもりだった。
剣術に自信を持つ少女は、少し強いアンデット系の魔獣を出したのだが、それがそもそもの間違いだった。
アンデット系の魔獣は、魔力によってその身体を維持している。その魔力が全体を覆う障壁となり、物理攻撃を通さなかったのだ。
少女は魔法使いとしてはかなりランクが高かった。故に、魔法で攻撃出来れば余裕だっただろう。
だが――――少女は召喚魔法以外は、ろくに魔法が使えなかった。
だからこそ自衛手段として、剣術を鍛練しているのだから。
召喚魔法は召喚の時に契約を定める。
敵か。味方か。
そして召喚魔獣の消滅条件として。
主人の言葉か。または……倒されるまでか。
今回のドラゴンとの契約は、敵であり、倒すまで消えない。
しかも召喚出来るのは一体。
それが消えるまで次は召喚出来ない。つまり、他の魔獣を召喚して戦わせる事は不可。少女とドラゴンの戦いは長引いた。
アンデットであるドラゴンは疲れを知らない。そこにきて少女の攻撃は効かない。いくら、少女が剣術に長けていても限界が来る。
ドラゴンの爪が迫り、少女は剣でそれを受け止めた。
パキンと音を立てて紅い剣が砕けた。
その剣はルビーの結晶で造られていた。自分の髪も赤なら良かったと思う程、赤い色が大好きな少女が職人に作らせた剣だ。
宝石の中でダイヤモンドは最も硬いと言われているが、実は割れにくいのはルビーの方だったりする。
ダイヤモンドの剣は何かの拍子に欠けてしまうが、柔軟性のあるルビーは欠けにくい。
と、まぁ……そんな話を知っての事ではなく。
単純に赤が好きだから、少女はルビーに拘ったのだ。
あくまで自己満足な一本だった。
だが、その剣が無くなった事は少女の敗北を意味している。そして、その先にあるのは『死』だった。
少女が一歩後退りすると直ぐに身体が壁に触れた。
「あーあ。失敗しちゃいましたわ」
頭上から再びドラゴンの爪が迫り少女は目を閉じた。
しかし自分の頭に落ちて来たのは、細かい石ころの様な破片だったのだ。目を開けると、ドラゴンの腕が砕けていた。
今度は直ぐに、ドラゴンの体が(と言っても骨だが)ボロボロと崩れ落ちていった。
「赤い……」
少女は見た。崩れ落ちるほんの一瞬前。
無数の赤い光がドラゴンの周辺に縦横無尽に飛び交ったのだ。まるでドラゴンを切り刻むかのように。
崩れ落ちて動かなくなったドラゴンの背後に立っていたのは、赤く光る剣を手にした少年だった。
「やっぱアンデットには炎属性かぁ。剣でもゲームの定番通りなんだなぁ。これは使えるぞ」
ブツブツ独り言を言う少年と赤く光る剣に、少女は目が釘付けだった。
やがて赤い光は徐々にその色を消していく。
「あ……赤が……消える」
「これは魔法なんだ。だから暫くすると散っちゃうんだよ。それより大丈夫だったか?」
「あ……えぇ。どなたか知りませんが、助かりましたわ。ありがとうございました」
その少年の『なら良かった』と、答えた屈託無い笑顔に少女は心を奪われていた。
自分の最上級の召喚魔法で現れたスカルドラゴンをアッサリと斬り伏せてしまった剣術。
そして命を助けられた事もあり、徐々に少女の心は目の前の少年に侵食されていった。
「ちょっと。一人で無茶しないでよ~」
「本当ですよ!魔法は十分しか持たないんですよ?」
「おぉ、悪い。つい咄嗟に動いちまうんだよな」
少年の後を追うように二人の少女が現れる。
何やら楽しげに話す三人を見ていた少女は、寂しげに呟いた。
「やっぱり私は一人だ……」
自分のドレスにふりかかった、ドラゴンの破片をパンパンと叩き落とすと。その場を去ろうと歩きだす。
「ねぇ!君……ちょっと待ってて。俺達、そこの泉の水を汲みに来たんだ。外まで送って行くよ」
そう告げて少年は近くにある泉の水を汲みに行った。
その三人の背中を見届けると、少女は少年達を待たずにその場を去った。
少女は気付いていた。
何かが近付いて来るのを。
暫く歩いた所で、少女と鉢合わせたのは飛び回る小さな虫。それが少女に話かける。
「カリザリス、ウタレル。ケンヲツカウ、ショウネン。サガセ。クリカエス。カリザ……」
「あぁ!いたいた!ちょっと待ってよ!」
突然背後から声をかけられた少女は咄嗟に目の前の虫を握り潰す。少女が振り向くと、先程の少年と一緒にいた亜麻色の髪をした少女が走り寄って来た。
「危ないから一緒に行きましょうよ」
「いいえ。ご迷惑ですので……」
「大丈夫よ。誰もそんな事思わないから」
「そう……では。お言葉に甘えさせていただきますわね」
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