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ご令嬢はビッチですか?
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レブン王国は小さな国だ。五つの村と二つの街。その街の一つには王都『エクレア』も入るので、実質、街は一つ。
その一つの街である『レイク』に辿りついた。ここから王都までは徒歩で三日程の距離。
ハイドの迷宮の泉を終わらせた俺達は、一旦この街に来た。
と、言うのも迷路で助けた少女を、安全な所まで送る意味もあったからだが。
少女は名前をレイチェルと名乗った。
年齢は聞いていないが、おそらく同じくらいだろう。
何よりも俺が興味を惹かれたのは彼女が剣を使う事だ。魔法も勿論使えるらしいのだが聞いた所、大した魔法は使えないと言う。
ランク的にはベネットやルカの適正外魔法くらい。魔法に苦労してる所に少し親近感が沸いたのは言うまでもなく。
ただ、一つ気になるのは彼女の容姿と喋り方だった。
「――――それで、剣術をやってるんだ」
「えぇ。そうですわ。ルシアン様はどうして、そんなに優れた剣術を持っていらっしゃるのかしら?」
「俺は小さい頃から振ってるからな。ところで、レイチェルはどこかの貴族のご令嬢か何か?」
喋り方もそうだが、彼女の着ているのは高級そうなドレス。
その格好で迷宮にいた事にも驚くが、その佇まいから貴族のご令嬢って雰囲気が消せていない。
「ご令嬢といいますか……私自身、伯爵位を持っておりましたの。でもまぁ……大昔の話ですわ」
「スゴいです!レイチェル様は伯爵様でいらしたのですね!私、そういうの憧れますぅ」
「大した事ありませんわ」
十分大した事だと思うが、彼女はそれ以上は語らなかった。
今は何故一人でいるのかが気になる所だったが、昔は伯爵だった……とするからには今は違うのだろう。
初対面で余計な詮索は控え、別の話題を振る。
「レイチェルは、これからどうするんだ?」
「ちょっとルシアン。口のききかた!」
「あら。かまいませんわ。言った通り、今は伯爵でもありませんし。それにルシアン様なら仕方ありませんわ。だって、命の恩人ですもの」
そう言ってレイチェルはどこか恍惚した表情で俺を見つめた。その、ひとかたならぬ熱い視線にドキドキする。
「私は特にアテはありませんの。皆様はどちらに?」
「私、魔力の泉を巡ってるの。上位魔法を身に付けたくて……」
「あら。そうですか。宜しければ、私も旅に同行させていただく事は可能かしら?」
レイチェルの突然の申し出に全員顔を見合わせる。
多分、誰も文句は無いだろうが。元貴族のお嬢様は、こんな大変な旅に同行する事に抵抗無いのだろうか……と、いうのは誰しもが思った事だろう。
「俺はまぁ……別にいいぞ?」
「うーん。私も問題はないけど?」
「私は大歓迎です!」
ベネットだけは何も考えない性格のようだ。
レイチェルは迷宮の時は、送られるのすら嫌そうだった。それが何故今更?という疑問は残るが……。
レイチェルが突然、俺ににじりよって来る。
「旅の道中で私に剣術を教えていただけません?」
「え?あぁ……まぁ。でも、俺の教えなんて役に立つかわからないぞ?」
「いいえ。あんなにお強いのですもの。私は尊敬いたしておりますわ」
「ま、まぁ。そこまで言うなら……」
「嬉しいですわ!これからは先生と呼ばせていただきますわね」
(おぉ!何だこの神展開は!前世では、女なんて金で買うしか出来なかったのに。世の先生達はこんなに優越感に浸っていたのか!あいつらめ!)
思わず顔がデレていたのか、ルカが俺をジト目で見つめている。まぁ正直、ルカも可愛いけど、レイチェルも可愛い。
そして、ルカも俺を対等には見てくれるが、レイチェルは俺を尊敬してくれている。
やはり男は尊敬されると嬉しいものなのだと実感する。
「ルシアン様。顔がデレデレしてますよ!」
「そ、そんな事はないぞ、ベネット。でも尊敬されるのは悪くないかなぁ……とか思ってな」
「私だってルシアン様を尊敬してますよ!」
「そ、そうか……」
このやり取りを黙って見ていたルカが、タメ息一つ。
「はぁ……バッカみたい。私、消耗品の買い出し行ってくるわね」
「あ!ルカ様。私も行きます!」
ルカはどこか冷たい態度を見せ、去って行った。
その後を慌ててベネットが追い掛ける。
そんな後ろ姿を見送りながら考えると……いや、考えなくても俺はハーレム状態だと気付いた。
ふと横を見ると残されたレイチェル。
「どうかいたしました?先生」っと、ニコリと微笑む。
(うん。俺は今、最高に幸せだ!)
しかし、一方で気になってる事もあった。
レイチェルは何故一人でいるのか。そして、剣術があるとはいえ、ろくな魔法も使えない彼女が何故。ハイドの迷宮に入ろうと思ったのか。
しかも、彼女は泉の水に興味が無さそうだった。
既に飲んだ後、あのドラゴンに襲われたとも考えられなくも無いのだが。何故かそうではない気がした。
そして、そのスカルドラゴン。
第六の泉周辺で出る魔物では無いのだ。事実、たまに出る他の魔物は普通にあの周辺の魔物だけだった。
魔鉱石の剣が無かったら、スカルドラゴンは倒せなかっただろう。
とにかく、レイチェルは謎が多い。
この機会に全部聞いてみようかと思った矢先。彼女から声をかけてきた。
「せっかくなので、今から剣術の稽古つけていただけません?」
「あ、あぁ。そうだな!とりあえず、人目につかない所に行こう」
「あの……先生?人目につかない所でっ……て、あぁ。そういう事ですの」
「ん?何が?」
「授業料……つまり。セックスさせろって事ですのね」
(ちょっと待て!何でそうなる!?彼女はビッチなのか?今時なJKギャル的なアレか?)
「いや。違う、違う!」
「違いますの?そう……、私は別に先生なら宜しくてよ?」
(え!?宜しいの?……じゃなくて!)
レイチェルは潤んだ瞳で俺を見つめる。しかも上目遣いで。
理性吹っ飛びそうだと思った。
その一つの街である『レイク』に辿りついた。ここから王都までは徒歩で三日程の距離。
ハイドの迷宮の泉を終わらせた俺達は、一旦この街に来た。
と、言うのも迷路で助けた少女を、安全な所まで送る意味もあったからだが。
少女は名前をレイチェルと名乗った。
年齢は聞いていないが、おそらく同じくらいだろう。
何よりも俺が興味を惹かれたのは彼女が剣を使う事だ。魔法も勿論使えるらしいのだが聞いた所、大した魔法は使えないと言う。
ランク的にはベネットやルカの適正外魔法くらい。魔法に苦労してる所に少し親近感が沸いたのは言うまでもなく。
ただ、一つ気になるのは彼女の容姿と喋り方だった。
「――――それで、剣術をやってるんだ」
「えぇ。そうですわ。ルシアン様はどうして、そんなに優れた剣術を持っていらっしゃるのかしら?」
「俺は小さい頃から振ってるからな。ところで、レイチェルはどこかの貴族のご令嬢か何か?」
喋り方もそうだが、彼女の着ているのは高級そうなドレス。
その格好で迷宮にいた事にも驚くが、その佇まいから貴族のご令嬢って雰囲気が消せていない。
「ご令嬢といいますか……私自身、伯爵位を持っておりましたの。でもまぁ……大昔の話ですわ」
「スゴいです!レイチェル様は伯爵様でいらしたのですね!私、そういうの憧れますぅ」
「大した事ありませんわ」
十分大した事だと思うが、彼女はそれ以上は語らなかった。
今は何故一人でいるのかが気になる所だったが、昔は伯爵だった……とするからには今は違うのだろう。
初対面で余計な詮索は控え、別の話題を振る。
「レイチェルは、これからどうするんだ?」
「ちょっとルシアン。口のききかた!」
「あら。かまいませんわ。言った通り、今は伯爵でもありませんし。それにルシアン様なら仕方ありませんわ。だって、命の恩人ですもの」
そう言ってレイチェルはどこか恍惚した表情で俺を見つめた。その、ひとかたならぬ熱い視線にドキドキする。
「私は特にアテはありませんの。皆様はどちらに?」
「私、魔力の泉を巡ってるの。上位魔法を身に付けたくて……」
「あら。そうですか。宜しければ、私も旅に同行させていただく事は可能かしら?」
レイチェルの突然の申し出に全員顔を見合わせる。
多分、誰も文句は無いだろうが。元貴族のお嬢様は、こんな大変な旅に同行する事に抵抗無いのだろうか……と、いうのは誰しもが思った事だろう。
「俺はまぁ……別にいいぞ?」
「うーん。私も問題はないけど?」
「私は大歓迎です!」
ベネットだけは何も考えない性格のようだ。
レイチェルは迷宮の時は、送られるのすら嫌そうだった。それが何故今更?という疑問は残るが……。
レイチェルが突然、俺ににじりよって来る。
「旅の道中で私に剣術を教えていただけません?」
「え?あぁ……まぁ。でも、俺の教えなんて役に立つかわからないぞ?」
「いいえ。あんなにお強いのですもの。私は尊敬いたしておりますわ」
「ま、まぁ。そこまで言うなら……」
「嬉しいですわ!これからは先生と呼ばせていただきますわね」
(おぉ!何だこの神展開は!前世では、女なんて金で買うしか出来なかったのに。世の先生達はこんなに優越感に浸っていたのか!あいつらめ!)
思わず顔がデレていたのか、ルカが俺をジト目で見つめている。まぁ正直、ルカも可愛いけど、レイチェルも可愛い。
そして、ルカも俺を対等には見てくれるが、レイチェルは俺を尊敬してくれている。
やはり男は尊敬されると嬉しいものなのだと実感する。
「ルシアン様。顔がデレデレしてますよ!」
「そ、そんな事はないぞ、ベネット。でも尊敬されるのは悪くないかなぁ……とか思ってな」
「私だってルシアン様を尊敬してますよ!」
「そ、そうか……」
このやり取りを黙って見ていたルカが、タメ息一つ。
「はぁ……バッカみたい。私、消耗品の買い出し行ってくるわね」
「あ!ルカ様。私も行きます!」
ルカはどこか冷たい態度を見せ、去って行った。
その後を慌ててベネットが追い掛ける。
そんな後ろ姿を見送りながら考えると……いや、考えなくても俺はハーレム状態だと気付いた。
ふと横を見ると残されたレイチェル。
「どうかいたしました?先生」っと、ニコリと微笑む。
(うん。俺は今、最高に幸せだ!)
しかし、一方で気になってる事もあった。
レイチェルは何故一人でいるのか。そして、剣術があるとはいえ、ろくな魔法も使えない彼女が何故。ハイドの迷宮に入ろうと思ったのか。
しかも、彼女は泉の水に興味が無さそうだった。
既に飲んだ後、あのドラゴンに襲われたとも考えられなくも無いのだが。何故かそうではない気がした。
そして、そのスカルドラゴン。
第六の泉周辺で出る魔物では無いのだ。事実、たまに出る他の魔物は普通にあの周辺の魔物だけだった。
魔鉱石の剣が無かったら、スカルドラゴンは倒せなかっただろう。
とにかく、レイチェルは謎が多い。
この機会に全部聞いてみようかと思った矢先。彼女から声をかけてきた。
「せっかくなので、今から剣術の稽古つけていただけません?」
「あ、あぁ。そうだな!とりあえず、人目につかない所に行こう」
「あの……先生?人目につかない所でっ……て、あぁ。そういう事ですの」
「ん?何が?」
「授業料……つまり。セックスさせろって事ですのね」
(ちょっと待て!何でそうなる!?彼女はビッチなのか?今時なJKギャル的なアレか?)
「いや。違う、違う!」
「違いますの?そう……、私は別に先生なら宜しくてよ?」
(え!?宜しいの?……じゃなくて!)
レイチェルは潤んだ瞳で俺を見つめる。しかも上目遣いで。
理性吹っ飛びそうだと思った。
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