魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

エンドレス

文字の大きさ
30 / 79

レブン王国の伯爵

しおりを挟む
「ちょっと!街で噂にはなってたけど、これって本当にやられちゃったって事!?」
「何か大型の魔物が暴れたような感じですね!」
「あ、あぁ……そうだな。レブンまで襲われるとはな……」

 俺達が着いた頃にはレブン王国の王都は完全に落ちていた。
 街の人達の話を聞くと大きな骨のドラゴンが暴れたのだと言う。知っているのだが。

 城は壊滅。街は半壊。
 多くの住民はレブンの土地を離れて行ったようだ。国王はじめ、姫や王子など。王族の者達は、さすがに城を脱出し避難したのだ。
 その城は見るも無惨に崩壊している。

(これじゃあ、レブンみたいな小さな王国は、建て直しが効かないかもしれない)

 レブン王都【ヒルスリキア】
 ここに来た理由は二つ。一つは第七の泉へ行く拠点になっている事。もう一つは、バッテリーの回収。
 バッテリーとは勿論、電池の事なのだが。そもそも動力を魔法に頼る世界で、バッテリーとは余りにチグハグなアイテムだが。
 とにかくある場所に行く為に必要な物だ。

「ルシアン。バッテリーってどんな物なの?」
「細い筒上の物で、大きさは小指くらいだな」
「随分小さいのですね。それを何個でしたっけ?」
「そうだな。四個いる。多分この街の人達なら何人か持ってる人がいるはずだから。壊された家屋とかも探してくれ」
「あら。皆様はバッテリーを知りませんの?」

 レイチェルにとっては馴染みがあるかもしれない。
 何せここヒルスリキアは彼女の故郷なのだから。レイチェルに故郷を攻撃させる魔王軍がいかに悪かを物語らせる。
 悪とはそういうモノだ。と、当時の俺は思って作っていた。

 俺は一軒の家屋に入った。
 既に破壊されており誰もそこには住んでいない。そして、壊れたタンスなどや壺の中を漁る。
 ゲームとかだと、普通に生活している家屋にプレイヤーが土足で上がり込み。挨拶もせずにタンスを開けたり、壺を割って中身を持ち出す場面が当たり前だが。

 あれは教育上どうなのかと思ってしまう。なんせ窃盗罪や器物破損罪にあたる行為だ。とか言いながらそれを今、普通にやっている。
 勿論、ここは既に破壊されて放置された場所ではあるのだが。それでも前世の世界だと違法だろう。
 そして俺は一つ、バッテリーを見つけた。
 寝室のタンスの上から三番目に入っていたのだが、こういう所がゲームとは違い現実的で、罪悪感が湧くところだ。
 まぁ。現実では無く、現実なのだが。

「見付けましたわよ。先生」
「見付けたよ、ルシアン!」
「ルシアン様!これですか?」

 それぞれが見付けて来てくれたので、アッサリ四つ集まった。まるで泥棒一家だが、これは必要な事なので仕方ない。

「ねぇルシアン。これでレイチェルの魔力は戻るの?」
「いや、まだだ。これは鍵みたいな物だし」
「レイチェル様の為に頑張りましょう!」
「ほんと、申し訳ありませんわね」

 そもそも、ルカ達にはレイチェルの事を何一つ正しく話していない。魔王軍の魔将だなんて言える筈もないし。
 レイチェルは現在、魔力の殆んどを呪いにより失った事にした。
 失った魔力を取り返す為、彼女は魔力を回復出来るという玉を探して旅をしている……という設定だ。

 再起の宝玉は世界的に余りに有名なので、その名前は使えない。
 故に、咄嗟に出たドラゴンボールとしておいた。
 願いを叶える玉だし。まぁ間違えてはいないだろう。七つ集める必要が無いだけだ。

 とにかく、バッテリーが四つ揃った所で俺はヒルスリキアの街外れにあるとある古い屋敷を目指した。
 そこはひっそりとした場所であり、元々被害はなかったのだ。その地下には、とある入り口がある。

 ゲームでも四魔将レイチェルは再起の宝玉に囚われており、本体を倒しても、苦しみもがく怨念となった魂が実体化して何度も襲ってくるというイベントがあった。
 そのイベントはレイチェルの再起の宝玉を破壊する事で、クリア出来るのだが。
 四連続のボス戦闘があって、多くのプレイヤーを苦しめる。

 そして、その舞台となったのがここ。ストレングス邸。嘗てのレイチェルの実家でもあった。
 なぜ、ここにレイチェルの再起の宝玉があるのか。
 それは、彼女の母親であり大魔法使いだった『ウェルシア』が、禁断魔法プシュケスフィアを自分に使用し、長年に渡りレイチェルの宝玉を探し続けた結果だったのだ。

 いつか娘が魂の自由を望んだ時。それを叶えられるようにとウェルシアはこの場に彼女の宝玉を残した。
 召喚魔法を持つ者として産んだ故に、娘が魔王軍への道を進んでしまった事の親なりの苦悩。そんなレイチェルへの想いと謝罪が添えられた手紙を残して。
 ウェルシアの割れた宝玉と、割れていないレイチェルの宝玉がこの地下に眠っているのを俺は知っている。

 ゲームでは勿論、レイチェルと一緒に来る事はないのだ。
 つまり、彼女はここに来て辛い真実を知る事になる。自分の母親が自分の為にプシュケスフィアを使い、数百年を宝玉探しに捧げたという事実を知ってしまう。
 ゲームでは知る事のない真実を、レイチェルが知る事で。どの様な影響を及ぼすかは分からない。
 だが、これはゲームの世界とは違う。
 彼女にとって良い結果になる事を願うまでだ。
 
「ここは……」
「そう。ここはレイチェルの屋敷だよね?」
「え!?そうなの、ルシアン!」
「ルシアン様。どうしてそんなの知ってるんですか?」
「あ!あー。それは……彼女の名前を聞いた時に。何か聞いた事あるな~って思ってさ。有名な伯爵だし」

 危うく怪しまれる所だったが、何とか乗り切った。

(あぶねー!そういや、この前、朝イチでレイチェルの話を皆にした時もルカのやつにツッコミ入れられたんだよな!発言には気を付けねーと)

 『朝までレイチェルは自分達と三人で寝てたのに、なぜルシアン突然そんな話言い出すの?』っと言われたのだった。 
 まさか夜中に俺の部屋に来たとも言えず。
 まるで浮気してる男みたいな状態になっている。
 彼女を何人も転がしてる、世のスケコマシ達をある意味でスゴいと尊敬してしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜

咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。 そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。 「アランくん。今日も来てくれたのね」 そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。 そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。 「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」 と相談すれば、 「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。 そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。 興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。 ようやく俺は気づいたんだ。 リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...