魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

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そして悲しき少女の魂は解放される

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 王国の地下へと続く階段は闇に埋め尽くされている。
 その闇を切り裂く様に、雷撃が階下に向けて光を通した。

「今のうちです!」

 レイバンの言葉を合図に、蒼き刃へと色を変えた剣を振りかざして俺は階段を駆け降りる。直ぐにヴィクトリア先生とルカ……そして合流したベネット。さらに何故か、セシルが後を付いて下りてくる。
 
「この先は本体がいる。命の保証は出来ないぞ?」
「お前に出来て、俺に出来ない事なんか無い!」

 どうもセシルはムキになっているようだった。
 上官である先生にまで、意地を張って付いて行くと言い張ったのだから。
 
 地下に下りると途端に闇が凄い速度で晴れていった。
 いや、晴れたのではない。一つに纏まっていくのだ。先生の魔法が、大きな顔の形を見せ始めた闇に向かって放たれたが、それは闇に飲まれ消滅した。

「なに!中位魔法が食われた!?」
「先生、気を付けてください!あぁなると半端な魔法は効きません」

 レイチェルの怨念から、黒い波動が俺達全体に向けて放出された。それを目の前で二つに割ったのは、意外にもベネットの水魔法だった。

「彼女の力は『死』そのものです!私の回復系の水魔法が有効です。でも何回も防げないので、早めに何とかしてください」

 レイチェルの怨念が威力を増した闇の風を吹き荒らす。
 その力は途轍もないモノだった。全員が吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。正直、戦うなら生前のレイチェルの方がかなり楽に倒せたと思う。
 先生の話では、どうやら闇の魔法と呼ばれる力だろうとの事だ。とにかく、奥に進まないと宝玉の間に行けない。

 誰が何の魔法を放っても、魔法剣で切り裂こうと。
 その怨念の大きさは通り過ぎる事を許してくれないばかりか、俺達を試す様に少しずつその力を大きくしていく。
 悲しげな咆哮をあげ、闇の風を振りかざし続けた。

「ルカ。これを持って宝玉の間へ行け。そして、中の宝玉を割るんだ。俺がコイツを引き付ける。
 先生、レイバンさん、ベネット。あと、セシルも!ルカを闇から護って宝玉の間までの道を作ってくれ」

「ちょっと、ルシアン。あなた一人ではムリよ!」
「貴殿の強さは分かっているが、無謀だ!」
「大丈夫だ。ルカが早く水晶を割れば済む話だ。レイバンさん。俺の剣に雷魔法をお願いします。見た所、一番効果がありそうでしたので」

 レイバンは覚悟を決めたようで、俺の剣に雷魔法を封じ込めて『直ぐに終わらせる』と一言告げた。
 俺は不安そうな顔のルカにウインクをかます。
 『大丈夫だ』っという意味を込めて。そしてやってから後悔した。

(あー。ダサい。これ最高にダサいわ)

 だが、ルカは微笑んだ。そして宝玉の間へと駆け出した。
 先生やレイバンは、その道を切り開く様に闇を払う。

 それを見て俺は、直ぐにレイチェルの怨霊に向かって突っ込んでいった。とにかく何度も怨念を切り裂いた。
 その度に怨念は四散するだけだが。さらにそれを細かく切り裂く。
 その速度は、剣が見えなくなり光の残像だけが大きな円を描いているかの様に見える。

「ルシアン!俺も加勢するぞ!」

 それはセシルだった。
 何てバカな奴なのだろうか。レイチェルの怨念はその闇全て。俺の相手をしながらでも他を攻撃出来る。
 だからこそ、ルカに多くの護衛をつけたというのに。セシル程度の見習い魔法士が自分の身を守れるわけがないのだ。

「バカ!何をしてるんだ、セシル!」

 直ぐにセシルは闇の風に囲まれた。
 俺は更に剣撃の速度を上げた。自分の闇を振り払いながらセシルの闇も払う。

 レイチェルと俺の攻防は長く続いた。
 魔法ならば消耗戦でとっくに闇に飲まれていただろう。セシルが正にそれで、微力ながら魔法で援護していたが既に彼の精神力は切れた。
 俺は剣。いまだにセシルを守りながら、無限に襲いかかる闇と戦っていた。

 だが俺は判断を誤った事に気付く。
 セシルの魔力が残ってるうちに、剣に魔法をかけてもらうべきだったのだ。
 俺の魔鉱石の剣は徐々にその光を失ってきた。

「クソッ!これまでか……」
 
 今まで簡単に払えていた闇が、剣に纏わり付くように感じる。
 重い――――
 まるで土を斬っているかの様な感覚だった。

 やがて闇の風が俺やセシルの身体を切り刻み出した。
 まるでミキサーで粉々に砕かれる果物の様に、少しずつ闇に自分の血液を吸いとられていく感覚が襲う。
 貧血を起こしているのか、意識は薄れていった。

 しかし、その風は突然収まった――――
 闇は少しずつ光のシャボン玉の様に変化し、浮かんでは消えていく。
 その幻想的な光の中に俺はレイチェルの姿を見た。
 それは、穏やかな笑顔だった。

(ルカ…………よくやった)

 
 ◇◇◇


 俺は、そこそこ豪華なベットの上で目を覚ました。
 どうやら助かったようだ。全身に傷は無いし、貧血のようなクラクラする感覚も無い。
 唯一、右腕に痺れるような感覚があり首を少し回して見てみると。手首の上にルカの頭が乗っている。
 その為、血流が悪くなっているのだろう。コイツのせいで俺は悪夢を見ていたのか……と、そんな風に考えた。

「ルシアン!目が覚めたのね、良かったぁぁ!あのまま闇に飲まれて死んだかと思ったよ!」

 ビクッと突然起き上がったルカが、大騒ぎする。
 どうやら夢ではなかったようだ。

「助かって直ぐ、お前に血を止められて殺されたらシャレになんねーよ」
「はぁ!?バカなの?ここは、そういう言葉言う場面じゃないでしょ。心配してずっと側にいた女の子に感謝の場面よ!」

(目覚めていきなり怒られるって……俺の存在は何なんだよ)

 ルカの言いたい事は分かるが、今までそんな場面に遭遇した事のない俺は感謝の言葉すら出なかった。
 ドラマやらアニメの主人公ってスゴいなぁ……と思うのだ。いざこうなると、何が起きていたのかすら分からなくなる。
 今さらになって、ルカが俺の心配をしてくれた事が凄く嬉しかった。だが、照れ臭くてやはり感謝の言葉は出ない。

「起きましたか、ルシアン殿。国王陛下が玉座の間にてお待ちです。落ち着いたらでよいので顔を出してください」

(国王陛下……あぁ。そう言えばここは城だった)

 俺は、急に胃が痛くなってきた。
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