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未成年の飲酒、ダメ、絶対!
しおりを挟む「ルシアン様?ルカ様は何を言ってるのですか?」
「さぁ……多分、酔って半分寝惚けてるんじゃ?」
心を読まれてるなんて、ベネットに答えられない。
それよりも、下手すれば俺は『心を読まれる』なんて、くだらない方法で、ルカに自分の気持ちを伝える事になってしまう可能性すらあるのだ。
たまらず俺は、ルカを地面に降ろす事にした。
きっと密着している事で心を読まれているのは違いないからだ。
(ここは一旦離れよう!)
ところが――――
「ダメ。このままでいて……」
ルカの少し艶っぽく、そして甘えるような声。
俺は心を撃ち抜かれるような衝撃を受けてしまった。
(やばい!可愛えぇ……)
そんな風に言われたら、まっとうな男なら降ろせなくなるに決まっている。当然俺もそうだ。
「そ、そうか……分かったよ」
「ルシアン様。ルカ様、もう寝てますよ?」
「マジか……助かった」
「どうしたんですか?」
「いや。どうもしないけど……」
ルカのあの能力は何なんだと俺は困惑した。
彼女は人の魔力を見る事が出来る稀種の魔法使い。そこにきて、人の心の中まで見れるとは。
天は二物を与えずと言うのは大嘘だと思った。
ルカは美人だし、賢いし、大魔法使いだし、魔力見れるし、人の心まで読めちゃうとか。
(OH MY GOD!!神はルカに幾つ与えたんだ!)
やがて、俺達は滝壺まで辿り着いた。
落差何百メートルあるか分からないような滝。
それはまさに、どこぞの国にあるエンゼルフォールとかいう滝の様だ。水が落ちて落下しきるまでに気化して、幻想的な雰囲気を漂わせている。
あまりの美しさに息を飲む。
ところが――――
(ん?不味い!気化したアルコールが呼吸する度、微量に体内に入ってくるじゃねーか!)
「ルシアン様……私。フラフラしてきました」
「ま、待て!ベネット、お前まで酔ったら俺は面倒見きれん」
「何で?ルカ様の面倒は見れるのに、私の事は放置するって言うんですか!?酷くないですか?」
ベネットの目が座ってる。
早くもアルコールが廻ったようだ。
(こいつ。酔うと絡むタイプか!?)
ベネットが小さい身体を目一杯背伸びさせて、俺の胸ぐらを掴んできた。完全にガテン系の酔い方だ。
「私だってねぇ。ルシアン様におんぶしてもらいた~い!おんぶしてぇ!イヤだ、イヤだぁ!おんぶぅ~」
いや。幼児化するタイプのようだ。
端から見たら十分にまだ幼女なのだが。正直、付き合いきれない。
そう思っていると、ルカが突然起きて魔法を使い始めた。
今度は何をやらかすのかとビビっていると、水魔法で淡く光る水を発生させた。
回復魔法の類いのようだ。
ルカはそれを口にして、直ぐにベネットにも同じものを飲ませた。
「効果はあまり持たないから。早く泉の水を汲んで山を下りましょう!」
「あれ?ルカ様?ルシアン様?私…………」
とりあえず二人供、泉の水を無事に汲めた事だしさっさと下山する事にした。
「そう言えば、お前ら二人とも水魔法使えたんだな」
「ごめんね、ルシアン。気付くのが遅くなっちゃった。頭が回らなくなっちゃって」
「まぁ。冷静になったならいいけど。ところで途中の事覚えてるのか?」
「ん~。よく分からない」
ルカもベネットも極端に酒に弱いようだ。
そして俺は、隣で罰の悪い顔をしているベネットを見て気付く。
考えて見れば、酔ってないベネットが最初からルカに水の回復魔法を与えれば治ったのではないかと。
「おい。ベネット……」
「し、知りませんよ、私は。ちょっとルカ様とルシアン様が面白そうだから放っておいたとか……そんな事は決してありませんからね」
(おい。ここに確信犯がいるじゃねーか。そう言えば、俺がルカを下ろそうとした時、何でルカは拒んだんだろうな?)
ルカも、ベネットみたいに幼児化していたのかもしれない。
可愛いかったから良いのだが、結局あの後直ぐにルカは寝てしまったので真相は分からない。
理由を知りたかったと、今更ながら俺は思っていた。
「もう、ここまで下りてくれば大丈夫だろ」
「そうね。色々とごめんね、ルシアン」
「いや。本当におもしろ……いや、大変な泉でしたね」
本当に別の意味で厄介な泉だったわけだ。
だが、とりあえずこれで第五の泉も終了した。
次はベネットのおじいさんに飛竜を飛ばしてもらい、サラン最大の岩山の上にある第八の泉を攻略する予定だった。
しかし、俺は不安を抱えていた。
以前。レイチェルを救えると思っていたが、結果的に彼女は怨霊化してしまった事だ。
経緯はともあれ、結果はゲームと同じ事になった。
ならばベネットはどうなるのかと言う事だ。
ゲームと同じ結果ならばベネットとおじいさんは、殺される。
たとえカリザリスが既に死んでいるとはいえ、それは経緯でしかないのだ。
レイチェルが主人公に倒されたのではなく、ベルに殺されたのと同じように。もし、別の誰かによって殺される運命だとしたら……そう考えると不安は拭えない。
ゲームでは俺達の進行を妨げる為に、飛竜を殺しに来る。
ならば飛竜を使う考え自体を捨てれば、そちらの方にイベントが変わったりするのかとも考えた。
しかし、方法が無いのだ。
サラン王国最大級の岩山の頂。そこまで歩いて行くのはムリだ。ロッククライミングでもするしかないが、時間も果てしなくかかる。
しかも、その過程でベネットが落ちて死ぬイベントに変わりそうな気がする。運命は侮れない。
(飛竜を使わなければいいのかな?でも、飛空艇じゃあの高さまで上がれないしな。何とか別の方法で……)
「なぁ、ベネット。飛竜以外で何か……」
「ルシアン様ぁ~!私、ふわふわしますぅ」
「私もぉ~。アハハ。何か楽しぃ~よ、ルシア~ン」
俺が真剣な面持ちで振り向くと、二人はだらしない顔して汲んできた泉の水を飲んでいた。
二人とも顔が真っ赤だ。当然、泉の水にはアルコール成分があったようだ。
(こいつら……いい加減にしろよな)
俺はソッとその場を立ち去った。
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