魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

エンドレス

文字の大きさ
40 / 79

未成年の飲酒、ダメ、絶対!

しおりを挟む

「ルシアン様?ルカ様は何を言ってるのですか?」
「さぁ……多分、酔って半分寝惚けてるんじゃ?」

 心を読まれてるなんて、ベネットに答えられない。
 それよりも、下手すれば俺は『心を読まれる』なんて、くだらない方法で、ルカに自分の気持ちを伝える事になってしまう可能性すらあるのだ。

 たまらず俺は、ルカを地面に降ろす事にした。
 きっと密着している事で心を読まれているのは違いないからだ。

(ここは一旦離れよう!)

 ところが――――

「ダメ。このままでいて……」

 ルカの少し艶っぽく、そして甘えるような声。
 俺はハートを撃ち抜かれるような衝撃を受けてしまった。

(やばい!可愛えぇ……)

 そんな風に言われたら、まっとうな男なら降ろせなくなるに決まっている。当然俺もそうだ。

「そ、そうか……分かったよ」
「ルシアン様。ルカ様、もう寝てますよ?」
「マジか……助かった」
「どうしたんですか?」
「いや。どうもしないけど……」

 ルカのあの能力は何なんだと俺は困惑した。
 彼女は人の魔力を見る事が出来る稀種の魔法使い。そこにきて、人の心の中まで見れるとは。
 天は二物を与えずと言うのは大嘘だと思った。

 ルカは美人だし、賢いし、大魔法使いだし、魔力見れるし、人の心まで読めちゃうとか。
 
(OH MY GOD!!神はルカに幾つ与えたんだ!)

 やがて、俺達は滝壺まで辿り着いた。
 落差何百メートルあるか分からないような滝。
 それはまさに、どこぞの国にあるエンゼルフォールとかいう滝の様だ。水が落ちて落下しきるまでに気化して、幻想的な雰囲気を漂わせている。
 あまりの美しさに息を飲む。
 ところが――――

(ん?不味い!気化したアルコールが呼吸する度、微量に体内に入ってくるじゃねーか!)

「ルシアン様……私。フラフラしてきました」
「ま、待て!ベネット、お前まで酔ったら俺は面倒見きれん」
「何で?ルカ様の面倒は見れるのに、私の事は放置するって言うんですか!?酷くないですか?」

 ベネットの目が座ってる。
 早くもアルコールが廻ったようだ。

(こいつ。酔うと絡むタイプか!?)

 ベネットが小さい身体を目一杯背伸びさせて、俺の胸ぐらを掴んできた。完全にガテン系の酔い方だ。
 
「私だってねぇ。ルシアン様におんぶしてもらいた~い!おんぶしてぇ!イヤだ、イヤだぁ!おんぶぅ~」

 いや。幼児化するタイプのようだ。
 端から見たら十分にまだ幼女なのだが。正直、付き合いきれない。

 そう思っていると、ルカが突然起きて魔法を使い始めた。
 今度は何をやらかすのかとビビっていると、水魔法で淡く光る水を発生させた。
 回復魔法の類いのようだ。
 ルカはそれを口にして、直ぐにベネットにも同じものを飲ませた。

「効果はあまり持たないから。早く泉の水を汲んで山を下りましょう!」
「あれ?ルカ様?ルシアン様?私…………」

 とりあえず二人供、泉の水を無事に汲めた事だしさっさと下山する事にした。

「そう言えば、お前ら二人とも水魔法使えたんだな」
「ごめんね、ルシアン。気付くのが遅くなっちゃった。頭が回らなくなっちゃって」
「まぁ。冷静になったならいいけど。ところで途中の事覚えてるのか?」
「ん~。よく分からない」

 ルカもベネットも極端に酒に弱いようだ。
 そして俺は、隣で罰の悪い顔をしているベネットを見て気付く。
 考えて見れば、酔ってないベネットが最初からルカに水の回復魔法を与えれば治ったのではないかと。

「おい。ベネット……」
「し、知りませんよ、私は。ちょっとルカ様とルシアン様が面白そうだから放っておいたとか……そんな事は決してありませんからね」

(おい。ここに確信犯がいるじゃねーか。そう言えば、俺がルカを下ろそうとした時、何でルカは拒んだんだろうな?)

 ルカも、ベネットみたいに幼児化していたのかもしれない。
 可愛いかったから良いのだが、結局あの後直ぐにルカは寝てしまったので真相は分からない。
 理由を知りたかったと、今更ながら俺は思っていた。

「もう、ここまで下りてくれば大丈夫だろ」
「そうね。色々とごめんね、ルシアン」
「いや。本当におもしろ……いや、大変な泉でしたね」

 本当に別の意味で厄介な泉だったわけだ。
 だが、とりあえずこれで第五の泉も終了した。
 次はベネットのおじいさんに飛竜を飛ばしてもらい、サラン最大の岩山の上にある第八の泉を攻略する予定だった。

 しかし、俺は不安を抱えていた。
 以前。レイチェルを救えると思っていたが、結果的に彼女は怨霊化してしまった事だ。
 経緯はともあれ、結果はゲームと同じ事になった。
 ならばベネットはどうなるのかと言う事だ。

 ゲームと同じ結果ならばベネットとおじいさんは、殺される。
 たとえカリザリスが既に死んでいるとはいえ、それは経緯でしかないのだ。
 レイチェルが主人公に倒されたのではなく、ベルに殺されたのと同じように。もし、別の誰かによって殺される運命だとしたら……そう考えると不安は拭えない。

 ゲームでは俺達の進行を妨げる為に、飛竜を殺しに来る。
 ならば飛竜を使う考え自体を捨てれば、そちらの方にイベントが変わったりするのかとも考えた。
 しかし、方法が無いのだ。
 サラン王国最大級の岩山の頂。そこまで歩いて行くのはムリだ。ロッククライミングでもするしかないが、時間も果てしなくかかる。
 しかも、その過程でベネットが落ちて死ぬイベントに変わりそうな気がする。運命は侮れない。

(飛竜を使わなければいいのかな?でも、飛空艇じゃあの高さまで上がれないしな。何とか別の方法で……)

「なぁ、ベネット。飛竜以外で何か……」
「ルシアン様ぁ~!私、ふわふわしますぅ」
「私もぉ~。アハハ。何か楽しぃ~よ、ルシア~ン」

 俺が真剣な面持ちで振り向くと、二人はだらしない顔して汲んできた泉の水を飲んでいた。
 二人とも顔が真っ赤だ。当然、泉の水にはアルコール成分があったようだ。

(こいつら……いい加減にしろよな)

 俺はソッとその場を立ち去った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜

咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。 そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。 「アランくん。今日も来てくれたのね」 そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。 そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。 「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」 と相談すれば、 「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。 そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。 興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。 ようやく俺は気づいたんだ。 リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...