異世界でクズ転生者を導けって言われてもな、そんな俺物語

チリノ

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第一話っ、オタクの鈴木と俺っ!ヒャッハー!その8

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 それにしても、退屈ってのは厄介なもんだよな。

 人間ってのは、なんで退屈するんだろうな。

 フランスの哲学者で思想家だったブレーズ・パスカルは、退屈と人間の不幸について、

 自分の著書『パンセ』の中で考察しているよな。

 そうだな、パスカルは『パンセ』の<気ばらし>って部分で、こんなことを述べているな。


 「気ばらし。私は、人間のさまざまな動揺、人間が宮廷や戦争において身をさらす危険や苦労、そこから生じる数多くの争いや情欲、

 大胆で時には、酷くよこしまな企図などを、時折、考察してきたが、その時、私は人間の全てのあらゆる不幸が、

 一室に静かに閉じこもっていられないという、このただ一つの事から、由来していることを発見した」


 つまり、人間は部屋でじっとしていられないから、わざわざ自分で不幸を引き寄せていると言ってるわけだ。

 パスカルは。

 でもよ、部屋でじっとしていても稼がないと食ってはいけないって思うよな?
 
 それについてもパスカルはこう言い募ってるぜ。


 「一生、生活に困らないだけの充分な財産を持つ人なら、もし彼が自分の家で安らかに留まっていられるなら、

 わざわざ航海や、要塞の包囲戦に出かけて行ったりはしないだろう。

 軍のポストをあんなに高い金銭を払って買うのも、町でじっとしているのがたまらなく嫌だからだ。

 雑談や賭事いった遊びを求めるのも、気晴らしがしたいからであり、

 自分の家に静かにしていられないからだ」

 
 例え、一生働かずに食っていくだけの金を持っていても、やっぱり人間は自分の部屋で、

 静かにしていられず、退屈を紛らわすための刺激を求めちまうってわけだ。

 じゃあ、次はパスカルのギャンブルについての考え方を見てみようぜ。


 「ある労働者は毎日わずかばかりの日銭で賭博をして、気を紛らわせている。

 賭事をやらないという条件をつけて、この労働者が一日に稼ぐ分だけの金を彼にやってみればいい。

 そうすれば、君はこの労働者を不幸にすることになるだろう。 

 彼が追求しているのは、賭事の楽しみなのであって、稼ぎではないと、恐らく他者は言うだろう。

 それなら、彼にタダでギャンブルをやらせてみたまえ。

 そうすれば彼は賭け事に熱中しなくなり、そんなものには退屈してしまうだろう。 

 したがって、彼が追求しているものは、単なる楽しみだけではないのだ。

 活気も熱意もない楽しみなど気晴らしにはならない。

 気晴らしには熱中することが必要で、また賭事をやらないという条件で、人から別に欲しくもない金銭を受け取って、

 その金を賭け事で稼げば幸福にになれると思い込むことで、自分を騙す必要があるのだ」
 
 
 じゃあ、現代のゲーセンにあるメダルゲームなんて、どうなんだろうな。

 あれなんか、金にもならねえのにみんなそこそこハマってるもんな。

 でも、本物のギャンブルと比べれば、熱中する度合いが違うか。

 博打に狂って自殺したり、破滅する人間は多いけど、メダルゲームにそこまで入れ込んでる奴なんて中々いないもんな。

 所で、俺がなんでこんな話してるのかっていうと、また、鈴木の奴がカジノでギャンブルにハマってるからだ。

 むしろ、依存としてるといってもいいかな。

 賭け事ってのは、一旦熱中すると、中々抜けるのが難しくなる。
 
 今の鈴木がそうさ。

 所で脳神経科学者のヴォルフラム・シュルツ教授が行った「猿を使ったギャンブルの依存実験」とか、

 心理学者のバラス・スキナー博士による「スキナーボックスの実験」って聞いたことあるか?

 シュルツの実験ってのは、猿の脳みそに電極を埋め込んで、緑と赤のランプを使用して、

 擬似的に猿にギャンブルを体験させて、それらの反応を見るって実験だった。

 で、最初は単純にランプを不規則に点滅させて、緑のランプが光った時だけ、甘いジュースを猿に与え続けた。

 で、これを繰り返すと、猿は緑のランプがついただけで、ジュースを貰う前から脳がドーパミンを放出するようになった。

 所が緑のランプが点滅する度にジュースを与えていると、猿の脳はドーパミンを出さなくなった。

 これは緑のランプが光れば、確実にジュースが貰えることを学習したせいで、そこに喜びを感じられなくなったせいだ。

 だからパターンを変えて、次は赤いランプが光ると、ジュースが出てくるようにした。

 すると再び、猿の脳からドーパミンが分泌されるようになった。

 それも緑のランプの時よりも大量に。

 ちなみにドーパミンってのは、快感物質のことだぜ。

 次にスキナーの実験についてだけど、これはパブロフの犬や、ソーンダイクの猫の実験からヒントを得たって話だ。

 まず、スキナーは実験用の箱に入れた一番目のネズミには、レバーを押せば必ずペレットが出てくるようにした。

 次に仕掛けを徐々に変えていき、三回押せば餌が出るようにするとか、

 あるいは、レバーを五回以上押さなければ、食べ物が貰えないという具合に工夫していった。

 そして、ある時を境にレバーによる餌の供給を完全に止めてしまう。

 すると、初めは餌を出すためにレバーを押し続けるが、それでも食べ物が貰えないことを知ると、

 ネズミはもうその行動を止めてしまった。

 スキナーは次のネズミを使った実験では、レバーを押すとランダムに餌が出るようにした。

 前回の実験とは違って、こっちだとレバーを押しても、餌が出てくるかどうかは確実じゃない。

 レバーを三十回押して、ペレットが出てくることもあれば、逆に五十回押しても餌にありつけない場合もあった。

 で、これもレバーを押しても餌が出ないようにしてしまう。
 
 所がこのネズミは、いくらレバーを押しても、もう餌が出ないのに、延々と繰り返し続けた。

 それはもしかしたら、レバーを押し続ければ餌が貰えるかも知れないと、ネズミが思い込んでるせいだ。

 この実験から分かるのは、人も動物も予測できる定期的な報酬よりも予想外の不定期な報酬のほうが、

 快感の度合いも強く、継続されやすいってことだ。

 だからギャンブルは中毒に陥りやすいってことでもあるのさ。
 
 俺はルーレットに齧り付いている鈴木の傍らへと近づいた。

 しかし、お前、本当にルーレット好きだよな。

 「マリー、か、帰りたい。こ、ここ、つまらない」

 だが、ルーレットで転がるボールに釘付けになっている鈴木の奴には、俺の言葉は全く聞こえていない様子だった。

 仕方がない。俺はメロンのようにでかい自分の乳を鈴木の背に押し付けてやる。

 すると、俺の胸の感触に我を取り戻した鈴木が後ろを振り返った。

 俺は再び、どこか他の場所に行きたいと告げた。

 何かに熱中してる人間の気をそらしたいなら、他の何かで興味を惹かせればいい。

 こいつの頭にあるものといえば、ギャンブル、ギシアン、それと旨い食事と酒くらいなもんだろう。

 で、人間ってのは同時に二つの物事には集中できない。

 ギシアンに夢中になってる最中にギャンブルに熱中することはできないし、逆もまた然りだ。

 むしろ、これができたら人類始まって以来の天才といっても良いだろうな。

 俺の言葉に何を思ったのは、鈴木がルーレットを止めて、それじゃあ、少し休憩でもして、食事にでもしようかと誘う。

 それで俺は無邪気に喜んで見せた。

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 近くの食堂で飯を食う。冷えたエールと魚のフライを味わいながら、俺は鈴木の奴に笑みを向けてやった。

 子供のような、というよりも白痴じみた微笑みをな。

 大概の人間は自分より強くて賢くて相手には警戒するもんだ。

 逆に相手が愚かで弱ければ、気を緩めるがな。
 
 鈴木にとって、俺は弱くてオツムも緩い、理想的なダッチワイフに見えてるだろうよ。

 「ま、マリー、グルグル回るの嫌い、つまらない。そ、それにお金勿体無い」

 鈴木、ギャンブルなんかやめておけ。あんなもん、胴元が勝つようにできてんだから。

 もっと、他に何か良い趣味見つけようぜ。

 「それじゃあ、マリーは何がしたいんだ?」

 「マリー、酒場の依頼受ける。困ってる人、助ける」

 実際、それくらいだよな。今出来ることってよ。

 学校や病院建てて、人々の暮らしを向上させるなんて、コイツにはまだまだ先の話だろうしな。

 今、んな話しても鼻で笑い飛ばされるだけだろうし、でも、コイツだって少しは成長しってっかな?

 「依頼かあ。でもな、それなら普通にモンスターの素材売ったほうが手っ取り早く金稼げるしなあ」

 「め、名声、名誉、地位、賞賛、み、みんな、アーレス、称える。英雄として。戦争、勝てば、王になれる」

 俺の言葉にアーレスの目が一瞬、輝いた。

 ギルドの冒険者テストや山賊の親分退治で味わったあの時の賞賛の快感を思い出したのだろう。

 転生者は承認欲求がかなり強い傾向にあるからな。

 誰かに認められるのは楽しくて仕方ないんだよな。

 そりゃ、前世で他人から認められたり、受け入れたれたり、褒められたりっていう経験に乏しいんだから、

 これはしょうがないよな。

 俺にだって承認欲求はあるし。

 で、こんな感じで俺たちは、人々を困らせているモンスター退治の依頼を引き受けることになった。

 そう、モンスターバスターズの結成だ!

 ところでビル・マーレイ役は誰がするべきだろうな?
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