異世界でクズ転生者を導けって言われてもな、そんな俺物語

チリノ

文字の大きさ
9 / 34

第一話っ、オタクの鈴木と俺っ!ヒャッハー!その9

しおりを挟む
 16

 やっぱりライバルは必要だよな。うん、やっぱり、ライバルの存在は大事だぜ。

 あいつもただ、無双してるだけじゃ、張り合いないだろうしな。

 鈴木の奴、即効で厄介なモンスター討伐の依頼や賞金首を狩り尽くしちまったんだぜ。

 たったの一週間足らずでよ。

 その後、近隣諸国との戦争で国を勝利に導き、一躍大英雄になっちまったもんな。

 そういうわけだから、鈴木のために用意したぜ、あいつのライバル、その名もキニアをな。

 キニアも鈴木同様、能力値は全て最高にしてある。

 そんなキニアは、涼しげなスキンヘッドに爽やかな白い歯をした、気高く咲き誇った薔薇の如き筋肉を誇るナイスガイだ。

 ヒャッハー、ナイスマッチョマンっ。

 ああ、そうだとも。キニアは俺の理想の外見をしている。

 いくら俺が神に願っても、決して手には入らない逞しい肉体を持ったマッチョな益荒男の……。

 さあ、目覚めよ、キニアよっ。

 すると、俺の呼びかけに応じ、キニアが目を覚ます。

 「貴方が私の主ですか?」

 キニアの問いかけに俺は違うと答えた。

 「では貴方は私のなんですか?」

 「それはブラザーだよ、キニア」

 「おおっ、ブラザーっ」

 「所でキニア、早速だが頼みがあるんだ。俺の頼みを聞いてくれないか?」

 「ブラザーの頼みなら聞かないわけにはいきませんね。遠慮なく言ってください。私に出来ることなら協力しましょう」

 流石はマッチョでナイスなダンディーだぜ。

 俺はこれまでの事情を包み隠さず、正直にキニアに打ち明けた。

 「なるほど、そういう事情がおありでしたか。

 その鈴木、アーレス・ビケイ・モテモテさんの成長を促す為の手伝いをして欲しいというわけですね。

 わかりました、誰かの成長の手助けが出来るというのであれば、これほど素晴らしいことはありません。

 微力ながら、私もお手伝いしましょう」

 作った俺が言うのもなんだが、何て良い奴なんだ、キニアよっ。

 鈴木の奴にキニアの十分の一でもその精神性があればな。

 愚痴言うようでなんだけどよ。

 17

 それからキニアは、すぐに各地に転々と散らばっていた蛮族やモンスター達の群れをまとめあげていった。

 そして、まだどの国も手を出せずにこまねいている中原に蛮族達の住まう一つの集落を作り上げた。

 集落って言っても結構悪くない場所だぜ。

 石を積んで作った家とか、結構頑丈そうだしな。

 あそこの広場じゃ、布を纏ったオーク達が何か話し合ってるぜ。

 少し覗いてみようか。

 そこでは、赤いローブを巻きつけた一人のオークが、周りの者たちにこう問いかけていた。

 「とある裁判官には、犯した罪と刑罰の免除を与える権利が与えられている。

 すると、この裁判官が罪を犯した場合、自らに課される刑罰の取り消しを求めたら、

 その要求を権利として聞き入れるべきか?」

 他のオークが言った。

 「それが法律だというのなら」

 しかし、別のオークがそれに反論する。

 「いくら法律とはいえ、それは信義に反するのではないのか」

 それに右側にいた背の高いオークが意見を述べる。

 「しかし、それでも法は法だ。これは作った法に穴があったせいなのだから、

 一先ず、その裁判官を無罪にしてから、

 裁判官の権利に『自分に下される刑罰への取り消し要求は認めぬ』と修正すれば良い」

 「なるほど、それなら妥当かもしれないな」

 「しかし、もっと良い方法はないものか?」

 こんな具合にオーク達の議論が白熱し始めた。

 中々面白い議論をしているな。それじゃあ、あっちのゴブリン達はどうだ。

 俺は近づいて聞き耳を立てた。

 そこでは、青いローブを身体に巻いたゴブリンが聴衆にこう訪ねていた。

 「もしも、母親と妻が川で溺れていた場合、どちらを先に助けるべきか?」

 すると、一人の若いゴブリンが青いローブのゴブリンに質問する。

 「それはどのような状況で起きているのか?

 母親が十歩離れた先で溺れ、妻が二十歩離れた場所で溺れているのなら、

 俺は母親を助ける。何故なら、俺は十五歩までしか泳げないからだ。

 俺はその場の状況に応じて、自分の泳げる範囲で妻や母を助ける」

 「どちらも同じ距離で溺れている」

 「なるほど、しかし、現実ではそんな状況はまず起こらないし、

 仮に起こったとしてもすぐに決められないと思うが」

 すると他のゴブリンが口を挟んだ。

 「母親と妻の意志も尊重するべきではないのか。自分だけ助かりたいと思っていなかった場合、

 勝手に救出するのも酷というものだろう。相手にも個人の考えとプライドがある」

 その言葉にそうだ、そうだと同意する声があがる。

 「しかし、どちらも助けて欲しいと願い出た場合はどうする?

 あるいはどちらも拒んだら?」

 「それなら天に判断を任せ、コインの裏表で決めれば良い」

 そこで一同が笑い出した。

 最近の蛮族やモンスター達も色々と考えてるようだな。

 神の奴、人間側からは傑出した人物が出にくいようにしてたけど、流石にモンスターにまでは、

 気が回らなかったようだな。

 はは、マヌケ野郎め。

 それじゃあ、次はあそこにいるオーガ達の議論を試聴するかな。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

処理中です...