異世界でクズ転生者を導けって言われてもな、そんな俺物語

チリノ

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鈴木の独白その3

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 人間、何かに依存したり、中毒になるのは個人の自由だ。

 それで自分が不幸になったり、成長できなくなったとしても、それは本人の自業自得だ。

 俺の場合は好みのネット、アニメ、オンラインゲームに依存して、

 匿名を利用した巨大掲示板でただ、ただ、何も考えずに無意味に時間を費やしてきた。

 それは思考が停止した状態だ。

 何も考えず、何も学ばず、何も成長できず……。

 その傍らで俺は努力する人間を嫉妬混じりに見下してきた。

 そうすることで惨めな自分を慰めてきたんだ。

 勉強したからって、それが幸せに繋がるとか限らない。

 野球に打ち込んだからってプロになれるとは限らない。

 そんなもの、タダの無駄な努力だろうって、そう吐き捨てて、俺は自分の心を慰めた。

 イケメンを見て良い人だとは限らないとか、

 金や地位があるからってその人間が幸せとは言えないとか、

 人間の価値はもっと別の部分、優しさとか内面で決まるんだって。

 そう決めつけることで俺はなんとか、優位に立とうとした。

 俺はイソップ童話に出てくる、甘そうなブドウを食べられなくて悔しかったから、

 あんなブドウは酸っぱいと決めつけて、溜飲を下げたキツネと同じだった。

 そして、その時に得られる優越感は堪らなく心地よかった。

 フロイトが言う所の「防衛機制」が働いていたわけだ。

 あるいはレオン・フェスティンガーの「認知的不協和理論」でも説明がつくだろう。

 でも、同時に俺は俺は心の底では金や権力がたまらなく欲しかった。

 口ではどうこう言いながら、金持ちになって人が羨むような立場について、

 美人の彼女を貰って……。

 そんな俺が望んでも何一つ手に入らなかった物を、何か一つでも持ってる人間を俺は妬み、恨んだ。

 そして、努力して成功した人間を強欲で低俗な人間だと見なして、自分の鬱屈を和らげた。

 もっとも、当時の俺の言葉もまんざら嘘というわけでもなかったのかもしれない。

 それは当時の俺の考えを肯定する研究データがあったからだ。

 ただ、それとは逆のデータも存在しているが。

 『人間はいくら経済的に豊かになっても、その事と幸福感は比例しない。

 収入がいくら増えても幸福感に変化がない』

 この現象を「幸福のパラドックス」と呼ぶ。

 この幸福のパラドックスを提唱したのが、アメリカの経済学者のリチャード・イースタリンだった。

 だから「イースタリンのパラドックス」とも言う。

 イースタリン以外にも人間の幸福について調べている学者がいる。

 それは心理学者エド・ディーナー教授だ。

 エド・ディーナーは、科学分野で人間の幸福や満足感を研究している人物として知られている。

 そして、この心理学者は個人の収入と満足度を比較した結果、

 所得の増加が幸福感に繋がるのは、僅か二%の差でしかないことを突き止めた。

 それだって、収入と幸福に関係があったのは、貧困層だけであり、

 ある一定の収入ラインを越えると、全く変動もしなくなった。

 当時の俺にこの事を話せば、自分の無知を棚に上げて、鬼の首を取ったように振舞うだろう。

 「やっぱり俺の言った通りだったじゃないかっ」って。

 その癖、金のある人生と金のない人生、どちらか選べと言われたら、

 間違いなく金のある人生に食いつくだろうな。

 そして、このエド・ディーナーの研究結果やリチャード・イースタリンへの反論も存在する。

 これは経済学者ベッツィー・スティーブンソンとジャスティン・ウォルファーズが発表した論文がそうだ。

 スティーブンソンが調べた結果、福祉インフラが整っていて、財政が豊かな国に住む人々は、

 そうでない国に比べて満足度が高かったという。

 結局、そうなるとどちらが正しいのだろうか。

 個人間では収入と幸福度に密接な繋がりはないが、

 国の間となると、国民の幸福は財政の豊かさに左右されるということか。

 金と幸福は関係がないのだろうか。それとも関係しているのか。

 そもそも、人間はどうすれば幸福になれるのだろうか。

 いや、それよりも幸福とは一体なんなのか。

 もしも、満足感や幸福感を得られるとしたら、それはどうすればいいのだろうか。

 今の俺にはいくら考えても答えが見つからない。

 少し疲れてきた。エールを飲んで昼過ぎまで休むとしよう。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 とにかく、当時の俺を振り返ってみると、自分が溜め込んでいた不満や鬱屈を、

 何でもいいから理由を見つけて正当化したがっていた。

 あるいは不満をぶつけるストレスのはけ口を求めて、ネットを徘徊したりもした。

 人を見下して、攻撃している時は俺は一時的に不安を忘れることができた。

 そして自分の好みじゃない作品があれば、叩いたりもした。

 もっとも、それは批判とか批評の類ではなく、ただの中傷だった。

 当時の俺は理屈ではなく、感情で言い捨てるだけだったから、かなり見当違いな事もしていた。

 でも、当時の俺はそもそも、そこに気づくだけの思考力はなかった。

 だから筋道も理由も根拠もなく、自分の主張が正しくて、相手の方が悪い、

 作者の人格は愚劣で頭が悪いと一方的にレッテル貼りをして、攻撃した。

 大体の作者はそんな俺の中傷にほとんど何も言い返さなかったし、

 あるいは概ね、俺の発言を肯定するようなコメントを返してきた。

 俺はそれに結構気をよくしていた。そして、俺の批評は正しいと勝手に勘違いするようになった。

 ただ、たまに反論する作者も出てきたし、匿名掲示板でおかしいと指摘されることもあった。

 俺は他人を批判するのは大好きだが、他人から批判されるのは大嫌いだった。

 俺は読者は批判してもいいが、作者が反論することは許されないと思っていた。

 というよりも反論されるのが怖かった。

 特にきちんと根拠や理屈を示された批判は、図星なだけあって恐ろしかった。

 そうだ、あの時も怖かった。




 名も無き作者と読者 20xx/xx/xx:xx:xx:xx.xx ID:xxxxxxx

 創作、それも特定のキャラの内心描写や考えを作者の思考と無理やり結びつけて、
 だからこの作者はクズだとかゲスだとかコメントしてる奴いたけど、
 現実と創作の区別が付いてるのか?

 
 名も無き作者と読者 20xx/xx/xx:xx:xx:xx.xx ID:xxxxxxx
 
 ああ、いたな。おまけに他のキャラの思考は無視してるんだよな。
 仮にキャラの内心描写や考えを作者の思考と結びつけるとしても、
 それならその作品のキャラ全体の考えと結びつけて考えないと、
 ただの的外れだろう。

 名も無き正義の読者 20xx/xx/xx:xx:xx:xx.xx ID:xxxxxxx

 お前、作者か?
 こんな所で愚痴言ってないで作品のコメントでやれよwww
 それとも感想が気に入らないからって直に言うのが怖いのか?

 名も無き作者と読者 20xx/xx/xx:xx:xx:xx.xx ID:xxxxxxx

 変なの湧いてきたな。

 >名も無き正義の読者

 お前があそこの感想欄で書き込みした奴かは知らないけど、
 お前の言ってることって何の根拠も理由も示さず、
 思い込みのレッテル貼りと見下しで作品と作者を叩いてるだけじゃん?
 それを本当に感想だと思ってるの?


 名も無き作者と読者 20xx/xx/xx:xx:xx:xx.xx ID:xxxxxxx

 作品と作者の人格を切り離して考えろっていう風潮、
 俺は好きじゃないけど、だからって言って、
 わざと論点ずらしたり、都合の良い部分だけ取って、
 歪めて解釈して叩くなら、そっちのほうがよっぽど人格的に下劣だろう。
 わざとそれをやってるなら性格悪いし、
 逆にマジでやってるなら、ただの馬鹿じゃん。

 名も無き正義の読者 20xx/xx/xx:xx:xx:xx.xx ID:xxxxxxx

 顔真っ赤にして反論してんじゃねえよwwww
 少なくとも作者側が作品と作者の人格は別だなんて言い訳でしかないだろwwww

 名も無き作者と読者 20xx/xx/xx:xx:xx:xx.xx ID:xxxxxxx

 >少なくとも作者側が作品と作者の人格は別だなんて言い訳でしかないだろwwww

 別にそんなこと、誰も言ってないけどな。
 それにだからって言って、歪めて解釈して作者と作品を中傷して良い理由にはならないだろ。

 名も無き正義の読者 20xx/xx/xx:xx:xx:xx.xx ID:xxxxxxx
 
 作者だったら感想じゃなくて、作品で反論してみせろよwww


 で、俺の煽りに本当にあの時の掲示板のやり取りをネタにしたSSが投稿された。

 その時は本当に腹立たしくてしかたなかった。

 それで結局は作品の批判よりも作者にどう攻撃さればいいかを考えるようになった。

 そこに作品を批評して良い方向に伸ばそうとか、そう言う考えはもう浮かばなくなっていった。

 とにかく、論点がずれてようが、間違っていようが難癖をつけて、

 私念で叩いて、自分の鬱憤を晴らす事しか頭になかった。
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