異世界でクズ転生者を導けって言われてもな、そんな俺物語

チリノ

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第一話っ、オタクの鈴木と俺っ!ヒャッハー! その13

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22

鈴木の奴、あれからずっと宮殿に篭って本を読み漁ってるな。
キニアも鈴木の雰囲気が、以前とは違うって言ってたしな。
俺もそう思うぜ。
こりゃ、一皮剥けた侮れない奴になったかもしれねえ。

俺は早速、鈴木の所に向かった。
奴は自室の片隅に座り、難しい顔つきをして何かを思案している様子だった。
ちなみに奴からは俺の姿は見えない。

床から立ち上がった鈴木が、無造作に散らばっていた本をおもむろにまとめ始めた。
それから革のバッグにまとめた本を放り込み、旅支度を整え始める。
旅に出る気なのかな、こいつは。

23

鈴木は一間(約一八〇センチメートル)幅の畦道を歩いていた。
道の両側には膝丈ほどの長さの雑草が生い茂り、南から吹いてくる風の中で揺れていた。

王都を出てから早十日が過ぎていた。
鈴木の纏った真新しい黒い外套が、輝くばかりの太陽に照らしつけられる。

太陽を背に鈴木が歩を進めていると、
反対側から二人連れの男女が、大声で助けを求めながら必死に駆けてくる姿が見えた。

そのすぐ後ろからは雲助と思しき四人の男達が迫る。
「ああ、そこの旅のお方っ、どうか私達を助けてくださいませっ」
女が鈴木の外套にすがりつき、哀願する口調で頼み込む。

「なんだ、テメエはっ」
そこに追いついてきた雲助の一人が、鈴木を一目見るなり、鞘から引き抜いた山刀をチラつかせた。
「何があったかわからないが、大の男四人がたったの二人、それも男女の共連れを追っかけるのは、
どういった了見でのことだ」

「へ、テメエなんぞに関係あるけえ。そういうテメエは何処の馬の骨だ。
たった一人で連れも見当たらねえようだがよ」

雲助の一人がそう言い捨てると、他の雲助がそれに追随するように
「大方、食い詰め者の痩せ冒険者だろうよ。
それもたった一人の所を見ると、他のパーティーにも相手にされねえナマクラってとこだろうぜ」とニヤついてみせる。

鈴木が二人の男女に自分の後ろに隠れるように言った。
ガタガタと震えていた男女が、言われた通りに鈴木の背中に隠れる。

鈴木が四人をジロリとひと睨みすると、再び問いかけた。

「どういった了見でこの二人を追っていたのか、話を聞かせてくれ。
この二人が罪人だっていうなら、俺もこのまま引き下がるが」

「聞いたふうな口を聞くんじゃねえや。内心じゃ、びくついてやがる癖によ。
そこの二人連れはよ、女日照りの俺達に見せつけるように出店でイチャイチャと飯を食ってやがったんだ。
それなら哀れな俺達もおこぼれに預かろうと思って声をかけてな。
そしたらいきなり逃げ出しやがった」

四人の中で一番年嵩に見えるずんぐりむっくりとした男がそう答えた。

「そんなもん、あんたらの難癖のように思えるんだがな。
それでも嘘を言わずに正直に打ち明けた分、性根はそこまで悪くもなさそうだが」

鈴木が相手から視線を逸らさずに言う。

「おう、俺たちゃ、嘘と麦はつかねえ。
自分に正直に生きてるからな。そういうわけだから、さっさとどっかに消えろ。
いや、ついでにその上等そうな外套も置いていきな」

「正直なのもいいが、少しばかり分別もつけたら、どうだ、あんたら」

何だとっ、と怒鳴ると同時に残りの男達が、山刀を引き抜いて鈴木に斬りかかる。
鈴木がひのきの棒で目の前にいる雲助の右肩を砕くと、
二人同時に斬り払って来た男達の両腕をへし折った。

残った一人が山刀を捨て、慌てて逃げ出していく。
その後ろ姿を追わず、鈴木は黙って眺めていた。

「どうも助けていただいてありがとうございます……とてもお強いのですね。
あの、お名前などをお伺いしてもよろしいでしょうか?。
あ、僕の名前はベイト、こっちの名前はセマと言います」

鈴木とさほど年の変わらない若い男が、そう名乗りながら頭を下げる。

「ベイトさんとセマさんですか。
それなら俺のことはジョン・ドゥ(名無しの権兵衛の意味)とでも呼んでください。
昔の名前は捨てましたから」

二人が不思議そうな表情を浮かべ、それからすぐに何かを察したと言いたげに頷きあった。
そして若者が懐から何枚か取り出した銀貨を包み、これは些少ですが、と鈴木に手渡そうとする。
しかし、鈴木はその謝礼を固辞した。

「そんなつもりで助けたんじゃありませんから。
金は懐にしまっておいてください。もしもの時に入用になるとも限りませんからね」

「わかりました」
そういうと若者が素直に金を懐にしまう。

「それで、ジョン・ドゥさんはどちらに向かわれているのですか?
私達も行き先は向こうなのですが、あの連中に追われて、
つい、来た道とは反対方向に逃げてきたものですから……」

また何か厄介事に巻き込またらどうしようかという不安感が、
若者の言葉に滲んでいた。

「行く当てのない気ままな旅ですから、目的という目的もありません」
「あの、それならばこの先に行くと小さな町があるのですが、そこまでご一緒させては頂けないでしょうか?」
「それは別にかまいませんが」

鈴木がそう言うと二人が安心したかのように顔を綻ばせる。
これで心強い用心棒が出来たとでも思っているのだろう。
それから三人は町へと歩き出した。

俺は思ったよ。こいつ、本当にあのクズの鈴木なのかって。
あれだよ、男子、三日会わざれば刮目して見よっていうだろう。

本当にこいつは急激に化けたのかもしれねえ。
何だか、感動するよりも逆に薄気味悪くなってきやがったな。
ナンマイダ、ナンマイダ……

24

三人が着いた町の旅籠で宿を取る。
鈴木の隣部屋を借りたベイトとセマが、早速ベッドで抱き合い始めた。

「大丈夫だった、セマ?」
ベイトが心配そうな目を向けて、セマに尋ねる。
「あたしなら大丈夫よ、ベイト……」

潤んだ双眸を恋人に向けるセマ──互いの唇が重なり合う。
ベイトがセマの背筋に這わせた掌を徐々に下ろしていく。

セマがんんっ、と声をくぐもらせた。
ベイトがセマの腰から尻へと撫で回し、そのまま二人がベッドに倒れこむ。
それから間もなく、薄い壁越しから睦み合う男女の喘ぎ声が聞こえてきた。

しかし、隣部屋にいる鈴木は何を思うでもなく、ただ、静かに本を読んでいる。
その様子はまるで、修行僧の瞑想にも似た静謐な雰囲気を漂わせていた。
それからノートを取り出し、何かを書き始めた。



 地を這う片目の虫よ、地を這う片目の虫よ

 お前の生命は神の押し付け

 そして俺の転生も神の気まぐれ

 地を這う片目の虫よ、地を這う片目の虫よ

 暗闇の中を漂う、あの蝿の気持ちを考えたことがあるか
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