【R18】白猫セシルは堕天使な宰相に囚われる

猫まんじゅう

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7 白猫セシルと妖精姫




セシルはリリアーナに手を引かれ、彼女の後宮へと足を踏み入れた。勿論、シルフィアも一緒である。

部屋に入り席につくとリリアーナは侍女を下げて、護衛のシャルロッテのみを部屋に入れる。


「リリアーナ様、本当に、大丈夫なのですか?」

「シャル、黙っていてくれてありがとう。でも、大丈夫よ。陛下のお叱りは私が受けますから」


そんなやり取りを聞いていたセシルは申し訳なさそうに声を出した。


「·········陛下の、ごこんやくしゃさまの、リリアーナさま、です、か?」


「そうよ。紹介がまだだったわね。私はリリアーナ。レベロン王国から先日、皇国に嫁いできたの」

「私はシルフィアよ。貴女は、セドリック様のセシル様で合っているかしら?」


「·········もうしわけ、ございません」


どうやら、シルフィアは彼女の事を知っているらしい。リリアーナはシルフィアと顔を見合わせてからセシル嬢に向き直る。


「何故謝るの?あなた、凄く辛そうだわ。私もつい半月前まではそんな顔をしていてね。ヴィクトール様に救って頂いたの。だから、私あなたの事、放っておけなくて········ごめんなさいね?」


「·········っ、なぜ、リリアーナ様が、謝られるのですかっ·········、」


大きな瞳からポロポロと我慢していた涙が零れ落ちていく。それをじっと見つめながらシルフィアは少し斬り込んだ質問をした。


「貴女、獣人の国からきた子よね?セドリック様が匿って誰にも見せず大切にされていると聞いていたけれど。魔導具研究所の研究員なのでしょ?」


「········は、い。獣人の、くに、ドラファルトで、家族みんなころされて、ひとりになって·········。
せどりっく様にかくまっていただいて·········、」


セシルがぽつり、ぽつり、と話す内容にリリアーナとシルフィアは耳を疑った。
家族を目の前で惨殺されて、匿ってもらったとはいえ、一人逃げて此処まで来たのだから。


「ちょっと、貴女、本当に大丈夫?!」


シルフィアがガタンと勢いよく立ちあがり、リリアーナは隣で俯いたままのセシルの肩を抱きしめた。


「もう、大丈夫よ。よくここまで頑張ったわね、」



「···········ほんとうに、せどりっく様には良くしていただいて、いるのです。でも······─────」

その瞬間、セシルの瞳が悲痛の色に染まる。
希望を失って諦めたような表情に二人は息を呑む。

「────······せどりっくさまには、私はもういらない、から·····わたしは、早くでていかないと、、だから、」



「そういえば、貴女。どうしてジョシュア様と一緒にいたの?知り合いではなさそうよね?」


シルフィアの質問に一瞬顔をあげたセシルは目を泳がせて、すぐにまた俯いた。


「········ええと、それは。陛下から、ジョシュア様とけっこんしては、どうかと·········、」



「「「はい?」」」


リリアーナ、シルフィアだけでなく扉の傍に立っていた護衛のシャルロッテの声も被り、セシルは机の下で両手をぎゅっと握りしめた。


「····っ、でも、せどりっくさまは、ご婚約されたようですし············。わたしは要らないのです、よね?」

「でも、セシル様。あなたはセドリック様を慕っているのでしょう?」

リリアーナの穏やかな声がセシルを包み、彼女は顔をあげた。目の前には美しい薄紫色の瞳があり、自分を真っ直ぐに捉えている。


「···········好き、なのか、わかりません。わたしは人を好きになったこともなくて。せどりっくさま、とは、ずっと一緒だったから···········」


「でも、セドリック様が結婚されると聞いてどう思うの?悲しい、辛い、どこか遠くへいってしまうような。そんな気持ちなのではないかしら?
確かに、お兄様にも同じように感じるけれど、それよりも幸せになって欲しいと思うわ。でも、もしヴィクトール様が他の女性を娶ると言ったら、私はきっと素直に喜べないと思うのよね······」


「リリアーナ様··········、」


リリアーナが少し暗い表情をした事に気付いたシルフィアが彼女を心配し声をかけようとするのを気にせずリリアーナは続ける。


「一回、自分の心と向き合うことも大事なことよ?好き、という気持ちは悪い事ではないわ」

「·············わたしは、せどりっくさまが、、好き、なのでしょうか···········?」


セシルが机を見つめそう呟いたタイミングで部屋にノック音が響いた。
シャルロッテが急いで部屋から出ていき、直ぐに戻ってくる。


「リリアーナ様、時間切れでございます。」

「分かったわ。少しは、時間が稼げたかしら、」


ヴィクトールとセドリックが迎えに来たのだろう。
リリアーナは立ち上がるとセシルに手を差し伸べた。


「何かあったら、私を頼って?あなたの力になること位はできると思うし、私、単純にあなたとお友達になりたいのよね、」


リリアーナがふっと優しい笑みでそう言ったので、セシルは涙で濡れた頬をぬぐってほほ笑み返した。


「はいっ、!」


離宮の外に出るとセドリックが物凄い剣幕で怒鳴ってセシルに駆け寄る。


「セシルッ!何故君がこんな所にっ!!!」


その大きな声にびくりと身体を震わせた彼女の前にはだかるようにリリアーナが立つ。


「セシル嬢は悪くないのです。彼女を責めないで下さい。私の独断で連れ込んだのですから。」

「リリアーナ様、どういうお考えか知らないが、今後はこのような事やめて頂きたい。貴女も立場を弁えて───「それは、私に此処で自由に友も作るなと言っているのですか?それで、此処に閉じ込めると?」」


「··········っ、いえ、そうゆう意味では、、」


「セドリック様。貴方のその、人の意思を顧みず、誰かを閉じ込めて自由を奪う考えには同意しかねます」


セドリックは拳をぎゅっと握った。


「では、「リリアーナ、少し話をしないか?」」


セドリックが何かを言いかける前にヴィクトールがそれを遮る。

「セドリック。シルフィア嬢とセシル嬢を頼む。リリィ、私達は少し話そう。」


斯うして、怒りに震えるリリアーナの手をヴィクトールは握り、先導する形で後宮の扉を押し開けた。

立ち去る二人に、シルフィアとセシルは慌てて礼を取ったが、ヴィクトールは全く気にせずに歩を進める。
此時の彼はリリアーナの怒りを遠ざける事を優先にしていた。もし庭園内で彼女が身体に取り入れているヴィクトールの魔力を撒き散らしたりでもしたら、被害が大きくなるからである。


なるべく早く彼女が落ち着くように、そう思いながら優しくリリアーナをエスコートする。
怒りを鎮めてくれ、と心の底から願いながら。
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