【R15/R18】執事喫茶にいったら前世で好きだった私の執事がいて、完全にヤンデレ化している件は・・・如何致しましょう!?

猫まんじゅう

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R15(前半)

2.アンリエッタ サエキル


「アンリエッタお嬢様、本日はダンスの練習がございます」
「セバスチャン、貴方も見に来るの?嫌なのだけど?もう子供じゃないし、一人でも大丈夫よ」

「いえ、旦那様からは伯爵令嬢であるアンリエッタ様がどこにお嫁に行っても大丈夫なように、と仰せつかっておりますので……しっかりと!見させて頂きます!」

 げぇ、と16歳になりデビュタントを果たしたばかりのサエキル伯爵家次女のアンリエッタはその男を見た。

 彼は執事のセバスチャン。いや、言い換えよう。
 超、教育熱心な執事のセバスチャン!

 同じく超絶教育熱心な父が、次女であるアンリエッタがお嫁に行ける様に、と専属で雇った執事だ。
 歳は26で婚約者はナシ。お付き合いしている彼女もナシって言ってた。
 あ、一応、念のために聞いたら、婚姻歴もナシって!

 でも、モテないってわけじゃないのよね。

 伯爵家のメイド達は彼に夢中でいつも私に彼の事を聞いてくるの。
 「暗く青みがかったような黒い髪に、切れ長で青い瞳は大人の色香漂って妖艶だわ!お付き合いされている方や婚約者はいるのでしょうか?」って。
 自分で聞けばいいのにね。
 
 彼はとても真面目で凄く厳しいけれど、私の好きな食べ物や好きなドレスだって全部覚えていてくれる優しい所もあるの。
 頭も良くて、運動神経も抜群。本当であれば、王城のお姫様なんかに仕える執事家系の人なんですって。
 そりゃあモテる筈よね。

 きっと彼にとったら、私の執事をする事なんて、子守りみたいなものなんでしょうね。
 でも、彼は嫌な顔一つせずに勉強や習い事に疲れてずっとイヤイヤ期していた私をいつも気にかけてくれて、星空を見せてくれたり、馬に乗せてくれたり……。

 私の専属として雇い入れた、といっても、彼は元々姉の執事で、姉が結婚したのを機に伯爵家を出る予定だった所を再契約してもらったのだ。

 だから、私は彼をずっと昔から知っていた。
 10歳も歳の離れた彼にとっては、12歳の私なんて庭で走り回るお転婆娘という認識でしかなかった筈だけど。4年も彼は嫌な顔一つせずに……。

 それから、2年が経ち、18歳になったアンリエッタは寝台の横で不安そうに自分を見つめるセバスチャンを見た。

「大丈夫よ、ただの高熱だわ?」
「いえ、でももう6日間も続いております」

 部屋の中を右往左往するセバスの顔はいつも以上に真剣で、アンリエッタは力なく笑った。

「本当にセバスは心配性ね」
「当たりまえです!お嬢様に何かあれば私は……一応伯爵様と奥様にも連絡は入れているのですが、帰路の途中で遅れが生じているようでして……」
「いいの、お父様も、お母様も、お兄様も……お姉さまの出産に立ち会っているのだから仕方ないわ。それに私がいなくなっても大丈夫」

 その時、家にいる筈の皆は、少し離れた所に住む姉の初めての出産の為に丁度家を空けていた。

 だから、誰もいない、セバスと私だけ。
 そんな時に私が遠のく意識の中で言えた事は一つだけだった。
 だって、ずっと言わないで心に留めてきたんだもの。

 でも、もうなんとなくどこか別の場所に呼ばれている気がしたの。
 とても、瞼が重くて身体を動かすことすらできなくて……。
 
 死ぬ、ってこういう事、なんでしょうね?

「セバス……今までありがとう、ごめんね」
「アンリエッタお嬢様!変な事を仰らないで下さい!!これからも、おります!このセバスチャンが、アンリエッタ様がこの家をお離れになるまでっ!お嬢様は……私の……生きる糧なのにっ!」

 悲痛な表情を浮かべるセバスチャンに、アンリエッタは力なく首を横に振る。

「ううん、いいの。ここ最近はいきなり身体が弱くなったから……お嫁にも行けないのかもって分かっていたし……セバスチャンも、お姉さまの家に行きたかったわよね?ごめんなさい」

「ッ、そんな事ありません!私は……最初は頼まれたから、でしたが……ついこの間、自分の意思で貴女様の執事にして欲しいと旦那様に頼んだのです!
 ずっと、ずっと、貴女の執事でおります!私は貴女の好きな紅茶も、お菓子も、色も、全て分かりますからッ……、お嬢様は結婚などしなくても……私が……「ふふ……優しいわよね、本当に。ねえ、セバスチャン、私はね幸せだったのよ」

 セバスチャンの言う事を遮っても、時間のない私には伝えなくてはならない事があったから。

「……っ」
「……あなたに、……あえて……ごめん、……な、さい……でも、」

 セバスに会えてよかった。
 でも、ごめんなさい。いつからだろう……執事としてではなく。
 そう、ずっと……気付いた時にはもう、

「ずっと、好きだった……」

 ハッと顔をあげたセバスチャンの顔が見えて、その切れ長の青い瞳が潤んでいたから。
 だから私も涙が出て。

 死ぬ間際にこんな事をいうなんて……ズルいわよね……。
 でもやっと……やっと伝えられたこの気持ちに安心して、私は意識を手放した。

 その日、アンリエッタは18歳というあまりにも短い生涯を終えた。
 そして、アンリエッタはその何かに導かれるように、転生したのだ。
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