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「······はあ、あッ、っんう、はぁ······」

「マズいよ、ユウマっ。これだと強すぎたんじゃない? リューイ、起きちゃうよっ?」

「うるせーな、分かってる。でもそれはトウマがさっき餌を捲き散らしたからだろーが! 付けすぎたんだよ、この馬鹿!」



 リューイの宮、扉の前でクレハは立ち止まった。そして胸の高鳴りを抑えきれず口に手を当てて、にんまりと笑う。リューイの快感に喘ぐ声が一定間隔で聞こえてきたからだ。


『これが、姫さまの話していた······。夢を見ながら自慰をしているという』


 今朝、欲求不満だと話していたリューイは、夜中に夢の中で自慰をしているようだと話していた。

 リューイの快楽に溺れる姿を見れるのであれば、無断で部屋に忍び込んで後々怒られた挙句、身体を差し出すくらい痛くも痒くもない。寧ろ、リューイに身体を弄られ、快感を与えてもらえるのであればそれはもうご褒美でしかないのだから。

 リューイが快感に喘ぐ姿を見たいという情火を消し去る事などできず、せめて自慰姿を拝みたいと逸る心を抑えながらクレハはそっと扉を開けた。

 そして寝台の上にいる二人の男性を見て驚愕に目を見開いたまま立ち止まる。



 ──── そこにいたのは、この国の崇高な御方。
 第四王子と第五王子の双子の二人であったからだ。



 両手でしっかり口を抑えて、いまにも叫び出しそうな声を喉に留めながら必死で飲み込む。
 ばくばくと心臓が音を立てて鳴り、血液が循環して頭がくらくらとした。彼女は扉を閉める音が鳴らないように支えたまま、静かにその場に蹲る。


「オイ、トウマ、物音したか? ······誰かにバレたとか? 睡眠香の所為で匂いが分かんねえ、」

「えぇ、そんな事ないでしょう? 僕には聞こえなかったよ、それより、とろとろだあっ、」


 じゅるじゅると卑猥な音をさせながらリューイの秘裂に舌を這わせ、止め処なく溢れる蜜を吸うように飲み干してから口を拭ったトウマは恍惚の表情で、寝台に眠ったままのリューイを見下ろした。

 事実、母親は違えど彼女リューイは自分の妹、である。
 いくら性に奔放なドラファルトといえど、”禁断の恋”である事には違いない。

 竜王の長男であり次期竜王に決まっている兄、ロンファに知られたら、きっと半殺しにされるだろう。でも、それすらも、彼ら二人の気持ちを昂らせ、そして高揚感をもたらすのだ。

 どんなに我慢しても、この劣情を抑える事などできず、初めて寝ている彼女に手を出してしまってからはその禁断の果実に手をつけてしまったような背徳感に胸が高鳴った。



 ────── きっともう歪なんてものではない。
  愛に飢えて、獣欲に呑まれ、その出口を見失い、狂っているのだ。



 背徳感を感じる一方で高揚感を得るなど、感情が破綻している。
 そしてそれをどちらも同じように感じていたのだから、二人はやはり双子なのだろう。

 しかし彼女は第一王女。政略結婚で他国に奪われてしまうのではと焦り、誰にも手渡したくなくてこんな一方的な関係をもう既に半年以上続けている。

 最初は全く濡れなかったその秘部も、リューイが兎獣人の女官クレハとの関係を深く持つごとに変わっていった。だから、双子にとってもリューイが彼女と愛し合ってくれるのは都合がよかったのだ。



 ───── 昼はあの兎獣人の女官と愛し合い、夜は自分達に愛でられる。これで良いのだ。



「チッ、やっぱ、餌撒きすぎてるだろ! はあ、リューイが今起きて事実を知ったら、オレらの事受け入れられないだろうな。もういっそ挿れるか?」

「ええ、だめだよ! 流石に睡眠姦はしたくないよ。ちゃんと意識があった状態で愛し合いたいもん!」


 今更すぎるその弟の言葉にユウマは冷ややかな眼差しを向けた。
 そしてリューイに純粋な恋愛感情を抱いている弟にはあまり言いたくはないが、仕方ないと意を決して口を開く。


「馬鹿。お前、リューイはあの兎の雌にしか興味ないだろ。意識があってオレ達と交尾するなんてありえねえ、」


 トウマは兄のその言葉に肩を落とした。リューイと自分が心を通じ合わせられる事なんてない。そんなのは頭では理解している。だが、理解はしていても、分かりたいわけではないのだ。


「······まぁ、ね。確かにそうなんだけど······、」



 ────── バタンッ、バタバタバタバタ



 直後、部屋の扉が大きく音を立てて閉まった。

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