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37. これが私の初めての、、
「シェリル······好きだ」
「っ、は······」
シェリルはあまりに突然の事に息をしていなかった事に気付き、大きく息を吸い込んだ。
ドキドキと早鐘を打つ胸を抑え、彼の紡いだ言葉を復唱する。
「す、き······?」
「ああ、いきなり言うのは失礼かもしれないけど、君の事が凄く気になって······ずっと頭の片隅から離れないんだ」
「······」
シェリルはその言葉の意味を考えた。
確かに、自分もヒューの事ばかり考えている。
だってこうして突然キスをされても、怖いとも、気持ち悪いとも思わなかったのだから。
むしろ、やっと出来たそれに、心地良いとすら思っている······。
「あの······私には好き、という気持ちが分からなくて······。でも私も、最近はヒュー様の事をずっと考えていまして······それにっ、以前の答えですが······ヒュー様以外の他の男性に口づけされるのは怖い······と思うのです」
言いたい事が上手くいえなくて、シェリルはモゴモゴと言葉を絞りだす。
「うん、良いんだよ。少しは意識してくれているって思ってもいいのかな?
もう一度キス、しても?」
にっこりと妖艶に、それでいて愛おしそうに微笑んだヒューを見て、シェリルは顔を染めてコクりと小さく頷く。
それを見たヒューは耳元で一言囁いた。
「鼻で息をして」
「へ······?は、っんう、!」
唇を塞がれ、一瞬驚きに身体がびくりと跳ねたシェリルだったが、そのまま彼に身を委ね瞳を閉じる。
不思議······やっぱりヒュー様にキス、されると世界が止まっているように周りの喧騒も、何も、聞こえない。
ただ、重ね合わさった温かい唇の感触がとっても心地良い······幸せ······そう思う。
これが······私の······初めての······キス······。
シェリルが身体の力を抜けば、ヒューは彼女の身体をそっと抱きしめる様に近づける。
それを受け入れたシェリルは自分の両手を彼の腰に回した。
少しの距離もなく、もしかしたら心臓の音がヒュー様に聞こえてしまっているのでは。とシェリルが心配になり始め彼から離れようとした時、ヒューはシェリルの頤を少し強く掴んだ。
角度を変えてその味を確かめるかのように啄まれる唇にシェリルから吐息が漏れる。
初めてのキス······なのに、なぜこんなにも気持ちよくて、もっと欲しいなんて······
少し開いたシェリルの唇の隙間に、自分のそれを滑り込ませ、お互いの唇が少し濡れて潤った瞬間。
ヒューベルは頭がグらりと揺れるのを感じた。
『こ、これは······』
美味しい、熟れた果実のようだ。もっと······もっと舐めたい。
頭の中がそんな言葉に支配されて、でも、まだ抗う正常な思考が自分自身を必死に止め抵抗する。
『主ッ!駄目だ!媚薬の効果が強すぎるよ!』
リルの声が脳内に響いて、ヒューベルは失いかけていた理性を手繰り寄せた。
でも、欲望を完全に手放す事などできず、開いた唇の隙間から少し零れ落ちた彼女の唾液を舌で掬いとるように軽く舐めると身体を引き離す。
「っは······ぁ」
効果は自分にだけ効いているわけではないらしい。
シェリルの顔が上気し、とろんとした瞳がヒューベルを捉え、彼は唾をゴクリと飲み込んだ。
駄目だ。ここでこれ以上彼女に触れたら、もう、歯止めが効かなくなる。
そう感じた彼は平常心を心がけるとシェリルの頭をゆっくりと撫でた。
「シェリル······大丈夫?······嫌じゃなかったかい?」
シェリルがブンブンと首を横に振って、ヒューは安堵した。
彼女の媚薬の所為とはいえ、初めてのキスなのに少しやりすぎて嫌われていたらどうしようかと思って。
『媚薬には耐性があるはずなんだけど、ちょっとこれは想像以上に強いな······リル、すまないね』
『ボクも、今主の身体に取り込まれた媚薬の中和に必死だ······』
『そうか······それはちょっと危険だ。今後こうならないように対処できるかい?』
『うん、今回ので媚薬の強さは分かったから、耐性は徐々に付くとは思うけど······でも、こんなに強いもの、完璧には打ち消せない気がするな』
『分かった』
ヒューベルは自分の取り込んだ媚薬の処理に追われるリルとの念話を終え、シェリルを見下ろし······その欲情した美しい瞳と目が合った。
「ヒュー様と······もっとキスがしたい······の」
宝石の様に澄んだアクアマリンが欲に濡れて僅か濁り、焦点の合わなくなったその瞳で自分を見つめた彼女は、甘い吐息と共にそう言葉を発して。
ヒューベルは身体の熱が集まり始めたのを感じて咄嗟にシェリルから距離を取ると、直ぐに用意していた媚薬効果を打ち消すポーションを渡す。
「シェリル、すまない。少しやりすぎてしまった様だ。媚薬の影響が強いみたいだから、これを飲めるかい?」
「ビヤク······の?······は、い······」
シェリルがそれを飲み干したのを見守ってから、力が抜けて崩れ落ちる彼女を抱きとめると、横抱きに抱き上げた。
「ごめんね、歩けないと思うから、僕が寮の近くまで送るから」
ヒューベルは自分の欲望に鞭うった。
こんなところで我慢できなくてどうする。
彼女を囲う為の準備はもう整っている。もうすぐ、もうすぐ迎え入れる事ができるのだから。
こんなところで欲望に負けているわけにはいかないのだ。
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