【R18/完結】転生先は親友だと思っていた友人の小説の中でした。- 悪役令嬢になりきれないから、王弟殿下に調教されています -

猫まんじゅう

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46. 出られないその部屋で※



「それで······あの女の······って、殿下。聞いてます?」
「いや、聞いてないな」

 ロイドが隣に目を向ければ、エヴァンは首を振った。
 ヒューベルが婚約者となったシェリルに裏切られ、彼女を”あの”部屋に軟禁してから、もう一週間が経っていた。

 最近のヒューベルは夕方を過ぎると心此処にあらずといった様子で、顔がだらしなく緩んでいて、エヴァンもロイドも背後にある理由はなんとなく分かっていても、何も言えずにいた。

「ヒュー······」

 ヒューベルはエヴァンの言葉の続きは聞かずに立ち上がる。

「さて、そろそろ時間だな。あの女の事は監視しているから大丈夫だよ。あと、後期の社交界演習の件だけど、それはシェリルも連れて行こう。勿論今回は僕も行く。厳戒態勢を敷いて行くからその準備はしておいてね」

 『まだふた月もあるんだから大丈夫だよね?』そうにっこりと微笑んで、足早に執務室を出て行ったヒューベルを見て、お辞儀から身体を戻したエヴァンとロイドは顔を見合わせた。

「あの上の空状態で内容を全部把握しているとは······本当に、凄い人ですね」
「ってか、姫さん大丈夫かよ?あんな化け物みたいな人に······長い間軟禁されるとか。生きてるんだよなぁ?」

 執務室にはそんなエヴァンとロイドの言葉と乾いた笑いだけが響き渡っていた。



 その頃、時を同じくして、シェリルは与えられた部屋で晩餐を食べ終わった。
 最近では、もうこの部屋からは逃げられない事も分かり、夜になれば必ずヒューベルが来ることも分かっている。
 いや、分かっている。というか、きっともうこの状況に慣れてしまった、というのが正しいのかもしれないけれど。

 そして彼は甲斐甲斐しく自分の世話をするのだ。それも、入浴の世話を······。

 最初は感じていた、裸にされて身体を清められる事に対する恥ずかしいという気持ちも、最近は薄れつつある······。シェリルは窓に映った自分の姿を見て溜め息をついた。

「はぁ······いつ、此処から出して頂けるのでしょうか?」

 此処は、確かに逃げ出せない隔離された場所。けれど、前世でいたような牢屋とは違う。
 ヒューベルによると、そこは彼の私室内部に隣接され、国王の部屋と相応ないレベルの美しい部屋らしい。そして、此処に出入りを許されているのはシェリルの傍付き兼、この部屋の管理をしている黒髪長髪の見目麗しい青年一人だけだ。

 そんな彼が、身体に直接触れる事以外の大抵の身の回りの世話をこなす。
 シェリルは、背筋をピンと伸ばして目の前に立っているその青年、ロイを見つめた。

「姫様、それはワタシには分かりかねます」

「ロイさま、私はヴァレンティ―ナに一度会いたいだけなのです。学園に戻りたいわけではないの······。これを貴方に言ってもどうにもならないとは分かっているのですが······」

「姫様、お力添えできず申し訳ありません······」

 彼に何を頼んでも、結局この部屋とヒューベルの事以外は何も情報は得られない。
 ただ、こんな本が読んでみたいとか、そういう要望は出来うる限り叶えてくれるのだけど。
 
「いえ······。これも、全てヒューベル様が決めておられるのですものね······」

 閉じ込められて、怖い、という気持ちはもうない。
 だって、夜眠るとき以外はヒューベルかロイが常に傍にいてくれるから。

 むしろ、逆に、ヒューベルとの関係がより深くなっていくことの方が怖いのかもしれない。
 だって彼に対する気持ちが加速している気がするから。

 シェリルが二度目の大きなため息をつこうとした時、重厚なドアがゆっくりと開いて、すぐにロイが傅いた。

「ヒューベル殿下、お待ちしておりました。本日の姫様の御様子は······」

 ロイの報告の後、ヒューベルが頷くと彼は一度深くシェリルにお辞儀をしてから退出する。
 扉が閉まったのを確認したヒューベルは、シェリルの座っているダイニングテーブルの目の前に腰を下ろした。

「シェリル、寂しくなかったかい?ごめんね、少し遅くなってしまって。さて、浴室に行こうか」

 頬杖をついてうっとりとした表情でこちらを見つめた彼の瞳に自分の姿が映って、シェリルは顔を俯ける。それを気にする様子もないヒューベルに手をそっと掴まれて、引かれるままについていった。

 浴室の手前で止まった彼は、シャツの袖を折り捲りながらシェリルを見る。

「シェリル、僕が脱がせた方がいいかな?それとも、自分で出来る?」
「じ、自分で脱げますので······っ、」

 ヒューベルに行われていた身の清めは、この部屋に来た初日こそは温かいお湯を染み込ませた布によるものだったけれど、それは翌日から浴室に変わった。

 浴室なら、自分一人で出来ると考えていたのはどうやらシェリルだけで、ヒューベルは違ったらしい。
 だって彼は、シェリルの入浴補助というものを絶対に譲らなかったから。

 最初は彼に脱がされていたのだが、最近はもうそれも諦めて、シェリルは自分でローブを下ろす。
 パサリといつもと同じデザインのローブが床に落ち、下着すら身に着けていない裸体が鏡に映されてシェリルは鏡から目を背けた。

 そんなシェリルを見たヒューベルは、後ろから彼女の身体を抱きしめると、頤に手を添えてシェリルの顔を鏡に向ける。

「シェリル、見てごらん。目を反らさないで。こんなに美しいのに、どうしてそんな顔をするんだい?」
「私はキモチワルイのです······ずっと鏡は嫌い······だったの······」

「それは、間違っているよ、シェリル。君はキモチワルくなんてない。こんなに美しいのに。どのパーツを見ても、芸術の様だ」

 ヒューベルはシェリルの手を引いて、浴室に入ると、優しく身体の状態を確認するように触れた。

「っ······やぁ、」
「ほら、この滑らかな肌も、柔らかくて女性らしい部分も······ね?」

 ヒューベルの細い指が適度な圧を掛けながら全身を撫で、双丘を下から寄せあげては離れ。
 たゆんっと揺れた胸の突起がピンと上向きに立ってシェリルはまた赤面した。

「何故······私だけが裸、なのですか······」

 シェリルはずっと疑問だった事を口にする。
 ヒューベルはいつも軽めの身動きのし易そうなシャツとズボンをはいたまま、濡れながら自分を清めるのだ。
 濡れたシャツが彼の皮膚に張り付き、それはそれは妖艶な色香を漂わせているのだけれど······でも、自分だけ裸体というのはかなり恥ずかしいから。

「うん、そうだね。このロザリア王国では男性の裸体を初夜以前に女性に見せるのはあまりよろしくないから······かな?」

「それでは······でも······」

 シェリルはヴァレンティ―ナが学園で行っている男性との逢瀬の数々を思い出した。

「君の”友人”は普通であれば絶対に犯してはいけない事をしているんだよ。けれど、まあ一応、婚約者であり王族であるアロラインの裸体はまだ見ていない筈だ。······とはいっても、アルはあまりそれも気にしてはいないと思うけどね······」

「っ、ひぁっ!」

 直後、ヒューベルの手が臀部を撫で、シェリルの身体が大きく跳ねる。
 咄嗟に彼の顔を見上げれば、その美しい瞳が細められて。

 そのあまりに艶やかな雰囲気にシェリルは息を呑んだ。
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