58 / 63
57. 僕達の初夜をはじめよう
この話の後は初夜で1話目となります。
次話の58は1話の後という流れとなりますのでご承知おき下さい。
また、こちらはムーンライトで先行して公開しておりますが、現在追いついて参りましたので、投稿数を減らし今週土曜日で完結となります。
********************************
ヒューベルは自室のドアを開けて、ヒミツの部屋まで歩を進める。
「殿下っ、シェリル様は······ッ!?」
ヒューベルに抱かれた服の破れたシェリルを見て、ロイは息をのむ。
「直ぐにお召替えを······」
「良い、私がやる。ロイ、エヴァンが戻り次第、ライザルという······酒場の店主にシェリルの護衛に頼むように手配してくれ。こんなんでは私の心臓がいくつあっても持たない」
言葉の節々から彼の怒りが滲みでて、ロイは深く腰を折った。
「はい。承知致しました、必ずお伝え致します」
「ああ、それと。神殿の者を連れてきてくれ。今から、シェリルとの初夜を執行する」
「へ?は······はい······」
ロイはあまりに急な事に一瞬思考が停止し、咄嗟に頷いた。
「あ、あの······初夜の準備などは······?」
「必要ない。これは既成事実を作る為のものだ」
「わ、分かりました······」
ヒューベルが部屋に入ったのを見送って、ロイは直ぐに言われた事を実行するため王城を飛び出した。
「シェリル······ッ、くそ······私の所為だな······」
シェリルを寝台に横たえ、ヒューベルは紐を優しく解いていく。
強く掴まれたからか、乱暴に扱われたのか······真っ白な肌に内出血が出来ていて、くっきりと付いた赤黒い痕にヒューベルは顔を歪めた。
「貴女を学園に行かせなければ······こんな事には······」
温かい湯を張った桶に布を浸し、シェリルの背中を優しく拭きながら、彼は赤紫になった緊縛痕に口づけを落としていく。
こんなに愛おしい存在を男達に手荒く扱われ、憤慨しない男がいるのだろうか?
二人の大切な存在すらも守れなかった自分に、シェリルの処女を奪う権利なんてないのかもしれない。
けれど、自分は彼女がいなければ、どうにかなってしまうから。
「完全に僕の自己満足だ······すまない······」
ヒューベルは拳を握りしめる。
仰向けにして横たえ、涙で濡れた顔を優しく拭って、ヒューベルはキスを落としていく。
破れたドレスから純白の夜着に着替えさせ、彼は彼女を見下ろした。
「シェリル······こんなにまでされて、僕はおかしくなってしまいそうだ······。君をグチャグチャにして、自分の色に染めたいと思ってしまうなんて······、僕も変、なんだろうね······」
『人間なんか、皆”変”だろ、主?』
突如リルの声が聞こえた気がして、ヒューベルは部屋は咄嗟に顔を上げる。
『主、大丈夫。シェリルは触られていないよ。ボクが死守したんだ。だから、落ち着いて······ここで、二人の気持ちが離れてしまったら駄目だ······』
「······リル、念話を使っているのか?どこから······?」
『シェリルの中さ。ボクも知らなかったんだけど、あのイヤな女、シェリルにもう一つ設定があるって言ったんだよ』
「今、あの女の話はしたくないが······重要な繋がりがあるのかい?」
『うん。あの女、シェリルは”神の器”を持ってるって』
「それは······名器、という事を言いたいのかい?」
『うーん、いうなれば神に捧げられる名器という事なんじゃない?』
「待て······その神とは、国王の事を指しているのか?それとも大精霊か?」
そう、この国の信仰対象は神ではなく、大精霊。
精霊が気まぐれで魔法を行使し人を助けると信じられているが、肉眼で見る事がない為、その頂点となる大精霊が実態のない”神”という事になって拝められているのだ。
そして、この国の国王も唯一魔法が使える存在である事から、大精霊の祝福を受けた存在で”神”と例えられる事がある。
『主······大精霊様は女性なんだ。シェリルを主から奪ったりしないって······』
「······それで?」
『って事は、大精霊すら体内に宿せる器となり得るんじゃないかと思ったんだよ』
「なるほど?だから高位精霊の君が宿れた······という事か」
『そう、でもやっぱり体力を取ってしまったみたい······僕も力を使い過ぎてしまって······だから、もう一旦お別れだ······シェリルはもう目覚めるよ······』
ヒューベルはか弱くなっていくリルの声を聞いて、立ち上がった。
「リル、どうやったらお前はまた具現化できる?」
『それは······シェリルがこの力を操れるようになれば······きっと······』
変態覗き見野郎なんて罵っていたが、ヒューベルにとってリルは心の底から繋がりを持った相棒。それは、魔法の力を得られるからという理由ではなく、ただ一人の友人として、だ。
だから、彼にはまだ言いたい事も食べさせてやりたい物も沢山あった。
「リル、シェリルを助けてくれて、ありがとう。······大精霊の祝福があらん事を」
『主······ボクの大切な友人達へ······精霊は君たちに祝福を······』
リルの声がしなくなって、ヒューベルはシェリルを抱きしめた。
「二人が無事で本当に良かった。······でもね、シェリル、僕は怒っているんだよ」
ガシャリと鈍い金属音をさせ、ヒューベルはシェリルの両腕を手錠で繋ぐ。
「もう、どこにも行かせないし、危ない目にも合わせないよ。君を失う事なんて、僕にはできないんだ······」
ヒューベルはシェリルの額にキスを落とし、そのまま浴室に向かうと自分の身体を清める。真っ白な美しいローブに身を包んだ彼はシェリルの横たわる寝台の隣に腰掛けて髪を撫でながら一房掬い取り耳に掛けた。
「シェリル、起きて。少し前倒しになってしまったけど······僕達の初夜を始めよう」
次話の58は1話の後という流れとなりますのでご承知おき下さい。
また、こちらはムーンライトで先行して公開しておりますが、現在追いついて参りましたので、投稿数を減らし今週土曜日で完結となります。
********************************
ヒューベルは自室のドアを開けて、ヒミツの部屋まで歩を進める。
「殿下っ、シェリル様は······ッ!?」
ヒューベルに抱かれた服の破れたシェリルを見て、ロイは息をのむ。
「直ぐにお召替えを······」
「良い、私がやる。ロイ、エヴァンが戻り次第、ライザルという······酒場の店主にシェリルの護衛に頼むように手配してくれ。こんなんでは私の心臓がいくつあっても持たない」
言葉の節々から彼の怒りが滲みでて、ロイは深く腰を折った。
「はい。承知致しました、必ずお伝え致します」
「ああ、それと。神殿の者を連れてきてくれ。今から、シェリルとの初夜を執行する」
「へ?は······はい······」
ロイはあまりに急な事に一瞬思考が停止し、咄嗟に頷いた。
「あ、あの······初夜の準備などは······?」
「必要ない。これは既成事実を作る為のものだ」
「わ、分かりました······」
ヒューベルが部屋に入ったのを見送って、ロイは直ぐに言われた事を実行するため王城を飛び出した。
「シェリル······ッ、くそ······私の所為だな······」
シェリルを寝台に横たえ、ヒューベルは紐を優しく解いていく。
強く掴まれたからか、乱暴に扱われたのか······真っ白な肌に内出血が出来ていて、くっきりと付いた赤黒い痕にヒューベルは顔を歪めた。
「貴女を学園に行かせなければ······こんな事には······」
温かい湯を張った桶に布を浸し、シェリルの背中を優しく拭きながら、彼は赤紫になった緊縛痕に口づけを落としていく。
こんなに愛おしい存在を男達に手荒く扱われ、憤慨しない男がいるのだろうか?
二人の大切な存在すらも守れなかった自分に、シェリルの処女を奪う権利なんてないのかもしれない。
けれど、自分は彼女がいなければ、どうにかなってしまうから。
「完全に僕の自己満足だ······すまない······」
ヒューベルは拳を握りしめる。
仰向けにして横たえ、涙で濡れた顔を優しく拭って、ヒューベルはキスを落としていく。
破れたドレスから純白の夜着に着替えさせ、彼は彼女を見下ろした。
「シェリル······こんなにまでされて、僕はおかしくなってしまいそうだ······。君をグチャグチャにして、自分の色に染めたいと思ってしまうなんて······、僕も変、なんだろうね······」
『人間なんか、皆”変”だろ、主?』
突如リルの声が聞こえた気がして、ヒューベルは部屋は咄嗟に顔を上げる。
『主、大丈夫。シェリルは触られていないよ。ボクが死守したんだ。だから、落ち着いて······ここで、二人の気持ちが離れてしまったら駄目だ······』
「······リル、念話を使っているのか?どこから······?」
『シェリルの中さ。ボクも知らなかったんだけど、あのイヤな女、シェリルにもう一つ設定があるって言ったんだよ』
「今、あの女の話はしたくないが······重要な繋がりがあるのかい?」
『うん。あの女、シェリルは”神の器”を持ってるって』
「それは······名器、という事を言いたいのかい?」
『うーん、いうなれば神に捧げられる名器という事なんじゃない?』
「待て······その神とは、国王の事を指しているのか?それとも大精霊か?」
そう、この国の信仰対象は神ではなく、大精霊。
精霊が気まぐれで魔法を行使し人を助けると信じられているが、肉眼で見る事がない為、その頂点となる大精霊が実態のない”神”という事になって拝められているのだ。
そして、この国の国王も唯一魔法が使える存在である事から、大精霊の祝福を受けた存在で”神”と例えられる事がある。
『主······大精霊様は女性なんだ。シェリルを主から奪ったりしないって······』
「······それで?」
『って事は、大精霊すら体内に宿せる器となり得るんじゃないかと思ったんだよ』
「なるほど?だから高位精霊の君が宿れた······という事か」
『そう、でもやっぱり体力を取ってしまったみたい······僕も力を使い過ぎてしまって······だから、もう一旦お別れだ······シェリルはもう目覚めるよ······』
ヒューベルはか弱くなっていくリルの声を聞いて、立ち上がった。
「リル、どうやったらお前はまた具現化できる?」
『それは······シェリルがこの力を操れるようになれば······きっと······』
変態覗き見野郎なんて罵っていたが、ヒューベルにとってリルは心の底から繋がりを持った相棒。それは、魔法の力を得られるからという理由ではなく、ただ一人の友人として、だ。
だから、彼にはまだ言いたい事も食べさせてやりたい物も沢山あった。
「リル、シェリルを助けてくれて、ありがとう。······大精霊の祝福があらん事を」
『主······ボクの大切な友人達へ······精霊は君たちに祝福を······』
リルの声がしなくなって、ヒューベルはシェリルを抱きしめた。
「二人が無事で本当に良かった。······でもね、シェリル、僕は怒っているんだよ」
ガシャリと鈍い金属音をさせ、ヒューベルはシェリルの両腕を手錠で繋ぐ。
「もう、どこにも行かせないし、危ない目にも合わせないよ。君を失う事なんて、僕にはできないんだ······」
ヒューベルはシェリルの額にキスを落とし、そのまま浴室に向かうと自分の身体を清める。真っ白な美しいローブに身を包んだ彼はシェリルの横たわる寝台の隣に腰掛けて髪を撫でながら一房掬い取り耳に掛けた。
「シェリル、起きて。少し前倒しになってしまったけど······僕達の初夜を始めよう」
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約破棄?いいですけど私巨乳ですよ?
無色
恋愛
子爵令嬢のディーカは、衆目の中で婚約破棄を告げられる。
身分差を理由に見下されながらも、彼女は淡々と受け入れようとするが、その時ドレスが破れ、隠していた自慢のそれが解き放たれてしまう。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまで
ChaCha
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したことに気づいたアイナ・ネルケ。
だが彼女はヒロインではない――ただの“モブ令嬢”。
「私は観る側。恋はヒロインのもの」
そう決めて、治癒魔術科で必死に学び、気合いと根性で仲間を癒し続けていた。
筋肉とビンタと回復の日々。
それなのに――
「大丈夫だ。俺が必ず君を守る」
野外訓練で命を救った騎士、エルンスト・トゥルぺ。
彼の瞳と声が、治癒と共に魂に触れた瞬間から、世界が静かに変わり始める。
幼馴染ヴィルの揺れる視線。
家族の温かな歓迎。
辺境伯領と学園という“日常の戦場”。
「……好き」
「これは恋だ。もう、モブではいたくない」
守られるだけの存在ではなく、選ばれる覚悟を決めたモブ令嬢と、
現実しか知らない騎士の、静かで激しい溺愛の始まり。
これは――
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまでの物語。
※溺愛表現は後半からです。のんびり更新します。
※作者の好みにより筋肉と気合い…ヤンデレ落ち掛けが踊りながらやって来ます。
※これは恋愛ファンタジーです。ヒロインと違ってモブは本当に大変なんです。みんなアイナを応援してあげて下さい!!
※本編は完結しました。後日談をのんびり不定期でUPしてます。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。