ストーリーテリング

bosobosonovel

文字の大きさ
30 / 30
ストーリーテリング

エピローグ 非○非非○処

しおりを挟む
「……ごめんね、笑わせようとしてたはずなのに……2人とも泣いちゃってたね」

 僕は、ハンカチでリコの溢れ出ている涙を拭ってあげる。

「私は……過去の私ときちんと向き合えたのかな……」
「向き合えたと思うよ。それにそれは君の中の一要素、それにこだわりすぎる必要なんてない。その都度その都度、必要なものをつなぎ合わせたり離したり、先天的なものと後天的なものを区別して、意識的に無意識に選択していく必要があるんだ」
「……うん、いろんな笑顔を知っていけば、私も過去の自分を、最期のお父さんの笑顔を、違う捉え方ができていくのかもしれない。その時、きっと何かが見えてくるのかもね」

 この世の中、片側だけ、一要素だけじゃわからないことばかりだ。完全な白黒なんてない。両面で捉える、片方片方を交互に行ったり来たりする。その中で、自分がグレーのどの辺りが落ち着くかを探っていく必要があるのかもしれない。

「僕は、認知症のお婆ちゃんを見て思ったんだ。笑顔じゃない笑顔もあるんだろうって。きっと、物語を紡ぎ続けていけば、リコの望むモノが見つかると僕は信じたい」
「虚構次第……アルトを突き詰めていけば私、私を突き詰めればアルト。そうなのかもしれないね」

 利己と利他は、煎じ詰めれば同一。そうなんだろう。
 きっと、ここが僕らのシンギュラリティ……ここからは誰も分からない、いろんなことが加速していくと思うんだ。
 僕はカバンの中から包みを出す。

「これ、タイミングずれちゃったけど、クリスマスプレゼント……ほら、三鹿野さん達からお礼をもらえたから」

 リコは静かに包みを受け取って、丁寧に開けていく。

「……鈴?」
「う、うん。話を聞く前だったから……お父さんからの鈴には及ばないかもしれないけど……」
「ううん、嬉しい……こんな鈴もあるんだね」

 女の子の趣味は僕にはわからない。
 だから、僕はリコが好きだという鈴を、ただの鈴を買った。ピンポン玉くらいの綺麗に光る鈴を。

「この鈴もいろんな音を奏でてほしいな。まぁ置物ちっくのものなんだけど」
「いろんな音?」
「あぁ……リコの髪飾りの鈴からは僕にはいろんな音が聞こえたように思えたから」
「そう……それなら、こうしたら、いつでも持ち歩けそう」

 そう言って、リコは僕のミサンガだったヒモを鈴に繋げ結びつける。
 役目を終え10年近く身につけていたヒモは、ボロボロで眠りについているようにも見えた。

「え……汚くない? 新品のもまだあるよ?」
「ううん、これを鈴の緒にしたいの」

 リコは、立ち上がり、鈴を鳴らしている。無邪気に鳴り響く鈴達は、綺麗で鮮明で純粋だ。
 僕のミサンガだったヒモは、願いを叶えるお守りから、いろんな人たちと繋いでくれた役割から、リコの鈴を鳴らすためのヒモへと役割を変えた。外見は同じでも、役割は、その意味付けは僕ら次第だ。
 人は、過去を人生を虚構を何度も考え直し、捉え直し、その意味を見出していくんだろう。

「綺麗な音だね……リコ! 僕はこれからも君の笑顔を一緒に探すよ!」
「プロポーズみたい……ね」

 鈴を鳴らしながら後ろで手を組んでイタズラっぽい仕草で振り返るリコの表情は、今までで1番輝いて見えた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...