ノーベル賞受賞屋が乙女ゲームの世界に転生した。

鹿島 ギイチ

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第一部 第二章

第3話 脱出と紹介

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 僕は、貴族の子息たちに啖呵を切ると、虐められていた男の子の前に立ち、いつでも反撃できるように身構えた。

「はっ、こいつの友達だと、笑わせるな。こいつに友達が存在するかよ。」

 リーダー格の貴族の子弟がそう言うと、取り巻きたちも「そうだ、そうだ」と囃し立てた。

「何お、言わせておけば。」

 虐められていた男の子が、その言葉に激怒し、彼らに殴りかかろうと身構えたが、僕は、それを察知し、腕を掴んで押しとどめた。

「何すんだよ。離せよ。」

 男の子は、抗議してきたが、僕は首を振り、こう言った。

「こんな奴らを殴る必要なんてないよ。ただの威を借る狐だから。」

 それが聞こえていたのか、リーダー格の少年は、僕に突っかかってきた。

「貴様、平民の分際で、僕を馬鹿にしたな。」

 そう言うと、拳を握り、僕に対して、殴ってきた。僕は、それを片手で止めると、懐から先の魔石を取り出し、地面へと叩きつけ、男の子に目と耳を塞ぐ様に指示をし僕も行った。
すると、先程と同じく、強烈な光と爆音が鳴り響き、それをまともに喰らった貴族の子息たちは、戦意を喪失していた。
この機を逃さず僕は、男の子の肩を握り、こう唱えた。

「跳躍<リープ>」

 僕と男の子の足元に魔術陣が出現し、僕の魔力を使って、魔術が発動した。そして一瞬の内に裏路地の広場の中で一番高い建物に着地した。

「よっし、脱出成功。」

 助けた男の子は、度肝も抜かれていて屋根の上に尻餅をついていた。

「大丈夫、立てる?」

 と言って僕が、手を差し出すと、男の子は、僕の手を握り返しながらこう言った。

「ありがとう、でも君、魔術が使えるんだね。すごい。」

「どういたしまして、まだ簡単なものだけだけどね。」

 そう言って、僕は、男の子に名前を言った。

「僕は、エギル。エギル・フォン・ノークス。君は?」

 僕の名前を教えると、男の子も答えてくれた。

「俺は、ダンテ・フォン・クリスタ。皆からは、ダンテって呼ばれているよ。」

「ダンテか、いい名前だね。」

 僕は、ダンテに手を差し出し、ダンテも僕に手を差し出してガッチリと握手をした。握手をし終えるとダンテは、下に居るはずの貴族の子息たちを心配していた。

「あいつら、すごく痛がってたけど、大丈夫なの?」

「大丈夫、ただのスタン魔石だから、害はないよ。それにほら、聞こえて来たよ。」

 僕は、ダンテに屋根から少し顔を出すように言った、ダンテは、恐る恐る屋根の上から顔を覗かせると、彼らの姿が見えて来た。

「くそ、あいつらどこに行きやがった? この高貴な僕を馬鹿にしやがって。」

 すると取り巻きの連中も回復して起き上がると、リーダー格の少年は、彼らに僕らを探すように命じ、自分は帰ると言って帰っていった。
僕は、それを見届けると、次の行動の準備を始めた。

「エギル君、これじゃ逃げられないよ、あいつら俺たちの事を、探しているし。」

 ダンテが、不安そうに聞いてきた。

「大丈夫、屋根の上を伝っていけば問題なし。ダンテの家は、何処に有るの?」

 僕は、ダンテに安心するように伝えると、家の場所を聞いた。

「あっちの方向にある教会のすぐそばにあるよ。」

 ダンテが、指で指し示した方向を見ると、確かに教会の尖塔が見える。僕は、位置を確認すると、ダンテに、僕におぶさるように言うと、身体強化の魔術を起動した。

「ダンテ、しっかりと掴まっていてよ。」

 僕は、ダンテに念を押す。

「分かった、エギル君。」

 ダンテも了解をし準備が、整った。僕は、準備した魔術を起動し、こう言った。

「行くぜ。跳躍<リープ>」

 僕は、ダンテを背負って跳躍をした。
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