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第一部 第二章
第9話 断罪と温情
しおりを挟む〔デイ・ノルド王国〕首都近郊 〔ダービル城〕城内
『王国合同総合火力演習』は、一部に問題は起きたが、滞りなく終了を迎えていた。午後の部の実戦演習において目覚ましい活躍をした者たちに対しての褒章として現在城内の広間において、無礼講の夜会が、開催されている。
そんな騒がしい城内を僕は、数人の供を連れてある場所に向かっていた。
「母上たちは、〔ハルマ―〕にお帰りになった?」
僕は、供の一人であるオルティシアに確認をした。するとオルティシアは、こう答えた。
「はっ、王妃陛下方は、〔ハルマ―〕にお帰りになり、本城の方で今回の演習の参加者の妻子たちを招待した夜会を開催されております。」
「うん、分かった。」
僕が、オルティシアからの報告に了解の意を表した後、同じく供として同行しているダンテが、こんな事を聞いてきた。
「エギル、これからどこに行くの?」
「あ~、ダンテには言ってなかったけ?」
「うん、何にも聞いていない。」
「それは、ごめん。降りながら説明するから。」
そう言って僕は、ダンテにこれから行く場所とこれから行われることを説明しながら目的の場所に向かって階段を降りて行った。
しばらく階段を降りて行き、城の地下に到着すると、長い廊下が続いていた。その廊下を僕たちは進んで行く。廊下の左右には、最小限の明かりが設置されているだけで何も飾られていない。
そんな廊下を進んで行くと頑丈そうな扉が見えて来た。頑丈そうな扉の左右には、これまた頑丈そうな重鎧と呼ばれる鎧を纏った騎士たちが、門番として立っていた。
僕たちが、近づくと手に持っている戦斧(バトルアックス)をクロスさせ、通行を遮断し許可があるかと聞いてきた。
「この先には、許可をもらった者しか入れません。許可はございますか?」
そう言われ僕は、父上から予め教えられていた王族が行う方法を行った。その方法とは、まず扉の前の廊下に書かれている文様の中心に乗り、自分の魔力をその文様に少し注ぎ込む、すると文様の一部が開き、特殊な石で出来た石板が出で来る、そこに自分の洗礼名とノルドの名字を筆記することにより、その者が、王族の者であると証明され許可を得ることが出来るのである。
ただし、これで証明されるのは王族の僕だけであり、他の人は、許可の証明が出来ないので、そこで予め父上からの許可書を貰い、貰った許可書を重鎧を着た騎士たちに提示する、すると許可書に使われている特殊な魔力インクにより使用者の魔力を写し取り、その書かれたインクを重鎧のバイザーで見ると魔力が視認できるのである。
視認した魔力が、重鎧に登録された現国王の魔力と一致すれば、その許可書に名前が書かれている者も許可を受けた者たちと分かるのである。
「確認いたしました、どうぞお進みください。」
そう言うと騎士たちは戦斧(バトルアックス)で組んでいたクロスを解き、扉を開放し礼をしながら僕たちを向かい入れてくれた。
僕たちは、そのまま扉の中に入ると、そこは小さな部屋になっており、人数分の椅子が用意されており、更に正面には幕が下りており、向こうを見通すことはできない状態であった。
門番の騎士たちは、僕らが全員入るのを確認すると扉を閉めたのであった。
僕たちは、用意された椅子に着席し、少し待っていると、父上の声が魔法と思われる方法で聞こえて来た。
「これより、断罪の儀を執り行う。」
父上の言葉が終わると、正面の幕が上がり、幕の向こうが見渡せるようになった。その場所は、二階建てになっており、建物の形は、八角形であった。
僕たちは、八角形の建物の二階にいるのであった。
すると建物の中心にある八角形の形をした広場にある扉が開き、手錠と足枷が付けられた人物たちが、ぞろぞろと入ってきて広場の中心へと移動し膝まづいた。
すると父上は、椅子から立ち上がり、下の広場を一瞥すると、横の椅子に置いていた紙を取ると、書かれていることを読み上げた。
「裁きを言い渡す、テイドマ・フォン・ドルパース。貴族特権の乱用及び貴族位の義務の不履行により、伯爵位の剥奪、領地の返還、さらに王国への背任行為及び王族に対する反逆により、極刑に処す。」
それを聞いたドルパース伯爵は、父上に食って掛かった。
「何故です、陛下。私は何も疾しいことはしておりません。ご再考を。」
「くどい、自らしでかしたことを、やっていないというのは、言語道断。再考の余地なし。」
父上は、そう言うと、紙に書かれた文書を再び読み上げて行った。その度に裁きを言い渡された貴族たちは、喚き散らしたが、父上は、一顧だにせず読み上げ続けた。そしてダンテを虐めていた、ドルパース伯爵の三男とその取り巻きの貴族の子息たちにも、裁きが下った。
「そなた達は、いまだ幼少ゆえ極刑を申しつけることはできない、しかしその心根をただすため貴族位の剥奪及び王国軍への強制入営を申しつける。」
それを聞いた彼らは、親たちや成人した兄たちとは違い安堵の表情を浮かべていた。
「これにて、裁きを終わる。」
父上のその言葉により幕が再び降ろされた。僕は、隣に座っているダンテの方を向くとこう問いかけた。
「行こう、ダンテ。」
「うん、行こう。」
そう言って僕たちは立ち上がると扉を開けて部屋の外へと出て行ったのであった。地下から地上に戻り僕たちは、馬車に乗ると一路〔ハルマ―〕への帰路についた。
馬車の中でダンテは、泣いていた。泣きながら「よかった、よかった。」と言っていたのが僕の心に刻まれたのであった。
ダンテを家にまで送り届けると僕は、王城へと戻り後宮の自室で眠りに就いたのであった。
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