ノーベル賞受賞屋が乙女ゲームの世界に転生した。

鹿島 ギイチ

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第一部 第二章

第18話 疑惑と紹介

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 〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王城 国王執務室

 僕ことエギル・フォン=パラン=ノルドは、王城の廊下を歩き、父上が執務をしている国王執務室へと向かっていた。
何のため向かっているのかと言うと、それはとある勉強の課題を教えて貰う為だ。
 今日はリウム先生との授業はないので、課題として渡されていた物である。朝食後からやっていたが、その課題に詰まってしまい、全然進まなくなってしまったのである。母上たちにも聞こうとしたが、今日一日、視察のため城外に出ているのであった。そこで今の時間休憩に入っているはずの父上に教えて貰おうと思い向かっているのである。

 しばらく廊下を進んで行くと執務室の扉と番をする近衛兵の姿が見えて来た。僕は彼らに歩み寄ると声をかけた。

「お勤め、ご苦労様。」

 そう言うと兵士たちは、僕の方を見るとびっくりした顔をしてこう言いだした。

「恐縮でございます、殿下。なお一層励みます。」

 と一人の兵士が言うと、もう片方の兵士もこう言いだした。

「ありがとうございます、殿下。邁進いたします。」

 僕は、そんな彼らに父上への取次ぎを頼むことにした。

「父上は、いらっしゃる?」

「はい、陛下はご在室です。」

 父上が在室かと聞くと在室しているとの回答があり、それに続けて兵士がこう問うてきた。

「お取次ぎいたしましょうか?」

「うん、お願いします。」

 そう答えると、兵士の一人が扉をノックして部屋の中に入ると、父上付きの秘書官に僕が父上に会いたいという旨を伝えると、秘書官は、立ち上がり奥の扉へと進んで行き、中に入っていた。
秘書官は、すぐに出てきて僕の所に来るとこう言った。

「陛下は、お会いすると申しております。殿下、こちらへ。」

「うん、失礼します。」

 僕は、そう言って部屋に入ると秘書官に案内されて奥の部屋へと向かった。奥の部屋の扉を秘書官が三回ノックすると中から「入れ。」と父上の声が聞こえて来た。秘書官は、ドアを開けると一礼し、父上に報告した。

「失礼いたします、陛下。エギル殿下をお連れいたしました。」

「うむ、ありがとう。下がってよい。」

 父上は、そう返事をすると秘書官は、「はっ、失礼いたします。」と言って僕の後ろへと下がった。

「エギル、入りなさい。」

 僕は、父上に呼ばれ「失礼します」と言いながら部屋に入ると、父上は秘書官に向かって首肯すると、秘書官は、ドアを閉めたのであった。
僕は、父上の執務机に近づき持っていた物を見せた。

「父上、これが分かりません? 教えてください。」

 父上は、見せられた問題を見て何に躓いているのかが分かったのか、何回か頷くと、こう言って来た。

「よしいいだろ、エギル。教えてあげるから椅子に掛けなさい。」

「うん、分かった。」

 僕は、近くの椅子を持ってくると腰掛け、父上に教えて貰う体制を取ったのであった。


 それから数10分後、全ての問題が分かり解き終えて、父上からも「よく、出来たな。」と惚れられ執務室を出る事に成った。
僕は、そのまま後宮に帰ろうと王城の廊下を歩いていると、合議の間の近くである物を見つけたのであった。
それは、落ちている紙で、何かが書き込まれていた。僕はそれを拾い上げるとよく見てみた、拾った紙には知らない言葉や文字が書かれていたが、最後の所に誰かが署名をしているのは読むことが出来た。
 僕は、宰相か先生かの署名だと思い、合議の間の近くの〔デイ・ノルド王国〕側の控室へと向かったのであった。

 コンコンコン

 ノックをしてしばらくすると、ドアが開き、外交官の制服を纏った女性が出て来た。

「はい、何でしょうか……って、エギル殿下。」

 女性は、僕に気付くと突然の事で驚きながらも臣下の礼をとつた。

 するとそれに気づいたリウム先生が、扉の所に来て、僕を確認すると部屋に入るよう促してきた。

「殿下、お入りになってください。」

 僕は、リウム先生の言に従い部屋に入った、すると宰相以下の外務卿などが臣下の礼を取っていた。
これはまずいな思い、宰相たちに立つように言うと、全員立ち上がり今までいた場所に戻っていった。
 僕は、リウム先生と宰相の方へと向き直ると、先程拾った紙を見せた。

「これ、先生の落とし物ですか? もしくは宰相の物ですか?」

 リウム先生は「失礼」と言いながら僕の持っていた紙を取ると、何が書かれているかを見だした。
するといつも穏やかなリウム先生の顔が険しくなり、僕にこう問うてきた。

「殿下、これをどこで拾われました?」

「えっ、合議の間の廊下に落ちていたけど。」

 僕の言葉を聞いたリウム先生は、更に僕にこう言った。

「殿下、すぐに後宮にお帰り下さい。私共は、これから大事な用がありますので。」

「うん、分かった。先生。」

 僕は、そう言うと部屋から出て後宮へと帰ったのであった。




 〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王宮 西宮

 そんな事があった次の日、僕は、お婆様から昼食会と午後のティータイムに呼ばれたのでお婆様たちが暮らしている西宮へと向かっていた。
『歴人の廊下』を進み西宮へと続く扉の前に来ると侍女が一人待機しており、僕は彼女に来訪を告げた。
侍女は、「お待ちしておりました。」と言ってドアを開けると僕を先導しながら入っていった。
僕は、侍女の後について進んで行き、ダイニングルームにたどり着いた。するとすでにお爺様とお婆様が揃っており、さらに大叔父上と大叔母上も席に着き僕を待っていたのである。
 全員が揃い昼食が開始された。大叔父上や大叔母上からの質問に答えながら食事を進めて行った。
食事も終わり、午後のティータイムまでリビングでくつろいでいると、大叔母上が何かを取り出した。

「アヤネ大叔母上、それは何ですか?」

  僕が、そう問うと大叔母上はこう答えた。

「これは、魔導写真機よ。私の趣味なの。」

 と言うと僕の方にレンズを向けてこう言った。

「はい、チーズ。」

 パシャリ

 と言う音が聞こえストロボと呼ばれる光が点滅した。すると魔導写真機から音が聞こえ先ほど撮った写真が現像されて出て来たのであった。
大叔母上は、「はい、どうぞ。」と言って僕に出来た写真を渡してきた。そこには、いつも鏡で見ている顔が写っていた。
すると大叔母上は、もう一枚写真を取り出すと僕に差し出してきた。その写真には、僕と同い年位の女の子が写っており、かわいらしい笑顔を浮かべていた。
大叔母上は、僕にこう聞いてきた。

「どう、可愛い?」

 僕は、素直にこう答えた。

「うん、可愛い子だね。」

 大叔母上は、この答えに満足したのか、こう続けた。

「この写真も私が、撮ったものなのよ。」

 僕は、「ヘェ~、そんなんだ。」と言いながら写真を見ていると大叔父上が、大叔母上の横から顔を出すとこう言って来た。

「エギル、今度紹介するから、ワシ達の滞在日の最後に客間においで。」
「はい、必ず伺います。」

と僕は、快諾したのであった。この時はまだこの写真に写っている女の子が、僕の正妃の一人に成るとは夢にも思っていなかったのである。
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