ノーベル賞受賞屋が乙女ゲームの世界に転生した。

鹿島 ギイチ

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第一部 第二章

第19話 追求と婚姻

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 時は1日前に戻る。

 〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王城 合議の間

 私ことガーベリウム・フォン・ノグランシアは、カマル宰相たちと共に再び合議の間に集まり席に着席した。
すると少し遅れて〔ノース・ザルド王国〕の代表団も現れ席に着席した。
 それを見ていた王城付きの侍従がダベル先王陛下を呼びに行き、先王陛下が着席されることにより再び会議を再開したのであった。

 会議の冒頭私たちは、何故人質を出すように要求したのかを改めて問う為、質問をした。

「外務長殿にお尋ねいたす。人質を要求されたのは、いったいどのような訳があっての事か? 理由をお聞かせ願いたい。」

 宰相が、そう質問をすると外務長は、答えに窮したのか中々発言をしようとせず時間だけが過ぎた。
私は、確信を突く質問をぶつけることにした。

「外務長殿、貴方はこの条件を知らされていなかった。違いますか?」

 それを聞いた瞬間外務長の顔がみるみると青ざめだしたのであった。すると「え~」や「あ~」と言った言葉が出てきたが、その後の言葉が紡がれなかったのである。
私は、先程エギル殿下が拾った紙を取り出すと、〔ノース・ザルド王国〕代表団に提示した。

「この紙に、見覚えがあるはずです。」

 すると代表団のほとんどは、「何だ、この紙。」と言った顔をしていたが、二人だけ違っていた。
それは、〔ノース・ザルド王国〕の外務長と駐〔デイ・ノルド王国〕特命全権大使であった。
 その紙には、こう書かれていた。

『三つの条件で交渉を進めよ。その条件だけで1ヶ月は、交渉を引き延ばせられる、こちらの準備が整い次第、引き上げの指令を送る。無事の帰還を。 ディニールより。』

 すると観念したような顔をした外務長が、こう発言してきた。

「はい、大賢者殿の申す通りでございます。この紙は、私と大使がディニール宰相より頂いた指令書です。そして、第4の条件についても私たちが把握したのは、この会議の始まる前でした。」

 私は、更に第4の条件について聞いた。

「この第4の条件を貴国の宰相閣下は、御存じでしょうか?」

 すると外務長は、こう答えた。

「いえ、存じ上げていないと推察いたします。」

「では、誰が書き込んだのですか?」

 カマル宰相が、更に聞いてきた。すると外務長は、「不敬であると思いますが。」といってこう答えた。

「我が国の王であらせられる、ピスグリス陛下と一部の貴族たちによって行われた物と推察いたします。」

 それを聞いた私たちは、彼ら代表団に対してこう言い切った。

「やはり貴国の王は、信用に値しません。よってこの交渉を、打ち切らさせて頂きます。また、貴君らの身柄を一時的に我が国の管轄下とさせていただきます。みだり大使館外に出られることが無い様、お願いいたします。」

 そう言い終わると、ダベル先王が、口を開いた。

「こんな事になり非常に残念だ。これにて条約締結会議を終了する。」

 そう終了を宣誓し、合議の間を退出されていったのであった。私たちは、合議の間の外で待機させておいた近衛の部隊を呼ぶと代表団たちを拘束し、彼らの大使館へと護送したのであった。





 〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕王城 謁見の間

 夜の帳が下り、人々が家路を急いでいる時間帯、王城の謁見の間は、大勢の貴族もしくは代理の家臣たちで埋め尽くされていた。
皆が、口々に話しているのは、今日王城の合議の間で起こった出来事であった。
そんな喧騒の中、槍の石突を廊下に打ち付ける音が、響いた。すると出席者たちは、喋るのをやめ各々の所定の位置に着き、国王の到着を待った。
そしてすぐに国王と王国首脳部が到着し、報告と会議が開催されたのであった。

 宰相が、始まりの口火を切った。

「皆も存じている通り、本日我が国と〔ノース・ザルド王国〕との間で条約締結の交渉は、決裂と相成った。交渉の決裂は、戦争の前段階に至ったことと言う事だ。この事を肝に銘じて頂きたい。」

 すると出席者の一人が意見を述べて来た。その人物は、〔デイ・ノルド王国〕に6人いる公爵の一人で、公都〔キルマ〕を預かる、ドルベーズ・フォン・キタニアン。歳は、56歳である。

「陛下、意見を具申させていただきます。」

「うむ、キタニアン公爵、発言を許す、申せ。」

 アランが、許可をするとキタニアン公爵は、こう言いだした。

「宰相閣下の申す通り、交渉の決裂は、戦争への前段階でございますが、直ぐに戦争に成るとは限りません。その様に危機を煽るのはいささかも賢明であるとは、申せません。かの国とて我らとぶつかれば多大な被害を被ることは分かっているはず、ここは事態の推移を見守るのが肝心と心得ますが、陛下の考えはいかに?」

 するとその意見に対して、反論をする者が出た。軍務卿であった。アランは、軍務卿に発言を許可しその意見に耳を傾けた。

「キタニアン公爵が申されたことは、間違っておりません。しかしだからと言って警戒をしないという訳にはまいりませ。陛下、〔ノース・ザルド王国〕との国境周辺に戦時の御勅令を号令いただければ、国境守備隊を2,000人から5,000人に増派できます。これによりかの国の動きにも対処可能です。」

 それを聞いていたアランは、宰相の方を見て頷くとこう言った。

「あい分かった。国境に戦時体制を下令する。ただしこちらからは手を出すな、まだ戦争に成ると決まった訳ではない。軍務卿、公爵もこれでよいか?」

「「はっ。」」

 二人は、そう返事をするとこの会議は終わりを告げたのであった。するとキタニアン公爵が、アラン対してこう言って来たのであった。

「陛下、この場ではございますが、先年より申し込んでおりました、陛下と我が娘との婚姻につきまして、結論をいただきたいと思いますが、どうでしょうか?」

 するとアランは、渋い顔をしたが、こう答えた。

「その申し出を受けよう。これはすでに枢密会議での決定である。」

 それを聞いた、キタニアン公爵は、満面の笑みを浮かべるとこう言った。

「陛下と枢密会議の御英断に感謝申し上げます。そして我らの王国に幸があらんことを。」

 そう言って、公爵は頭を下げると列に戻っていったのである。それを確認した儀典長が「陛下が退席される」といいアランが謁見の間から出て行き、謁見は、終了したのであった。
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