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13 目的の目標を確認します。
しおりを挟むクアッドPTは色々あってメンバーを増やし、クリージ王国はブライスゲール帝国を手中に収めたようです。
今の所グランドルートは外していないようですし、覇王ルートもレイブギン連邦王国相手では現実的ではないでしょう。
そしてルーベルが動き出しました。
古代文明の遺跡のある島ごと浮遊させて世界に向けて魔法放送します。
曰く、自分は古代文明時代の王で縦長蟹種甲魔獣ガイブは元々自らの支配下であり、取り戻したと。
これを以て降伏勧告として、隷属下に置かれる事に恭順しなければ幾万のガイブが侵攻すると。
「静観ですね」
大まかな筋は知っている、セレナ・イリーシャ・テレス陛下が指揮所に集まりました。
ゼーナさんの言葉に一同が頷きます。
「そうですが、直接あの不愉快で傲慢な声を聞いてしまうとFB‐01で直接浮遊島ごと叩き切ってやりたくなります」
「短気を起こすな。自分で決めた方針でしょうが」
「最良は勇者クアッドによるガイブの制御なのでしょう?」
「そんな事をしたらガースギースの融合が緩むのでしょう?」
「…あれ?何だかんだで魔導文明の惑星的危機は乗り越えているのです。
融合したせいでの戦乱なら分離しても問題ないような…」
「大有りです!問題だらけです!折角皆が苦労してここまで来たレイブギンに50年前の大混乱をまた引き起こすなんて馬鹿な事言わないで!」
…陛下としては看過できないですよね。
「ごめんなさい。思い付いた事が良く考えず口から出てしまいました」
「…いいえ。出過ぎた口をききました。申し訳ありません。
結局の所、フルブレイド次第なのです。
他力本願だけでここまで来たつもりはありませんが、フルブレイド次第でレイブギンとて簡単にその存在が揺らぎます。
ゼーナさんもいますし、貴女に戯言の一つも言うなとは申しません」
「陛下、それでは女王と宰相を半分会長と私に押し付けているようなものですよ」
「成りたくてなった地位でもなく、今以て代われるものなら代わって欲しいのを我慢して座っているのです。
できる者に仕事を配分するのも私の仕事です。
史上最高の領地を持つ国の女王より、力有る者に相応の覚悟を促す事もです」
「陛下、会長は帰る事を前提に活動しているのです」
「ここまでの力を得てなお帰る価値が故郷にあると?」
わたしが帰る『目的』についてはレイブギンに責任のある陛下には話していません。
「ちょっとした用があるのです。
終わらせて戻って来れるものなら戻って来ても良いくらい『生き心地が良い』ですよ。
陛下には邪魔かも知れませんけれども」
「女王としてはフルブレイドは最大の後ろ盾よ?貴女達と敵対しないでいる事がね。
他の馬鹿どもではすぐに破局していたと自負しているわ。
個人的な事を言えば今在るここは凄く大切なのよ?貴女が思う以上に」
「まだ推測だらけの上に推測を重ねている状態ですから帰れと言われても帰れませんし、ガースギースの一部でも背負う覚悟はできませんが、みんなに相談して自重する分別くらいは弁えます」
「さて、問題は勇者殿がこちらの思惑通りに行かなかった場合です。
レイブギンはまだいい方ですね、セレナとイリーシャがいます。
次はLv100を超して来るでしょう。
前回レベルでも本当に千や万の数を揃えられると他国には無理でしょう。
また多くの他国はガイブの脅威を知りません。
少数のハイヒューマンで対処するのでしょうが、厳しいと言わざる得ません。
フルブレイドにしてもそこまでの数はありませんから、多方向に向かわれたら負けないにしても勝つ目はありません」
「最悪、オーバーハイ組で遺跡を壊さないようルーベルを殺るさ」
「それしかないですね」
正攻法では立ち向かえないと言うゼーナさんにフェブリーとユーシアはわざとらしく気楽に言います。
「結局力押しですね。わたし達らしいと言えばわたし達らしいです。
わたし達は戦略戦術開発ではなく、ヒューマンでも力押しができる装備の開発検証が目的の組織ですし」
「そうですね。私達らしく力押しの為の戦術でいきましょう」
やはり拙速は巧遅に勝るのでしょうか。
意外と律儀に目標地点まで浮遊島を移動してガイブ達を降下させようとします。
「なぜ空間接続を使用しないのでしょうか?」
「何故もなにも千や万の数を空間接続で送れるのはohHの皆さんくらいですよ?」
アムが当然みたいに答えます。
「…それもそうですね」
…一応ラストダンジョンでラスボスなのですし、そういう現実は都合よく無視されるかと思っていました。
ゲームでもこの現実でも戦闘稼働できる飛行機は存在しなかったのです。
操作できる浮遊島だけでも十分ズルいのです。
おかげでクアッドPTもここに乗込む為にイベント一つか二つの苦労をしたはずです。
そのクアッドPTが遺跡に突入した今、遠慮は要りません。
一度に20体も出られないようで、出てくる端からガイブや魔物を甲殻戦機10機でモグラ叩きです。
長丁場になるかもしれないので半日に分けて2時間交代ですが余裕はあります。
まだ自己回復魔力で戦闘稼働できない人もいるのでこのシフトです。
ですが半日もモグラ叩きをすればレベルが上がって自己回復量も上がります。
丸1日で自己回復魔力で戦闘稼働できない人はいなくなり、予備操縦兵の後輩に譲る者まで出てきました。
飛ぶ魔物や甲魔獣も出てきましたが4型5型の飛翔訓練相手でしかありません。
彼等はもっと過酷な甲魔獣の森で訓練しているのです。
わたしの目標とは少し離れますがデータ蓄積も重要です。
…カニって甲羅の中で水を循環させてエラ呼吸しているのに、シーオー2フィールド効きました。カニとは別種なのでしょうか?Co2フィールドの効果が水にまで浸透するのでしょうか?甲魔獣の大半が外骨格なのに脊椎らしいものがあったり、内骨格を持っていたりデッドウエイトではないのでしょうか?
今日も出番なく、そんな事を考えて過ごします。
2日程で浮遊島が降下を始めます。
「何かあったのでしょうか?」
「いえ、多分クアッド達がやったのでしょう」
何故かこの手の巨大浮遊物はボスが倒れると落ちます。
幸い今回は慌てなくても緩やかな降下です。
「総員撤収して下さい」
「エクシード機長、わたしはちょっと確認してきます」
「会長?少々お待ち下さい。私も同行します」
クアッド達をやり過ごして彼等が開いた転移陣から一気にラスボス部屋前に。
広く高いフロアです。
そして入り口前への転移陣のすぐ横にありました。
転移陣より大きく複雑な魔法陣。
「…ありました。
多分これです」
「…そのまま行ってしまうのかと思いましたよ」
「召喚者の特典でしょうか、直感が正解と言っていますが調べてから…準備ができてからにします」
翌日。
更に小型化低魔力化した6型を最終モデルとしていくつか量産ラインを構築しました.。
零型はもう大柄な男性とかは乗れません。物理空間的に。
といいますか、これ以上の先行試作はわたし的に必要がないのですが。
わたしが居なくなっても皆は生きていくのです。
皆が生きていく為に必要な事なのでしょう。
「フヅキ、いるか?」
指揮所に飛び込んで来たのセレナ。
続いてテレス陛下にイリーシャです。
「帰る手段を見つけたそうですね」
「まだ調査中ですが送還・召喚の魔法陣のようです。
帰る目処は立ったかも、という段階かも知れないかもしれません」
「随分落ち着いていますね」
「まだ調査中ですし、準備も終わっていません」
「準備とはフルブレイドですか?」
「その一部です」
「6型の量産を始めたと聞きました。
魔力素質が低い者でも戦闘稼働できる時間が伸びたと」
「そうですね。
量産すればヒューマンの警備兵でも甲魔獣くらいは撃退できると思います。
慣れたらハイヒューマンとだって渡り合えます。
わたしの私財は持てるだけ持って帰りますが、技術は今朝レイブギンに供給しましたから、すぐにでも生産が始まるでしょう」
「知っています。その報告を受けて私達はここに来ました」
「ウチの量産ラインで2日目から日産20機、検品チェックで+1日を見込んでいます」
「そういう事ではなくて!」
「量産ラインは明日には3倍を確保して可能な限り増やします。
一時的ですが雇用需要が増えると思います、対策を御願いします。
目標は最低五百機…できれば千機以上、あれば有るだけ欲しいのです。
なので後2・3週間くらい御世話になります」
「…急に協力する気が失せました。
先に帰ります[空間接続]」
テレス陛下は肩を落として帰って行きます。
「…レイブギンにとって良い事尽くしのはずなのですが、何かマズイ事を言いましたでしょうか、わたし?」
「レイブギンにとってそうでも陛下とっては違うでしょう。
私だって帰る手段を見つけたと聞いて、前触れもなくフラっと帰るかと肝を冷やした」
「さすがに挨拶くらいします」
セレナはわたしをなんだと思っているのでしょう?
「それでも友人知人が会えなくなるのは寂しくて怖い事でしょう?
私も肝を冷やしました。
技術を無償提供など身辺整理みたいな事を始めたのですから。
陛下も同じでしょう。猶予があると知ってバツが悪くなったので逃げたのですよ」
「会長はそういう、突然何をするか分からない雰囲気がありますから」
その国はガースギース西側・南の果て、南半球側で寒い南緯度の小国です。
王侯貴族の地位保証等、ハードルの高い条件付き降伏交渉の順番待ちの国です。
彼等王侯貴族は長引けば延命できますし、別に交渉が決裂しても降伏交渉をしたという事実があれば無条件降伏よりマシです。
戦争してまで手に入れる価値の薄い寒冷地の小国です。
仮に戦争になって負けても一方的に宣戦布告されたとなれば同情で亡命先の選択肢が増えるのです。
そういう国です。
…国でした。
「何故わたしに情報が届かないようにブロックされていたのでしょう?」
「…もうじき、ガースギースを去る会長を気遣ったのだと思いますよ?」
「他の事でしたらその気遣いを有難く受けるかもしれませんが、アレは見過ごせません」
ゼーナさんとレイブギンの城に向かい、珍しく倉庫のような場所で例によってセレナとイリーシャを伴った陛下と拝謁します。
「セレナ、イリーシャ、何故わたしに黙っていたのですか?」
「私が黙っているように命じていたからです」
「でも2人には説明したはずです」
「…言い訳になるが、最初は知らなかったし今でも確証はないのです」
「ならなおさら経験者の意見には耳を傾けるべきでしょう?」
「先にこれを見て下さい」
言ってイリーシャは大きな遮光カーテンを開きます。
そこには一見大きな破損は見当たりませんが擱座した5m級の甲殻戦機。
「レイブギンの大型甲殻戦機ですか?
やっぱり大型化にシフトしましたか。拝見します」
わたしとゼーナさんで擱座した甲殻戦機を検分します。
「ダンパーシリンダーが下半身を中心に軒並み駄目になっていますね」
甲殻戦機の関節は甲魔獣のように筋肉でもなければ、一般的なロボットのように鋼材を重ねて軸回転スライドさせるわけでもありません。
甲殻素材ではありますがダンパーシリンダーを軸にマッスルシリンダーで駆動します。
そういう意味で関節部に強固なフレームはありません。
「コクピットの中は一見して特に異常はないです。
という事は重量的にかなり格上、30m級と力勝負をしましたか…」
「操縦兵の証言と一致します。あ、強固な甲殻と設計のおかげで操縦兵は無事ですよ」
「この通り、アレには力不足だった」
「セレナとイリーシャには説明したはずですが?」
「運用戦術とそもそもの設計思想がアレ向きではありませんね」
わたしとゼーナさんの辛辣な物言いに2人は苦い表情です。
「…アレを知っているのですか?一体なんなのですか?」
「こうなってしまってはテレス陛下に黙っている理由もありません。
アレ、わたしの故郷では単にバグ…虫と呼ばれていました。
大きく分けて30m級・4m級・1m級の三種類、球形の甲虫型で背甲を甲虫のように開いて犬より遅いですが飛行します。
地上では大きさに見合った四足で、やはり最も早い1m級でも犬より遅いです。
地球…故郷では十五年くらい前に確認されて、わたしがガースギースに来る半年前から大規模な捕食・増殖を始めました。
大型種30m級は屋外なので高威力兵器で圧倒できます。
1m級以下も小型である分、甲殻も薄いので個人携帯武装で撃退できています。
問題なのは4m級で、個人武装では甲殻に阻まれ、屋内に入り込むと高威力兵器で人を巻き込んで建物ごと破壊するしかないのです。
わたしの故郷の島国にはまだそれ程被害はありませんが時間の問題でしょうし、島国だけが生き残っても未来は暗いです。
そしてガースギースに呼ばれた時、誰とも分からない声に2・30年はかけても大丈夫、と言われました。
丸々信じるのは危険ですが、地球とは時間の流れの速さが違うのでしょう、と推測するしかありませんでした。
そしてわたしが目を付けた、戻れた時の希望が甲魔獣…甲殻戦機なのです。
4m級が入れる所で自由に動いて戦える4m以下の力を求めたのです」
「…確かに報告では小型種は高レベルのヒューマンの魔法でも対処できたと聞いていますし、中型大型種もセレナ・イリーシャはもちろんハイヒューマンなら対処できるけれど数に押されたとの事です」
「対中型種が会長の目的であり甲殻戦機は主に中型種を仕留める事に特化して開発してきました。
そのままサイズアップしても自重量の負担は身長比とは比べ物にならない程大きいのですよ。
その上30m級と力勝負しては耐え切れるはずもありません。
制作者は当然分かるはずですし、セレナとイリーシャは聞いていたはずですが?」
「軍幹部の指示に担当者が渋っているのは見ていましたが、私自身理屈が分からないので単に大きく出来るなら強くなるのでしょうと思ってスルーしてしまいました」
「ええと、解かり易いように雑な例で説明します」
わたしは隅にいくつか積んであるレンガっぽいブロックを1つ立てて置きます。
「これを人に例えて倍の体格にするとどうなりますか?」
セレナがブロックを一つ上に置いて2段にします。
「…いえ、そういう事ですか。身長が倍なら幅も厚みも…」
イリーシャは縦横斜めに一つずつ並べて4つで1段、更に全部を2段にします。
「この例では正解です。
1段目と2段目の間に粘土を挿んだ状態を人に例えて倍の体格にすると粘土はどうなりますか?」
「…潰れる。粘土が関節という事か」
「これでも雑な例です。下半身強度とか強度補強の為の重量増加とかバランス補強とか、色々あって無暗な大型化はそれ以上の重量増加に繋がります。
魔法で軽減するにしても魔力負担が増えますし、魔導器を組み込むにしても5m級甲殻戦機を魔導器で負担するとなりますと、生産工程が増えますので日産数が減って魔法付与の余地も減って費用の負担が大きくなります」
「…理解しました。
しかし現状は把握でいているだけでもバグは千を超えて、大型種もかなり居るそうですし、更に多い中型種に混じっていては実質ハイヒューマン…ohHの二人、私を含めても3人頼みになるのです」
「今ならギルドで募集すれば装備持込みの個人討伐者がそれなりにいると思いますよ?
ガースギース自体の危機ですし」
「良いのですか?本来、貴女は放置できる立場です」
「友人知人に力を貸すくらいは恩を感じていますし、なにより。
アレはわたしの敵です」
例によってエイプリルが先行出撃しようとします。
「エイプリル、シーオー2系は効かないか効きが悪いかもしれません。
呼吸しているかすら怪しいらしいですよ」
なにしろ基本は陸生で空まで飛ぶくせに水中で何時間も活動するのです。
解剖しても生物としては異質過ぎて推測しかできなかったそうです。
生体ではあるけれど構造の大半はむしろ機械に近いのでは?とまでいわれています。
パーツが生体なら呼吸は必要と思うのですが、出鱈目な存在です。
「了解です
検証に軽く試したら別の魔法を使ってみますよ」
エイプリル、零型が飛翔先行します。
…今回の零型はFB‐01より速いのですか…。
いいのですが、街道に差し掛かる先頭に軽くシーオー2系を試したようです。
見えない魔法なので分かりにくいですが。
「甲殻戦機隊、ツ-マンセルで3セル降下、先頭を抑えて下さい」
甲殻戦機6機が降下して行きます。
零型の遠隔発動体が射出されました。
街道の向こうには荒野と廃墟となった町に大量のバグが街道待ちの渋滞しているだけですから派手に炎系でしょうか?
「[オキシゲンフィールド] [フレアフィールド]」
爆音が轟きます。
大爆発です。
本来のフレアフィールドは大地を業火で焼き尽くす魔法で、爆発する魔法ではありません。
遠隔発動体の結界で効果範囲を制限していなかったら上空500mのFB‐02も巻き込まれていたかもしれません。
いえ、結界で制限しているからこそ内部が荒れ狂うのかもしれません。
5分くらいで開けた結界内の視界…結界内の地面は切り取ったように黒焦げです。
700体はいた場所です。
『やり過ぎました…?』
「そうですね。結界制限しているとはいえ、試射検証してから使用して下さい」
『今ので試射検証した事にして続けて良いですか?』
「…良いでしょう、許可します。
バグはまだまだいます。密集している所は任せます。
残存は6型隊で処理しますので巻き込まないよう注意して下さい」
…今日もわたしの仕事はありません。
アレはわたしの敵です、とかカッコつけたのに…。
とはいえ残存を掃討するのを見る限り、大型相手でも6型の機体スペックに問題はないようですし、改修できるこちらで安全にバグ相手の実戦検証できたと思えば悪くありません。
遺跡の魔法陣の調査も、往来できるはずの召喚送還魔法陣と結論して終りました。
6型も2000機を超えました。
前に釘を刺された挨拶回りも済ませて帰還予定日です。
テレス陛下まで含めたohH、ohEを始め、フルブレイドの操縦兵に各スタッフが総出で遺跡の魔法陣まで見送りに来てくれました。
「ではみなさん、ありがとうございました。
戻って来られるならまた来ます。
ちょっと先の事になるかもしれませんけれども。
では、名残は尽きないと思いますのでサラっと帰ります」
わたしは背を向けて魔法陣に踏み入ります。
ですがぞろぞろと付いてくる気配です。
「えっと、みなさん?」
「みなさん、巻き込まれる可能性が高いので離れて下さい」
「ゼーナさん?ゼーナさんも…」
「私は会長の目標に最後まで御供しますよ?
そういう約束ですし、恩返しでもありますが、私の興味でもありますので」
機長だけはズルいとかそんな声が上がり、開発のほとんどと操縦兵・スタッフの1/3が付いて来ようとします。
加えてテレス陛下とohH、ohE組まで寄って来ます。
「えっと、陛下?」
「私、陛下を辞めようと思いまして」
「…なんの冗談ですか?」
「フルブレイドの中核がいなくなり、イリーシャとセレナまでいなくなってはレイブギンの女王なんてやってられません。逃亡します」
「イリーシャ?セレナ?」
「私達はその、なんだ…どう言えばいいか…」
「ゼーナさんと同じですわ。
恩返しでもあり、私達の興味でもあります」
「フヅキさん、私達ohH、ohE組も大体同じと思いますよ?
フヅキさんの故郷をバグになんか渡したくないという想いもあります」
「戻って来られる保証はありません。
戻って来られても多分10倍くらい以上の時間の流れの差があります。
わたしは焦らずにやれましたが、みなさんは逆です。
時代に取り残される危険があります。
ohH、ohE組も向こうで通じる保証もありません」
…師匠の法則が通じるのでしたら多分大丈夫とは思いますけれど。
「その時は6型でやりましょう。
10倍なら3日で片付けたら一月くらいでしょう。
フヅキは帰る保証どころか何のあてもなしに1人で放り出されてここまできたんだ、戻って来れなくても、これだけ仲間がいたらフヅキに付いて行った方がむしろ居心地はいいでしょう」
馬鹿な人達です…とは思わないでおきましょうか。
「会長、帰るのでしょう?さっさと行きましょう」
「分かりました。
どうなっても恨ま…恨んでも良いですが痛いのとか苦しいのはやめて下さい」
皆の苦笑と共に魔法陣が起動しました。
応援ありがとうございます!
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