ミラクルパーティー

クロヒロ

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ミラクルな仲間達

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 遠い遠い昔、ある偉大な冒険者が言った言葉があった。

 
 ひとつ・生を受けたからには、一度は冒険者を目指すべし!

 ひとつ・冒険者は、他の人々から尊敬される存在となることを人生の目標とせよ!

 そして最後

 ひとつ・冒険者になったなら、その頂点をめざすべし!


 この世界で最初の冒険者と言われる「鋼鉄はがねのガーランド」の言葉だ。そして、この世界で冒険者を目指すものなら、誰だって最初に習う言葉でもある。

 そしてこの俺「アルベルト・リック」も、このガーランドの言葉を常に胸に携えて、冒険者としての誇りと勇気を持って日々を送っている。

 常に冷静沈着、そして的確な判断と力強いリーダーシップを持って、力強くこのパーティーを率いている。

 ・・・・・・・・・・。

 うんあれだ。そんな妄想をしていても、目の前で起きている出来事が強引に俺を現実に引き戻しにかかってくるんだよ、これが。

 わかってる。ただ俺はほんの少しでもいいから、目の前で繰り広げられている出来事から現実逃避したかっただけなんだ。人間さ、つらい時は逃げたくなる時があるし逃げても良いと思うんだよね。

 それにしても、こいつらいつまで飽きずに喧嘩してるんだ。もうここまで行くと、お互い好き同士だろ?

 「てんめえ、今なんつった!?」

 そう怒鳴り声を上げた、この山道を歩くには軽装過ぎるように見える格好のこの男は、このパーティーのレンジャーである「ビート・エルフォード」だ。主に、罠や仕掛けなどの解除が任務となる。

 とは言っても、駆け出し冒険者の俺達に、そんな危険な罠が仕組まれているダンジョンに行ける実力などあるはずも無く、現状、弓を使った遠距離のアタッカーというのが主な役割だ。

 「聞こえなかったのなら何度でも申しましょう!はっきり言って、レンジャーを名乗っている割には脳筋が過ぎるのですよ!少しは頭をつかってはどうですか?」

 そして、このちょっと甲高い声で、相手の神経を逆なでするようなセリフを連発しているのが、このパーティーの回復士「クリエン・クリスト」だ。

 学校での成績はトップクラス、もちろんあらゆる薬草や毒草にも精通している。ただし、さっきも言った通り、俺達は駆け出しの冒険者だ。なので、そういった知識や回復魔法が大活躍する場面には、今のところ遭遇していない。

 「はああ?脳筋ってのは、切ることが出来ないゴムルンの木を「切って使うことを提案します!」と堂々と言った、お前のことですかーーーーー?」

 ビートはプギャー!とクリストを指差しながら腹を抱えて盛大に笑いこける。あー、そんな事言ったら絶対クリエンがキレちゃうだろうが・・・。

 「な、な、な、な、な、な、なんですとおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 ほらみろ!ブチギレじゃねーか!うわー、こめかみに血管浮き出てねーかあれ。つーか、なんでこいつは簡単にきれるんだ。カルシウム足りないのか?あとビートはもうちょっと言い方を考えてくれよ・・・。

 ふつーに考えたら、知識が豊富なクリエンと、発想とひらめきには定評があるビート「この二人が組んだら最強じゃん!」なーんてって思っていた時期が僕にもありました。

 だってさ?クリエンの奴、知識は本当に豊富なんだよ。そしてビートは頭の回転が速い!だから二人が協力すれ・・・っていう俺の考えは、決して悪くないはずなんだ。

 なのにこいつら顔を合わせりゃ喧嘩ばかりしやがって・・・。


 「とりあえず二人共落ち着けよ!」

 「黙ってて下さい!【くれ!】」

 とりあえず喧嘩を止めようと二人の間に割って入ったら両方から怒鳴られた!お前らいい加減にしないと泣くことになるぞ!

 主に俺がな! 

 元々ビートとは幼なじみで、子供のころからつるんでいた。クリエンは学校時代に知り合ったんだ。勉強とかよく教えてもらってたなー。しかしこいつら大人になっても喧嘩してるとは、さすがの俺も夢にも思わなかったぜ・・・。

  そんなあほなやり取りをぼんやり眺めながら、エリーの方をちらっと見てみる。彼女は全くこの現状に全く興味が無いようだった。

 「あー、エリーさんエリーさん、ちょっとはこう、この状況を打開しようという素振りくらいは見せてくれませんかね?」

 エリーはちょっとだけ顔を俺の方に向けた後、こう言った。

 「無駄無駄」

 そう言いながら、エリーはひらひらと手を振る。

 エリー・ブラットはこのパーティーの紅一点だ。ブロンドヘアーのショートカットがとても良く似合う、青い瞳がとても綺麗なかなり美形の女剣士だ。いつも一人で近場の狩場で小物のモンスターを狩っていた所を、俺がスカウトした。

 だが、基本的にあまり他人に関心がなく人のやることに興味を示さない・・・とまで言わないが、首を突っ込みたがる性格で無いのは確かだな。つーか、よく俺達のパーティーに入ってくれたものだと、今でも不思議に思っている。

 「好きなだけやらせとけば?そのうちきっと飽きるから」

 そう言うと、彼女は再び剣の手入れを始める。

 彼女が手に持つ剣は「刀」と言って、とても珍しい剣なのだとか。しかしその分扱いが非常に難しいらしく、彼女は戦闘において刀を使わずに通常の剣を使っていた。

 気付けば太陽が俺達の真上に差し掛かっていた。そして俺は、冒頭のガーランドの言葉、「冒険者は、他の人々から尊敬される存在となることを日々の目標とせよ!」を思い出しつつ、冒険者の誇りとか尊厳てなんだっけ?とか考えながら、諦めて目の前の喧嘩を眺めている所だ。

 しかしそろそろこの喧嘩も終了してもらわなければ困る。何故なら俺達はクエストの最中であり、喧嘩なんかしてる場合ではないのだ。

「なあ、そろそろお前たちもいい加減に・・・」

「うるせえ外野は引っ込んでろ!」

「そうです!これは我々の問題です!」

 なんでお前らこんな時だけ息が合ってんだよ・・・。

「これはもう町に就くのは無理だね」

 気が付くと、いつの間にか俺の隣で喧嘩を眺めているエリーが、西の方を見ながらぼそっとそうつぶやいた。

「ああ、確かに町に着く前に日が暮れそうだ。今夜は野宿決定だな」

 俺のその声が聞こえたのか、ビートとクリエンも喧嘩を止めて、西の空で真っ赤になっている夕日を眺めていた。

「はい、じゃあ野営の準備するわよ」

 そしてエリーの声で、今までの喧嘩が無かったかのように準備を始める二人。ここまでが俺達のパーティーの一日の締めの行事みたいなものだ。

 好みも性格も考え方も全く正反対の俺達が、こうやって毎日をどうにかこうにか過ごせていられるのは、もはや奇跡に近い気がするぜ。

 さてと、今日はゆっくり休んで、明日もこの、色々とミラクルなパーティー仲間とクエストに出かけるとするかね。
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