2 / 60
第1話 異変
しおりを挟む
「行ってきまーす」
妙土は母からお昼のお弁当を受けとると、少し茶色がかった長い髪をなびかせて駅へ向かった。
天宮妙土が通う都内の私立高校は自宅の最寄り駅から電車で20分のところにある。
いつもの電車に乗り込むと、文庫本をカバンから取り出した。
妙土は異国の歴史や神話を題材にした物語が好きなのである。
満員列車のため、文庫本を開けるスペースを作れるドア際をいつも確保する。
妙土の通学時間は専ら読書の時間に充てられている。
異変は突然、車内で起こった。
突然の急ブレーキで電車が大きく揺れる。
乗客たちが一斉にバランスを崩し、つり革に慌ててつかまり踏ん張る者、人やドアなどに寄りかかる者と車内は一時、混乱した。
電車が完全に止まったところで、車内アナウンスが流れる。
「申し訳ありません。線路上に人が立っているので、列車を止めます。確認いたしますので、少々お待ちください。」
「人が線路の上に立っている!?」
車内は騒然とする。
どこの馬鹿だ、この朝の忙しい時間にそんなことをするのは。
確認は何分かかるのだろうか。
いつ出発するのか見当もつかないな。
妙土は窓から先頭車両の方をのぞき込んだ。何か見えるかもしれない。
と、その時。
車両がまた大きくガクンと揺れ、そのまま真っ直ぐ上昇を始めた。
車内に乗客の悲鳴が走る。
とっさにドア付近にある握り棒につかまりながら、妙土は恐怖に凍りつく。
あり得ない。なぜ電車が上昇するんだ。
そして、どこまで昇り続けるんだ。
宇宙まで?
こんな車体じゃ、大気圏を突破できないぞ。
恐怖しながらも冷静に上昇し続けた時のことを考えていたら車体の上昇が突如、止まった。
ホッとする間もなく、今度は車体が急降下を始める。
遊園地のフリーホールのように急激に体にかかるG。
車内は阿鼻叫喚である。
あれだけ上昇して上から地面に叩きつけられたら、こりゃ死ぬな。
何がどうなっているのかわからない恐怖の中、必死に握り棒にしがみつきながら、妙土は来るべき衝撃に備え、足腰に力を入れた。
妙土は母からお昼のお弁当を受けとると、少し茶色がかった長い髪をなびかせて駅へ向かった。
天宮妙土が通う都内の私立高校は自宅の最寄り駅から電車で20分のところにある。
いつもの電車に乗り込むと、文庫本をカバンから取り出した。
妙土は異国の歴史や神話を題材にした物語が好きなのである。
満員列車のため、文庫本を開けるスペースを作れるドア際をいつも確保する。
妙土の通学時間は専ら読書の時間に充てられている。
異変は突然、車内で起こった。
突然の急ブレーキで電車が大きく揺れる。
乗客たちが一斉にバランスを崩し、つり革に慌ててつかまり踏ん張る者、人やドアなどに寄りかかる者と車内は一時、混乱した。
電車が完全に止まったところで、車内アナウンスが流れる。
「申し訳ありません。線路上に人が立っているので、列車を止めます。確認いたしますので、少々お待ちください。」
「人が線路の上に立っている!?」
車内は騒然とする。
どこの馬鹿だ、この朝の忙しい時間にそんなことをするのは。
確認は何分かかるのだろうか。
いつ出発するのか見当もつかないな。
妙土は窓から先頭車両の方をのぞき込んだ。何か見えるかもしれない。
と、その時。
車両がまた大きくガクンと揺れ、そのまま真っ直ぐ上昇を始めた。
車内に乗客の悲鳴が走る。
とっさにドア付近にある握り棒につかまりながら、妙土は恐怖に凍りつく。
あり得ない。なぜ電車が上昇するんだ。
そして、どこまで昇り続けるんだ。
宇宙まで?
こんな車体じゃ、大気圏を突破できないぞ。
恐怖しながらも冷静に上昇し続けた時のことを考えていたら車体の上昇が突如、止まった。
ホッとする間もなく、今度は車体が急降下を始める。
遊園地のフリーホールのように急激に体にかかるG。
車内は阿鼻叫喚である。
あれだけ上昇して上から地面に叩きつけられたら、こりゃ死ぬな。
何がどうなっているのかわからない恐怖の中、必死に握り棒にしがみつきながら、妙土は来るべき衝撃に備え、足腰に力を入れた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる