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第36話 追憶
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ロシアのサンクトペテルブルク。
ネヴァ川の流れを見やりながら、リーナのアパートメントでブランドンは黄昏ていた。
リーザの双子の子であるカイルやリーナ、弟のディランと4人で集まり、今後の対魔族戦について話し合っていた。
話し合いの結果、女王リーザから出撃要請が来るまで静観するという結論に至り、解散となった。
リーナの提案でカイルと弟のディランは、引きずりだされるような形で、サンクトペテルブルク観光に向かった。
ブランドンは一人残った。
氷点下の中を観光に出かける気がしれなかった。
それに、とてもじゃないが、リーザの子供たちと呑気に観光する気分ではなかった。
太陽の光が反射してネヴァ川の水面がキラキラ光る。
思い出されるのは、はるか昔。リーザとリーデイルが王宮に向かう姿を見送ったシーンだ。
王女リーザを守ることが生涯をかけた誓いだったのに。
なぜ、あの時、リーザの側を離れたのだろう。
母ネリーニからリーデイルの不審な言動について聞いていたではないか。
ブランドンはこのことを永遠に後悔することになる。
リーザとリーデイルが王宮に向かった後、ブランドンはリーザの命令通り、離宮にいる者たちを連れて北の大地へ向かった。
北の大地で先に王都や他の居住区から逃げてきたリーネの民と合流した。
この時すでにリーネ族は200人に満たない人数となっていた。
あとは皆、王都リーネリアで魔族の戦闘集団アルカナに殺されたり、捕虜になったりと、暗い運命を辿っていた。
ブランドンとディランの父も王都を守るため奮戦して戦死している。
リーザとリーデイルの帰還を待ったが、何日経っても2人は戻らなかった。
この時ようやくリーデイルが怪しいということになり、日のあるうちに王都やリーネ族の居住区を探し回ったが、2人の痕跡を見つけることはできなかった。
地上に痕跡を見つけられない。
これはまず間違いなく魔界に連れ去られたことを意味する。
魔族に連れ去られたリーネ族の女は悲惨だ。
しかも、王族の女。
めちゃめちゃに魔族になぶられ、惨殺されるだろう。
2週間ぐらいでリーザの探索は打ち切られ、新王として、リーザの従姉の子、つまり亡きリーフェイス王の孫でリージェント王子の甥が即位した。
即位したといっても、王権の象徴たる3種の神器は1つもない。
バルムンクの剣や宇宙龍の環がない状態で集落を作るのはかなり厳しかった。
魔族の大群に襲われたら、吹き飛ぶような小さな集落である。
リーネ族と魔族双方の血を引く混血児なら、白夜をものともせず攻撃してくるだろう。
攻撃に備えて昼夜を問わず、警戒体制をとった。
ブランドンのリーデイルに対しての憎しみは深い。
リーザを魔界へ連れ去ったのは、まず間違いなくあの男だろう。
いつか必ずこの手で殺してやる。
この命に換えても。
ネヴァ川の流れを見やりながら、リーナのアパートメントでブランドンは黄昏ていた。
リーザの双子の子であるカイルやリーナ、弟のディランと4人で集まり、今後の対魔族戦について話し合っていた。
話し合いの結果、女王リーザから出撃要請が来るまで静観するという結論に至り、解散となった。
リーナの提案でカイルと弟のディランは、引きずりだされるような形で、サンクトペテルブルク観光に向かった。
ブランドンは一人残った。
氷点下の中を観光に出かける気がしれなかった。
それに、とてもじゃないが、リーザの子供たちと呑気に観光する気分ではなかった。
太陽の光が反射してネヴァ川の水面がキラキラ光る。
思い出されるのは、はるか昔。リーザとリーデイルが王宮に向かう姿を見送ったシーンだ。
王女リーザを守ることが生涯をかけた誓いだったのに。
なぜ、あの時、リーザの側を離れたのだろう。
母ネリーニからリーデイルの不審な言動について聞いていたではないか。
ブランドンはこのことを永遠に後悔することになる。
リーザとリーデイルが王宮に向かった後、ブランドンはリーザの命令通り、離宮にいる者たちを連れて北の大地へ向かった。
北の大地で先に王都や他の居住区から逃げてきたリーネの民と合流した。
この時すでにリーネ族は200人に満たない人数となっていた。
あとは皆、王都リーネリアで魔族の戦闘集団アルカナに殺されたり、捕虜になったりと、暗い運命を辿っていた。
ブランドンとディランの父も王都を守るため奮戦して戦死している。
リーザとリーデイルの帰還を待ったが、何日経っても2人は戻らなかった。
この時ようやくリーデイルが怪しいということになり、日のあるうちに王都やリーネ族の居住区を探し回ったが、2人の痕跡を見つけることはできなかった。
地上に痕跡を見つけられない。
これはまず間違いなく魔界に連れ去られたことを意味する。
魔族に連れ去られたリーネ族の女は悲惨だ。
しかも、王族の女。
めちゃめちゃに魔族になぶられ、惨殺されるだろう。
2週間ぐらいでリーザの探索は打ち切られ、新王として、リーザの従姉の子、つまり亡きリーフェイス王の孫でリージェント王子の甥が即位した。
即位したといっても、王権の象徴たる3種の神器は1つもない。
バルムンクの剣や宇宙龍の環がない状態で集落を作るのはかなり厳しかった。
魔族の大群に襲われたら、吹き飛ぶような小さな集落である。
リーネ族と魔族双方の血を引く混血児なら、白夜をものともせず攻撃してくるだろう。
攻撃に備えて昼夜を問わず、警戒体制をとった。
ブランドンのリーデイルに対しての憎しみは深い。
リーザを魔界へ連れ去ったのは、まず間違いなくあの男だろう。
いつか必ずこの手で殺してやる。
この命に換えても。
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