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第40話 リーネ神話
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「お湯加減はどうですかー」
浴場にまでついてくる小鬼ユティア。
「・・・すごくいいよ。ありがとう」
大理石の浴槽に身を沈め、久方ぶりに体をほぐす妙土であった。
バラの香りが漂う。
乳白色のお湯が広い浴槽にたっぷりと注がれ、体の芯から温まるようだ。
妙土は泳ぎたくなった。
いつ終わるとも知れないリーザとラディリオンの激しい抱擁をまざまざと見せつけられ。
気がつけば体の隅々までラディリオンとの情交の痕が生々しく残っていた。
太股をとろりとしたものが伝った時は妙土は半狂乱になった。
妙土の悲鳴を聞き付けたユティアが湯あみを用意してくれたのである。
『いい加減に機嫌を直せ。私とてお前とリーヴィシランの情交を見ているのだぞ』
ふてくされてる妙土にリーザが声をかけてきた。
『私としては、息子が男として成長したのを見れてうれしかったが・・・』
『ちょっと!それは言わないでよ!』
恋人の両親の営みを見るというのもおかしいが、息子といたしているところを母親に見られるというのも珍妙なシチュエーションだ。
二つの人格が一つの体の中に同居していると、互いのプライバシーが、だだ漏れである。
リーザは双子を生んで北の島へ逃げた経緯を妙土に語って聞かせた。
リーネ族と魔族の確執が根深いことに妙土は頭を抱えた。
そして、リーデイルのリーネ族に対する執念が怖い。
生き残ったリーネ族は、ほとんどリーデイルを含めた3人の混血児たちに殺されたようである。
『怖い例えだけど、なぜリーネ族は宇宙龍の環で魔族を滅ぼさなかったの?』
『魔族を滅ぼすなら、とっくに神々の戦いで勝利した神ディーンが滅ぼしていただろう。
それを地下に追いやるだけにした。魔族の殲滅はディーンの意志ではなかったのだ』
『ディーンはなぜ魔族を生かしたの』
『殺したくなかったんだろう。だから、殺さなかった』
『あなたが魔王ラディリオンを殺さなかったように?』
『・・・リーネ神話によると、我々リーネ族の始祖の神ディーンは女神アイリーンに懸想していた。アイリーンは別の神を愛していて二人は相思相愛だった。
嫉妬に狂ったディーンが神々の戦いで魔族に堕とした恋敵の神が魔王の始祖だ。
神の名はバアル。魔界の王族はバアルの神威と力を失わぬよう近親婚を繰り返している。
バアルに従った者たちも魔界に堕とされた』
『リーネ神話・・・』
『そう、神々の物語だ』
『・・・女神アイリーンはどうなったの?』
『アイリーンはバアルを追って魔界に下る。バアルを取り戻すために、ひたすら魔界を探し歩いた』
エジプト神話のオシリス神とイシス女神みたい。
夫オシリスのバラバラにされた体を妻のイシスが探し求める。
日本神話でも夫が妻を求めて黄泉下りした話があったっけ。
『アイリーンがバアルを見つけた時、バアルはアイリーンのことを忘れて、魔王として魔界に君臨していた。ディーンがバアルに忘却の水を飲ませたのだ。魔王にはすでに妃もいた。
泣く泣く地上に帰ったアイリーンはディーンの妃となり子を産んだが、ある日、自ら命を絶った』
『・・・痛ましいね・・・』
『アイリーンは愛する者に忘れ去られた苦しみから逃れられなかったんだ。アイリーンを埋葬した後、ディーンは他の星に旅立っていった。3種の神器をアイリーンの子に渡して。
その子がリーネ族の初代王だ』
『アイリーンの子はディーンが父親?』
『・・・それがわからないんだ。表向きは神々の戦いの勝者であるディーンなのだが・・・。
リーネ族は異種族と交わっても子孫は残せないが魔族の王族とだけは子を成せる。
それは同じバアルを先祖とするからだという説もあるくらいだ』
『宇宙龍の環はディーンの意思に沿う願いなら叶えるんだよね』
『そうだ。そして、ディーンの意思は魔族を滅ぼすことではない。魔族を滅ぼそうと願いをかけたリーネ王が死んだことがある。
ディーンはアイリーンを死なせてしまい、バアルとアイリーンの仲を裂いたことを悔やんでいたと思う。
私なら堪えられないよ。愛する者が苦悩し自ら命を絶つことなど』
『・・・なら、ディーンの意思とは・・・』
『ディーンの意思とは・・・何だろうな。わからない。わからないんだ妙土』
『リーザ・・・』
『だから、お前が答を見つけてくれ』
『はあ!?』
『お前ならできる。お前は私と違い思いきりがいいし、深く物事を考えない』
妙土はムッとした。
『・・・それって誉め言葉・・・?』
『誉めている。私たちを助けてくれ、妙土』
『助けるったって・・・』
『あれー、リーザ様。顔が真っ赤ですよ。のぼせたんじゃ・・・』
ユティアが声をかけてくれた。
『へ?』
体の向きをユティアの方へ変えようとしたが頭がクラっときた。
バランスを失った妙土は湯船に水没した。
浴場にまでついてくる小鬼ユティア。
「・・・すごくいいよ。ありがとう」
大理石の浴槽に身を沈め、久方ぶりに体をほぐす妙土であった。
バラの香りが漂う。
乳白色のお湯が広い浴槽にたっぷりと注がれ、体の芯から温まるようだ。
妙土は泳ぎたくなった。
いつ終わるとも知れないリーザとラディリオンの激しい抱擁をまざまざと見せつけられ。
気がつけば体の隅々までラディリオンとの情交の痕が生々しく残っていた。
太股をとろりとしたものが伝った時は妙土は半狂乱になった。
妙土の悲鳴を聞き付けたユティアが湯あみを用意してくれたのである。
『いい加減に機嫌を直せ。私とてお前とリーヴィシランの情交を見ているのだぞ』
ふてくされてる妙土にリーザが声をかけてきた。
『私としては、息子が男として成長したのを見れてうれしかったが・・・』
『ちょっと!それは言わないでよ!』
恋人の両親の営みを見るというのもおかしいが、息子といたしているところを母親に見られるというのも珍妙なシチュエーションだ。
二つの人格が一つの体の中に同居していると、互いのプライバシーが、だだ漏れである。
リーザは双子を生んで北の島へ逃げた経緯を妙土に語って聞かせた。
リーネ族と魔族の確執が根深いことに妙土は頭を抱えた。
そして、リーデイルのリーネ族に対する執念が怖い。
生き残ったリーネ族は、ほとんどリーデイルを含めた3人の混血児たちに殺されたようである。
『怖い例えだけど、なぜリーネ族は宇宙龍の環で魔族を滅ぼさなかったの?』
『魔族を滅ぼすなら、とっくに神々の戦いで勝利した神ディーンが滅ぼしていただろう。
それを地下に追いやるだけにした。魔族の殲滅はディーンの意志ではなかったのだ』
『ディーンはなぜ魔族を生かしたの』
『殺したくなかったんだろう。だから、殺さなかった』
『あなたが魔王ラディリオンを殺さなかったように?』
『・・・リーネ神話によると、我々リーネ族の始祖の神ディーンは女神アイリーンに懸想していた。アイリーンは別の神を愛していて二人は相思相愛だった。
嫉妬に狂ったディーンが神々の戦いで魔族に堕とした恋敵の神が魔王の始祖だ。
神の名はバアル。魔界の王族はバアルの神威と力を失わぬよう近親婚を繰り返している。
バアルに従った者たちも魔界に堕とされた』
『リーネ神話・・・』
『そう、神々の物語だ』
『・・・女神アイリーンはどうなったの?』
『アイリーンはバアルを追って魔界に下る。バアルを取り戻すために、ひたすら魔界を探し歩いた』
エジプト神話のオシリス神とイシス女神みたい。
夫オシリスのバラバラにされた体を妻のイシスが探し求める。
日本神話でも夫が妻を求めて黄泉下りした話があったっけ。
『アイリーンがバアルを見つけた時、バアルはアイリーンのことを忘れて、魔王として魔界に君臨していた。ディーンがバアルに忘却の水を飲ませたのだ。魔王にはすでに妃もいた。
泣く泣く地上に帰ったアイリーンはディーンの妃となり子を産んだが、ある日、自ら命を絶った』
『・・・痛ましいね・・・』
『アイリーンは愛する者に忘れ去られた苦しみから逃れられなかったんだ。アイリーンを埋葬した後、ディーンは他の星に旅立っていった。3種の神器をアイリーンの子に渡して。
その子がリーネ族の初代王だ』
『アイリーンの子はディーンが父親?』
『・・・それがわからないんだ。表向きは神々の戦いの勝者であるディーンなのだが・・・。
リーネ族は異種族と交わっても子孫は残せないが魔族の王族とだけは子を成せる。
それは同じバアルを先祖とするからだという説もあるくらいだ』
『宇宙龍の環はディーンの意思に沿う願いなら叶えるんだよね』
『そうだ。そして、ディーンの意思は魔族を滅ぼすことではない。魔族を滅ぼそうと願いをかけたリーネ王が死んだことがある。
ディーンはアイリーンを死なせてしまい、バアルとアイリーンの仲を裂いたことを悔やんでいたと思う。
私なら堪えられないよ。愛する者が苦悩し自ら命を絶つことなど』
『・・・なら、ディーンの意思とは・・・』
『ディーンの意思とは・・・何だろうな。わからない。わからないんだ妙土』
『リーザ・・・』
『だから、お前が答を見つけてくれ』
『はあ!?』
『お前ならできる。お前は私と違い思いきりがいいし、深く物事を考えない』
妙土はムッとした。
『・・・それって誉め言葉・・・?』
『誉めている。私たちを助けてくれ、妙土』
『助けるったって・・・』
『あれー、リーザ様。顔が真っ赤ですよ。のぼせたんじゃ・・・』
ユティアが声をかけてくれた。
『へ?』
体の向きをユティアの方へ変えようとしたが頭がクラっときた。
バランスを失った妙土は湯船に水没した。
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