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第41話 バルムンクの青い宝石
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湯上がりに岩清水をグラスに注いでもらった。
浴槽でリーザと脳内会議をしていて妙土はのぼせたようだ。
部屋に戻って一息つこうとベッドに足を向けて妙土は仰天した。
ベッドの脇にある袖机にバルムンクの青い宝石があるではないか。
魔王ラディリオンを封じ込めていた石。
リーザに探せと頼まれ、どうしようかと思っていたのに、労せずして手に入れることができた。
誰かが故意に青い宝石を袖机に置いたとしか考えられない。
元々、青い宝石はバルムンクの剣の柄にあった。
バルムンクの剣本体を持っているのはカイルである。
このままリーザが青い宝石を持ってカイルのところへ瞬間移動すれば、バルムンクは完全体になる。
・・・あ、でも魔界ではリーネ族のリーザは力を使えないんだっけ。
瞬間移動ができなければ、逃げる術はない。
自分の力だけでは魔界から逃げられない。
妙土はカイルに助けてもらいたかった。
(カイル!!)
祈るような気持ちでリーザは自分の額にソロモンの指輪を当てた。
(カイル!バルムンクの青い宝石を見つけたよ!)
(妙土!?)
ソロモンの指輪を通してカイルは妙土に呼ばれているのがわかった。
ソロモンの指輪をつけている者同士は心話で交信ができる。
「どうしたの、兄さん」
妹のリーナがいぶかしそうに振り返る。
サンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館の中でナポレオンを敗走させたロシアのクツーゾフ将軍の肖像画についてリーナがまさに説明しようとしていたときだった。
「リーナ、妙土が呼んでいる。魔界に行かなきゃ」
「妙土?ちょっと待って。母上の指示待ちなんじゃないの?」
「いや、どうやら妙土はバルムンクの青い宝石を手に入れたようだ。僕は行くよ」
「じゃあ、私も行く!ディラン、ブランドンに私たちが魔界へ向かうことを伝えて」
ディランはクツーゾフ将軍の肖像画の前にボーッと立っていたが、我に返り慌てて頷いた。
エジプトのサハラ砂漠にカイルとリーナは立っていた。
サハラ砂漠の下に「魔界」という異次元の空間につながる入り口がある。
二人は魔界王宮の見取り図を見て妙土がいる場所を予測していた。
王宮の地下にはバアル神を祀る地下神殿があり、アルカナ「法王」が祭祀を執り行っている。
「リーナ、二手に分かれよう。僕がリーデイルを地下神殿に引き付けるから君が妙土を連れ出すんだ。妙土は王宮の中にいると思う。
以前、母上が使用していた「王妃の間」にいるに違いない」
「オッケー。兄さん、気を付けて」
二人は同時に瞬間移動で魔界に向かおうとした時だった。
ブランドンが二人の前に現れた。
二人は思いもよらないブランドンの出現にビックリした。
ディランからの知らせを聞いてブランドンは二人に追いついてきたのだ。
ブランドンのいでたちを見てカイルとリーナはさらにビックリした。
二人は顔を見合わせた。
妙土は魔界の王宮でバルムンクの青い宝石を見つめていた。
サファイアのような神秘的な青の輝き。
この石に魔王ラディリオンは何千年も封印されていたのだ。
封じられている間、彼は何を思ったのだろう。
突然、部屋に人影が現れた。
妙土はぎょっとして後ずさった。
背の高い美しい黒髪の女性だ。
ショートヘアのスタイルは凛々しさを際立たせる。
キリッと結ばれた唇と理知的な目元。
アクアマリンの瞳が妙土を捕らえた。
「・・・妙土ね?私はリーナ。カイルの妹よ」
「妹・・・」
リーナのモデルのようにスレンダーな体躯と颯爽とした動きを伴う風格に妙土は圧倒された。
「細かい説明は後ね。私につかまって。そこの青い宝石を忘れずに!」
有無を言わせぬ物言いとリーナがソロモンの指輪をはめていることに押し出されるように妙土はリーナにつかまった。
自分の中心に体の全てが収束していくような感覚。
ああ、瞬間移動だな、と思った刹那、妙土とリーナは部屋から消えた。
浴槽でリーザと脳内会議をしていて妙土はのぼせたようだ。
部屋に戻って一息つこうとベッドに足を向けて妙土は仰天した。
ベッドの脇にある袖机にバルムンクの青い宝石があるではないか。
魔王ラディリオンを封じ込めていた石。
リーザに探せと頼まれ、どうしようかと思っていたのに、労せずして手に入れることができた。
誰かが故意に青い宝石を袖机に置いたとしか考えられない。
元々、青い宝石はバルムンクの剣の柄にあった。
バルムンクの剣本体を持っているのはカイルである。
このままリーザが青い宝石を持ってカイルのところへ瞬間移動すれば、バルムンクは完全体になる。
・・・あ、でも魔界ではリーネ族のリーザは力を使えないんだっけ。
瞬間移動ができなければ、逃げる術はない。
自分の力だけでは魔界から逃げられない。
妙土はカイルに助けてもらいたかった。
(カイル!!)
祈るような気持ちでリーザは自分の額にソロモンの指輪を当てた。
(カイル!バルムンクの青い宝石を見つけたよ!)
(妙土!?)
ソロモンの指輪を通してカイルは妙土に呼ばれているのがわかった。
ソロモンの指輪をつけている者同士は心話で交信ができる。
「どうしたの、兄さん」
妹のリーナがいぶかしそうに振り返る。
サンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館の中でナポレオンを敗走させたロシアのクツーゾフ将軍の肖像画についてリーナがまさに説明しようとしていたときだった。
「リーナ、妙土が呼んでいる。魔界に行かなきゃ」
「妙土?ちょっと待って。母上の指示待ちなんじゃないの?」
「いや、どうやら妙土はバルムンクの青い宝石を手に入れたようだ。僕は行くよ」
「じゃあ、私も行く!ディラン、ブランドンに私たちが魔界へ向かうことを伝えて」
ディランはクツーゾフ将軍の肖像画の前にボーッと立っていたが、我に返り慌てて頷いた。
エジプトのサハラ砂漠にカイルとリーナは立っていた。
サハラ砂漠の下に「魔界」という異次元の空間につながる入り口がある。
二人は魔界王宮の見取り図を見て妙土がいる場所を予測していた。
王宮の地下にはバアル神を祀る地下神殿があり、アルカナ「法王」が祭祀を執り行っている。
「リーナ、二手に分かれよう。僕がリーデイルを地下神殿に引き付けるから君が妙土を連れ出すんだ。妙土は王宮の中にいると思う。
以前、母上が使用していた「王妃の間」にいるに違いない」
「オッケー。兄さん、気を付けて」
二人は同時に瞬間移動で魔界に向かおうとした時だった。
ブランドンが二人の前に現れた。
二人は思いもよらないブランドンの出現にビックリした。
ディランからの知らせを聞いてブランドンは二人に追いついてきたのだ。
ブランドンのいでたちを見てカイルとリーナはさらにビックリした。
二人は顔を見合わせた。
妙土は魔界の王宮でバルムンクの青い宝石を見つめていた。
サファイアのような神秘的な青の輝き。
この石に魔王ラディリオンは何千年も封印されていたのだ。
封じられている間、彼は何を思ったのだろう。
突然、部屋に人影が現れた。
妙土はぎょっとして後ずさった。
背の高い美しい黒髪の女性だ。
ショートヘアのスタイルは凛々しさを際立たせる。
キリッと結ばれた唇と理知的な目元。
アクアマリンの瞳が妙土を捕らえた。
「・・・妙土ね?私はリーナ。カイルの妹よ」
「妹・・・」
リーナのモデルのようにスレンダーな体躯と颯爽とした動きを伴う風格に妙土は圧倒された。
「細かい説明は後ね。私につかまって。そこの青い宝石を忘れずに!」
有無を言わせぬ物言いとリーナがソロモンの指輪をはめていることに押し出されるように妙土はリーナにつかまった。
自分の中心に体の全てが収束していくような感覚。
ああ、瞬間移動だな、と思った刹那、妙土とリーナは部屋から消えた。
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