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第47話 神バアルと女神アイリーン
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カイルとリーナの兄。
母はリーザ、父はもちろん魔王ラディリオンである。
リーネ王家と魔王との直系の血を引く混血児であり、能力は計り知れない。
「あの子は魔王ラディリオンの後継者だ。戦闘集団アルカナの「死神」。魔界の王子として・・・魔族側につくのは仕方ないと思っている。
だが、地上を侵略させるわけにはいかない。
我々リーネ族の使命は地上を魔族から守ること。我が子と言えども地上の世界を脅かすのであれば倒す。
これも運命と思って諦めている」
「目覚めてから兄上には会ったのですか?」
「あの子が生まれてすぐラビリティアに引き離されてから一度も会っていない」
「引き離されたのですか?」
「・・・そうだ。ラビリティア、あの子を魔界のアルカナとして養育するよう、リーデイルに任せている。だから、お前とリーナが生まれた時、アルカナとして利用されないよう、私は魔界から逃げた。
王都リーネリアの陥落時に捕らえられたリーネ族は私が逃げた見せしめに虐殺されたよ・・・」
「僕とリーナはたくさんのリーネ族の犠牲のもとに生かされています。正直、それが重いんです」
「・・・お前たちの役割は混血児を殺すことだ。混血児を倒せば、殺された仲間も浮かばれよう。お前たちの力が必要だ。・・・私の力では混血児を殺せない」
リーネ族は太陽光をエネルギー源としており、太陽がない夜間及び魔界においては力を発揮できない。
リーネ族と魔族の混血児は、太陽光だけでなく、地熱や動植物の生命エネルギーをエネルギー源とすることができるので、昼夜、場所を問わず、力を使えるのである。
闇夜に彼らから襲撃を受ければ、リーネ族はひとたまりもない。
純粋なリーネ族と混血児との戦闘では、圧倒的にリーネ族が不利なのである。
「母上、なぜ僕たちを生んだのですか?僕たちは対混血児戦に備えて生まれたのですか?」
リーザにたまりにたまっていた疑問をぶつけた。
自分たちの存在する意義。
母はなぜ自分とリーナを誕生させたのか?
叔父リーデイルや兄に対抗する力として望まれたのだろうか。
「お前たちを生んだのは、私が魔王ラディリオンを愛していたからだ。男女が愛し合えば子は生まれる」
臆面もなく、リーザは言い切った。
カイルの中で父ラディリオンへの嫉妬の炎が燃え上がる。
「あなたはリーネ族の女王なのに・・・!魔王ラディリオンを殺さなかったせいで、どれだけ一族が悲惨な目に遭ったか・・・!」
リーザはカイルを静かに見つめた。
「魔王ラディリオンを殺せば、お前も死ぬかもしれないぞ、リーヴィシラン」
「なん・・・ですって・・・?」
「おまえの魂にはラディリオンの魂の一部が移植されている。魂の本体であるラディリオンが死ねば、お前もどうなるかわからない」
「移植・・・なぜ・・・!?」
自分の魂に父親の魂が移植されていることは初耳である。
カイルは愕然とする。
なぜ?なんのために?
「ラディリオンの望みだ。自分は魔王として魔界を統治する責務があるから、私を守ることはできないと。だから、お前に自分の一部を託したのだ。分魂の術を使って」
「分魂の術・・・。そういえば、魔王は魂を取り扱うのでしたね。・・・私は父の思惑通り、あなたの転生を追いかけ守ってきたというわけですね」
「ラディリオンの思惑というより、神バアルの意図なのだろう。魔王ラディリオンはバアルの生まれ変わりだ」
「バアル!?リーネ神話に出てくるバアル神?」
「そう。神々の戦いに破れ、魔界に堕とされた闇の神だ。ラディリオンは彼の記憶と力を受け継いでいる。・・・いや、受け継いでいるというより、バアルの意識と記憶に浸食されて苦悩している」
「バアルは忘却の水を飲み、女神アイリーンのことを忘れて・・・」
「アイリーンを絶望と悲しみの淵に突き落とし、死に追いやった。今生でバアルは前世の全てを思い出していて、アイリーンへの贖罪と自責の念に打ちひしがれているわけだ」
「それが魔王ラディリオン。・・・まさか女神アイリーンも生まれ変わっているというのですか?」
「そのまさかだ」
「母上、あなたがアイリーンの生まれ変わり・・・なのですか!?」
「そのようだ。皮肉なことに、私は全く前世を覚えていない。バアルに忘れ去られたアイリーンはバアルのことを忘れてしまったようだ」
カイルは頭を抱えた。
様々な新事実に頭の中が混乱している。
妙土もリーザの中で衝撃を受けていた。
母はリーザ、父はもちろん魔王ラディリオンである。
リーネ王家と魔王との直系の血を引く混血児であり、能力は計り知れない。
「あの子は魔王ラディリオンの後継者だ。戦闘集団アルカナの「死神」。魔界の王子として・・・魔族側につくのは仕方ないと思っている。
だが、地上を侵略させるわけにはいかない。
我々リーネ族の使命は地上を魔族から守ること。我が子と言えども地上の世界を脅かすのであれば倒す。
これも運命と思って諦めている」
「目覚めてから兄上には会ったのですか?」
「あの子が生まれてすぐラビリティアに引き離されてから一度も会っていない」
「引き離されたのですか?」
「・・・そうだ。ラビリティア、あの子を魔界のアルカナとして養育するよう、リーデイルに任せている。だから、お前とリーナが生まれた時、アルカナとして利用されないよう、私は魔界から逃げた。
王都リーネリアの陥落時に捕らえられたリーネ族は私が逃げた見せしめに虐殺されたよ・・・」
「僕とリーナはたくさんのリーネ族の犠牲のもとに生かされています。正直、それが重いんです」
「・・・お前たちの役割は混血児を殺すことだ。混血児を倒せば、殺された仲間も浮かばれよう。お前たちの力が必要だ。・・・私の力では混血児を殺せない」
リーネ族は太陽光をエネルギー源としており、太陽がない夜間及び魔界においては力を発揮できない。
リーネ族と魔族の混血児は、太陽光だけでなく、地熱や動植物の生命エネルギーをエネルギー源とすることができるので、昼夜、場所を問わず、力を使えるのである。
闇夜に彼らから襲撃を受ければ、リーネ族はひとたまりもない。
純粋なリーネ族と混血児との戦闘では、圧倒的にリーネ族が不利なのである。
「母上、なぜ僕たちを生んだのですか?僕たちは対混血児戦に備えて生まれたのですか?」
リーザにたまりにたまっていた疑問をぶつけた。
自分たちの存在する意義。
母はなぜ自分とリーナを誕生させたのか?
叔父リーデイルや兄に対抗する力として望まれたのだろうか。
「お前たちを生んだのは、私が魔王ラディリオンを愛していたからだ。男女が愛し合えば子は生まれる」
臆面もなく、リーザは言い切った。
カイルの中で父ラディリオンへの嫉妬の炎が燃え上がる。
「あなたはリーネ族の女王なのに・・・!魔王ラディリオンを殺さなかったせいで、どれだけ一族が悲惨な目に遭ったか・・・!」
リーザはカイルを静かに見つめた。
「魔王ラディリオンを殺せば、お前も死ぬかもしれないぞ、リーヴィシラン」
「なん・・・ですって・・・?」
「おまえの魂にはラディリオンの魂の一部が移植されている。魂の本体であるラディリオンが死ねば、お前もどうなるかわからない」
「移植・・・なぜ・・・!?」
自分の魂に父親の魂が移植されていることは初耳である。
カイルは愕然とする。
なぜ?なんのために?
「ラディリオンの望みだ。自分は魔王として魔界を統治する責務があるから、私を守ることはできないと。だから、お前に自分の一部を託したのだ。分魂の術を使って」
「分魂の術・・・。そういえば、魔王は魂を取り扱うのでしたね。・・・私は父の思惑通り、あなたの転生を追いかけ守ってきたというわけですね」
「ラディリオンの思惑というより、神バアルの意図なのだろう。魔王ラディリオンはバアルの生まれ変わりだ」
「バアル!?リーネ神話に出てくるバアル神?」
「そう。神々の戦いに破れ、魔界に堕とされた闇の神だ。ラディリオンは彼の記憶と力を受け継いでいる。・・・いや、受け継いでいるというより、バアルの意識と記憶に浸食されて苦悩している」
「バアルは忘却の水を飲み、女神アイリーンのことを忘れて・・・」
「アイリーンを絶望と悲しみの淵に突き落とし、死に追いやった。今生でバアルは前世の全てを思い出していて、アイリーンへの贖罪と自責の念に打ちひしがれているわけだ」
「それが魔王ラディリオン。・・・まさか女神アイリーンも生まれ変わっているというのですか?」
「そのまさかだ」
「母上、あなたがアイリーンの生まれ変わり・・・なのですか!?」
「そのようだ。皮肉なことに、私は全く前世を覚えていない。バアルに忘れ去られたアイリーンはバアルのことを忘れてしまったようだ」
カイルは頭を抱えた。
様々な新事実に頭の中が混乱している。
妙土もリーザの中で衝撃を受けていた。
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