天の龍 地の女神

常盤 舞子

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第46話 母リーザへの想い

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カイルは母であるリーザと2人きりで部屋にいた。

カイルとリーナは生まれてすぐ乳母のネリーニに預けられ、母の顔を知らなかった。
ネリーニは当時、ブランドンとディランの妹に当たる第3子を生んだばかりだったので、カイルとリーナを一緒に育ててくれた。

リーザの体は、魔王ラディリオン封印後、女王ラビリティアとリーデイルにより永年、氷壁の中に閉じ込められていた。
カイルは一度、妙土たえとの体を通して母であるリーザと会話を交わしたが、その時は用件を話したのみだった。

母に言いたいことや聞きたいことは山ほどある。
常日頃からリーナがそうぼやいていたが、それはカイルも同じである。

リーザは最終決戦でラディリオンを殺せず、封印のみで済まし、力尽きたところを魔族に捕らえられた。

結果的にリーネ族は壊滅的な打撃を被り、大混乱の中、乳母ネリーニの夫をはじめ、たくさんのリーネ族の戦士たちが命を落とすことになった。 
しかも、リーザが氷壁に閉じ込められたことにより、対魔族戦の要となる3種の神器の使い手がいなくなった。

リーネ族は散り散りとなり、ソロモンの指輪で気配を消しながら、地上をさすらった。
魔界の戦闘集団「アルカナ」の一人であるリーデイルは、悪魔の執念でリーネ族を探し出しては、殺戮するか魔界に連れ去るかした。

カイルとリーナが成長し、リーデイルと戦えるようになるまでに、リーネ族の数は激減し今に至る。
ネリーニの娘もさらわれ、消息は知れない。

リーデイルはカイルとリーナにとって、叔父に当たる。
カイルとリーナはネリーニ親子に申し訳ない思いでいっぱいだった。


・・・しかし、我が母ながら美しい。
リーザを見つめるカイルの瞳は熱を帯びる。

輝くような金髪に朱唇が映える白磁の肌、海色の瞳。
豊かな乳房と引き締まったウェスト。
神話に出てくる女神のように、見る者を魅了する姿である。

カイルはとりつかれたように、母リーザの転生を追いかけ愛した。
無条件に愛しくて愛しくてたまらず、手に入れないではいられなかった。
その原型である女性が今ここにいる。

「私に聞きたいことがある、と?」
リーザが口火を切った。
「ええ。3種の神器を母上の仰せのとおり、そろえました。このあとのお考えをお聞きしたい」

「魔界を封じている結界はそのままにする。結界がある限り、魔族は地上に出ることはできない。魔族は今までどおり、地下で生きてもらう」
「魔族は納得しますまい」
「納得しなくとも、結界を超えることはできまい。
問題は混血児たちだ。結界を超え地上に出ることができる。今は魔王ラディリオンと女王ラビリティアがうまく彼らを抑制しているから良いが、この先、地上を攻撃しないとも限らない。
・・・奴らを殺さねばならない」

「母上・・・。混血児の中には・・・」
「そう。私とラディリオンの最初の息子がいる。お前とリーナの兄だ。ブランドンから聞いていたのか」
「ネリーニから聞きましたよ。まだ兄に会ったことはありませんが・・・」

カイルはそっと目を伏せた。
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