天の龍 地の女神

常盤 舞子

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第45話 完全体となるバルムンクの剣

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朝焼けのニューヨークマンハッタン。
部屋の窓から眼下に広がる摩天楼に朝日が反射して荘厳な光景が生まれる。
妙土たえととカイルは一瞬にしてサンクトペテルブルクのアパートメントから移動した。

「ここは・・・?」
「ニューヨークの僕のマンションだよ」

日本のマンションと大違いの広さである。
結構な高層階のようだし、向こうに見えるのはセントラルパークではないか?
マンハッタンのど真ん中にこんな居住地を構えることができるなんて。

「ここって何階?」
「45階。最上階だよ。いわゆるペントハウス」

・・・ペントハウスってことは超高級マンションの中でも、さらに高額な部屋なのではないか。

「カイルって、投資家のカイル・レイノルズ?」
「あれっ、よく僕を知っているね」
「私のパパも投資家だからね。投資のことはちょっと知ってる。カイル・レイノルズは世界的に有名だよ」
そうか、僕の名前は妙土にまで知られていたのか、とカイルはうれしそうである。

「人間として暮らすには先立つものがないとね。投資は僕の性に合っていたみたいだ」
「どうして投資家になろうと?」
「君の直近の前世はロンドンの銀行家だった。僕はビジネス上のパートナーだった。その延長線上かな」
「私、銀行家だったの!?」
「船乗りや商人、冒険家、植物学者。男性の君はなりたいものになっていた。・・・君が女性だった場合は問答無用で僕の妻だ」
「・・・スゴい。強引だね」
「・・・君をどうしようもなく愛しているんだ」
「・・・」

カイルが真顔で言うので妙土は驚いて目をそらした。
「誰にも渡したくない。父にも誰にもだ。君を幸せにするのは僕だ」
「カイル・・・」
カイルの激白に妙土は戸惑う。

どうやらカイルは無条件に妙土たちリーザの転生者を愛するようだ。
まるでそうプログラミングされているかのように。

それって違くない?
カイルの愛情は何か不自然で、妙土は違和感を覚えた。

カイルは妙土をダイニングルームに案内し赤いソファに座らせると自分も隣に座った。

自然光だけで充分に明るく広々とした気持ちの良い部屋だ。
壁や床などインテリアの基調は白だが、赤と黒の家具がアクセントとして配置されている。

妙土はカイルのアクアマリンの瞳を覗き込むように見つめた。
やっぱり、きれいだな、と思う。

「今後、どうなるのかな?」
妙土はパンツのポケットに忍ばせていたバルムンクの剣の青い宝石をカイルに差し出した。

「3種の神器がこれでそろった。リーネ族の、と言っても今や5人しかいないけど、女王リーザが3種の神器の正統な持ち主なんだ」
カイルは妙土から青い宝石を受けとると、左手のひらからバルムンクの剣を出した。
妙土は驚く。

「バルムンクの剣のさやは所有者の体なんだ」
そう言ってカイルは、受けとった青い宝石をバルムンクの柄にはめ込んだ。

バルムンクの刀身が青白くほのかに輝く。

「スゴい!バルムンクが青い宝石が戻ってきたことを喜んでるみたい」
「これでバルムンクは完全な姿になった。妙土、母上を出してもらっていいかい?母上に聞きたいことがあるんだ」
「えっ!?」
妙土は答えようとしたが、意識を無理やりリーザにどかされた。

圧倒的な気配と存在感を漂わせ、リーザの意識が現れた。
「リーヴィシラン、礼を言う」
リーザはバルムンクの剣を受けとると、左手のひらに刀身を沈めた。
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