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エピソード
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王子も聖女も通う王立学園。王妃=聖女のこの国では、二人の婚約は疑う余地もない。
「聖女エリシア! お前との婚約を破棄する!」
ランチタイムに婚約破棄を突きつけられた聖女は、一瞬顔を歪めたが、手を止めることなく食べ続ける。
「理由でも聞いておきましょうか?」
スープを一口すくう。今日は魚介出汁の聞いたミネストローネだ。
「聖女なのに、セラフィーヌに嫌がらせしただろう!?」
すーっとナイフを入れ、ステーキを切る。じゅわと溢れる肉汁が食欲をそそる。まだ温かく、湯気ものぼる。
「してませんが」
「いや、目撃者もいるんだ! しらばっくれるな!」
「そうだ! セレが悲しんでいた!」
「あのか弱い子が泣いていたんだぞ!」
王子の後ろから取り巻きが現れ、口々に叫ぶ。セラスフィーネは王子の腕に抱きつきながら震えている。
「で、簡潔にお話になると?」
ステーキを口に運んだ次は、マッシュポテトをナイフで切り、フォークにすくう。口に運んだ聖女の問う声は冷たい。
「聖女が忙しいことくらいご存知ですよね? さっさと要約してください」
「いや。だからだな、いじめを行うような聖女は王妃に相応しくないから、婚約を破棄する!」
ため息を落とした聖女が、サラダをフォークですくう。
「それって王子の独断ですか? 普通、国王陛下の承認がないとできませんよね? この婚約、王命ですもの」
聖女の言葉に、反論しようとしてできずに言葉を飲み込むのを何度か繰り返した王子が叫ぶ。
「そういう、冷たい女と結婚したくないんだ!」
「で、続きは?」
聖女の言葉は冷たい。デザートに辿り着き、ブリュレをぱきっと割って口に運ぶ。
「さっきから。その態度はなんだ!?」
怒る王子に、聖女はため息を吐いて自分の休憩時間について語り始めた。
「わたくしの休憩時間は、昼食五十分と朝食一時間、夕食一時間、睡眠時間の五時間、これで以上ですわ。少しでも早く食事を終えて、少しでも身体を休めたいと思って当然でしょう?」
「他にも身を整える時間だってあるだろう!」
論旨がずれていることに気がつかぬ王子が反論する。ため息を落とした聖女が呆れ返ったように付け加える。
「入浴中ですら聖具に魔力を送る生活をしているわたくしが? 排泄の時だって移動の最中だって聖具に魔術を入れるか祈りを捧げておりますの」
あまりの多忙さに、王子が言葉に詰まる。
「そ、それは……」
「おわかりでしたら、前々からわたくしに押し付けていた王子の業務、現王妃の業務。この辺りは引き取ってくださらない? 内容まで説明した方が宜しくて?」
「いや! それは! ひ、ひとまず今日のところは、これで話は終わりだ!」
タジタジになって戻っていく王子の後ろ姿を見て、聖女はため息を落とした。
「……七分も無駄にしたわ」
食後の紅茶をこくりと一口飲む。はぁ、と小さく吐息を落とした聖女は、どこからか取り出した手帳を開き、内容を確認した。
「明日で終わりね」
立ち上がった聖女が颯爽と学生食堂を後にする。聖女が立ち上がったと同時に、聖女を待っていた者たちが口々に話しかける。
「聖女様。昨日の件ですが」
「処理済みで大臣に回してあるわ」
「聖女様。午後の講義後のお勤めですが」
「貧民街を中心に、病の者を集めておきなさい」
「聖女様「聖女様」」
翌日の朝早く、聖女は誰にも見つかることなく王宮を抜け出し、国を出たのだった。
「聖女はおらぬか!」
「陛下! この業務は聖女様に任せておりましたが、王子殿下に頼んでもよろしいでしょうか?」
「見せろ! ……これは王子の業務じゃないか! 聖女がやっていたとはどういうことだ!?」
「こちらの業務はどなたに任せれば?」
「……王妃と王子を呼べ! 儂が話を聞く!」
仕事をサボっていたことまでバレ、元々勝手に婚約破棄をしようとした越権行為で廃嫡予定だった王子は断種の上、北の塔で簡単な業務漬けにされ、王妃は共にその業務を監視する役として北の塔に幽閉された。その後、側妃の産んだ第二王子が後継に据えられた。しかし、一代につき一人しか生まれない聖女が逃亡しているため、聖女を王妃にすることが叶わず、国力は大変に下がったという。
「さてと、まずは南国から中心に野良聖女として人を癒しながら旅でも楽しみましょうか」
聖女を目撃したという情報が王宮に届く頃には、別の国へと渡っていた聖女を捕まえることなど叶わず、聖女は幸せな生涯を老婆になるまで楽しんだという。
「聖女エリシア! お前との婚約を破棄する!」
ランチタイムに婚約破棄を突きつけられた聖女は、一瞬顔を歪めたが、手を止めることなく食べ続ける。
「理由でも聞いておきましょうか?」
スープを一口すくう。今日は魚介出汁の聞いたミネストローネだ。
「聖女なのに、セラフィーヌに嫌がらせしただろう!?」
すーっとナイフを入れ、ステーキを切る。じゅわと溢れる肉汁が食欲をそそる。まだ温かく、湯気ものぼる。
「してませんが」
「いや、目撃者もいるんだ! しらばっくれるな!」
「そうだ! セレが悲しんでいた!」
「あのか弱い子が泣いていたんだぞ!」
王子の後ろから取り巻きが現れ、口々に叫ぶ。セラスフィーネは王子の腕に抱きつきながら震えている。
「で、簡潔にお話になると?」
ステーキを口に運んだ次は、マッシュポテトをナイフで切り、フォークにすくう。口に運んだ聖女の問う声は冷たい。
「聖女が忙しいことくらいご存知ですよね? さっさと要約してください」
「いや。だからだな、いじめを行うような聖女は王妃に相応しくないから、婚約を破棄する!」
ため息を落とした聖女が、サラダをフォークですくう。
「それって王子の独断ですか? 普通、国王陛下の承認がないとできませんよね? この婚約、王命ですもの」
聖女の言葉に、反論しようとしてできずに言葉を飲み込むのを何度か繰り返した王子が叫ぶ。
「そういう、冷たい女と結婚したくないんだ!」
「で、続きは?」
聖女の言葉は冷たい。デザートに辿り着き、ブリュレをぱきっと割って口に運ぶ。
「さっきから。その態度はなんだ!?」
怒る王子に、聖女はため息を吐いて自分の休憩時間について語り始めた。
「わたくしの休憩時間は、昼食五十分と朝食一時間、夕食一時間、睡眠時間の五時間、これで以上ですわ。少しでも早く食事を終えて、少しでも身体を休めたいと思って当然でしょう?」
「他にも身を整える時間だってあるだろう!」
論旨がずれていることに気がつかぬ王子が反論する。ため息を落とした聖女が呆れ返ったように付け加える。
「入浴中ですら聖具に魔力を送る生活をしているわたくしが? 排泄の時だって移動の最中だって聖具に魔術を入れるか祈りを捧げておりますの」
あまりの多忙さに、王子が言葉に詰まる。
「そ、それは……」
「おわかりでしたら、前々からわたくしに押し付けていた王子の業務、現王妃の業務。この辺りは引き取ってくださらない? 内容まで説明した方が宜しくて?」
「いや! それは! ひ、ひとまず今日のところは、これで話は終わりだ!」
タジタジになって戻っていく王子の後ろ姿を見て、聖女はため息を落とした。
「……七分も無駄にしたわ」
食後の紅茶をこくりと一口飲む。はぁ、と小さく吐息を落とした聖女は、どこからか取り出した手帳を開き、内容を確認した。
「明日で終わりね」
立ち上がった聖女が颯爽と学生食堂を後にする。聖女が立ち上がったと同時に、聖女を待っていた者たちが口々に話しかける。
「聖女様。昨日の件ですが」
「処理済みで大臣に回してあるわ」
「聖女様。午後の講義後のお勤めですが」
「貧民街を中心に、病の者を集めておきなさい」
「聖女様「聖女様」」
翌日の朝早く、聖女は誰にも見つかることなく王宮を抜け出し、国を出たのだった。
「聖女はおらぬか!」
「陛下! この業務は聖女様に任せておりましたが、王子殿下に頼んでもよろしいでしょうか?」
「見せろ! ……これは王子の業務じゃないか! 聖女がやっていたとはどういうことだ!?」
「こちらの業務はどなたに任せれば?」
「……王妃と王子を呼べ! 儂が話を聞く!」
仕事をサボっていたことまでバレ、元々勝手に婚約破棄をしようとした越権行為で廃嫡予定だった王子は断種の上、北の塔で簡単な業務漬けにされ、王妃は共にその業務を監視する役として北の塔に幽閉された。その後、側妃の産んだ第二王子が後継に据えられた。しかし、一代につき一人しか生まれない聖女が逃亡しているため、聖女を王妃にすることが叶わず、国力は大変に下がったという。
「さてと、まずは南国から中心に野良聖女として人を癒しながら旅でも楽しみましょうか」
聖女を目撃したという情報が王宮に届く頃には、別の国へと渡っていた聖女を捕まえることなど叶わず、聖女は幸せな生涯を老婆になるまで楽しんだという。
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