【完結】姑皇后にいじめられたら、第一皇子が断罪されました!?〜完璧令嬢の嫁姑問題

碧井 汐桜香

文字の大きさ
31 / 31

〈番外編〉マリーの新婚生活

しおりを挟む

番外編です。マリーとフェルディアの結婚後です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「マリー、こちらにいらっしゃい」

「はい、皇后陛下」

 マリーとフェルディアが結婚して半年後。マリーは皇后に呼び出された。

「遅くなってしまって申し訳ないけど、数日間休みをとって、フェルと新婚旅行にでも行ってらっしゃい」

 皇后から無造作に差し出された書類は、マリーがずっと憧れつづけていた南国の島やなかなか行けない異国など、さまざまな旅行プラン一覧だった。


「これは……?」

「私がいくつか見繕っておいたわ。若い人たちに人気なのはこれだと、その、人が言っていたから。別にそこじゃなくてもいいわ。行きたいところに行きなさい」

 少し顔を赤くして目を背けながら、皇后がそう言い放つ。

「皇后陛下は、マリー様に楽しんでいただけるようにマリー様のお好きな南国や皇后陛下ご自身が行ってよかった地など、いくつか案を考えていらっしゃいました。お休みの間の業務は、皇后陛下と皇帝陛下がなさるように準備も済んでおります」

 皇后専属の秘書的な役割をしている侍従が、そう言葉を付け加える。

「よ、余計なこと言わないの! マリーが好きなところに行かなくなると困るでしょう!? いいのよ、マリー。行きたいところに行きたいだけお行きなさい?」

 鉄壁の微笑に戻った皇后にそう言い渡され、マリーは頭を下げる。

「ありがとうございます。皇后陛下。フェルディア様にご相談の上、決めさせていただきますわ。すべて素敵な提案で、その中でも、私、南国の案がすごく気に入っておりますわ」

「い、いいのよ! 早く行ってらっしゃい!」



ーーーー
「と、いうことでしたわ」

「僕が提案しようと思っていたのに、母上に先を越された!」

 悔しそうに顔を歪まされるフェルディア様に、思わず私は笑ってしまいます。お二人のお気持ちが嬉しくて、胸がぽかぽかいたしますわ。

「マリーはいつからどこに行きたい?」

「え? フェルディア様は?」

「マリーと一緒ならどこでもいいよ? うーん、でも、マリーがずっと夢見ていた南国に一緒に行けたらうれしいなぁ」

「ふふふ、私の気持ちを皆様見抜いていらしたのですね? そんなにわかりやすいかしら? 私もフェルディア様と一緒に南国に伺わせていただけたら、すごくすごく嬉しいですわ」

 私がそう言うと、フェルディア様にぎゅっと抱きしめられました。思わず顔が赤くなってしまいます。

「じゃあ、父上と母上に仕事は全部押し付けてくるから、すぐに行こうね?」

「ふぇ、フェルディアさま!?」

 両陛下へ仕事を押し付けると言い放ち、部屋を出て行ってしまったフェルディア様を、私は呆然と見送ります。




「喜んで受け取ってきてくれたよ。せっかくなら、近くの行きたい国も回ってきていいよって休暇3週間勝ち取ってきた。というか、母上が父上に説得してくれてたよ」

「さ、3週間!? そんなに離れて大丈夫なのでしょうか?」

 両陛下の能力を疑う意図ではなく、ご負担を考えての発言でしたが、受け取り方によっては、能力を疑う発言になってしまったと思って、そっと反省いたしました。

「大丈夫だよ。いつもマリーが頑張りすぎだっておっしゃってたし、今までの苦労も少しでも癒してきてほしいって」

「ありがとうございます」





ーーーー
「まぁ!」

 南国独特のもわっとした熱気に、少し暑い陽射し。私は、初めて感じるその感覚に胸が湧き踊ります。

「おいで、こっちにうちの別荘があるから」

 一応国内ではあるので、誰に気遣う必要のない別荘を皇家も持っているようです。そちらに案内していただきます。

 ふと道端の海に目を落とすと、エメラルドグリーンに輝き、透明度の高さから、海を泳ぐ魚たちも見えます。ずっとずっと憧れていた海に感動してしまいます。

「あとで泳ぐ?」

「え!? 泳いでよろしいのですか!?」

 令嬢としては泳ぐなんてはしたないこと、と思われてしまうと思って言い出せなかった憧れをフェルディア様から言い出してくださいました。

「うちの別荘の海なら、泳いでも誰にも見られないし、泳ぎやすい服も用意してあるよ」

「まぁ! ぜひお願いしますわ!」

 ずっと皇后となるための教育を受けてきたため、なかなか子供のように遊んだ経験がなかったため、ドキドキとしてまいりました。

「泳ぎ方なら教えてあげるから。手取り足取り、ね?」

「えぇ! よろしくお願いいたしますわ!」

 その時の私に言いたいですわ。フェルディア様のご用意された服が“水着”という布面積の少ない服であったことと、泳ぎを習うには密着しなければならないことを。断るなら、ここがチャンスでしたのに!



「ふぇ、ふぇ、フェルディア様!? こちらの服、丈がすごく短くて、身体のラインがわかりすぎます。下着のようで恥ずかしいですわ!?」

「大丈夫、出ておいで。ほら、よく見せて?」

「無理ですわ! これはお見せできませんわ!」

「じゃあ、タオルでもかぶっておいで? 海に着いた時に外せばいいだろう?」

「そ、それなら……」




「お待ちください! 海も透明度が高いからフェルディア様にはすべて見えてしまいますよね!?」

「なんでそこまで恥ずかしがってるの? 恥ずかしがるような仲じゃないよ?」

「こんな、明るいところで、こんな格好……」

「でも、泳いでみるならその水着がいいんだよ。おへその出るビキニもあるけどそっちにしとく?」

「……こちらにしておきますわ」

 私は勢いよく、海に駆け込み、少しでも身体を隠しました。
 フェルディア様が私の投げ捨てたタオルを畳んで置いてから、そっと追いかけていらっしゃいます。


「じゃあ、泳ぎ方を手取り足取り教えさせてもらうね?」

 なぜか獣に狙われた獲物になった気分になりながら、そうして、私たちの新婚旅行は始まったのでした。



ーーーーーーーーーーーーーーーー
こちらで完結となります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

mint
2023.03.02 mint

第二王子が黒幕と組んで第一王子を嵌めたように見えてしまってなんとなくモヤモヤ…
ヤンデレ気味なんでしょうかね…

解除

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

元平民だった侯爵令嬢の、たった一つの願い

雲乃琳雨
恋愛
 バートン侯爵家の跡取りだった父を持つニナリアは、潜伏先の家から祖父に連れ去られ、侯爵家でメイドとして働いていた。18歳になったニナリアは、祖父の命令で従姉の代わりに元平民の騎士、アレン・ラディー子爵に嫁ぐことになる。  ニナリアは母のもとに戻りたいので、アレンと離婚したくて仕方がなかったが、結婚は国王の命令でもあったので、アレンが離婚に応じるはずもなかった。アレンが初めから溺愛してきたので、ニナリアは戸惑う。ニナリアは、自分の目的を果たすことができるのか?  元平民の侯爵令嬢が、自分の人生を取り戻す、溺愛から始まる物語。

【完結】一途すぎる公爵様は眠り姫を溺愛している

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
リュシエンヌ・ソワイエは16歳の子爵令嬢。皆が憧れるマルセル・クレイン伯爵令息に婚約を申し込まれたばかりで幸せいっぱいだ。 しかしある日を境にリュシエンヌは眠りから覚めなくなった。本人は自覚が無いまま12年の月日が過ぎ、目覚めた時には父母は亡くなり兄は結婚して子供がおり、さらにマルセルはリュシエンヌの親友アラベルと結婚していた。 突然のことに狼狽えるリュシエンヌ。しかも兄嫁はリュシエンヌを厄介者扱いしていて実家にはいられそうもない。 そんな彼女に手を差し伸べたのは、若きヴォルテーヌ公爵レオンだった……。 『残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました』『結婚前日に友人と入れ替わってしまった……!』に出てくる魔法大臣ゼインシリーズです。 表紙は「簡単表紙メーカー2」で作成しました。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。