1 / 6
1.悪役令嬢、メンタルを病む
しおりを挟む
「まぁ。サーシャ・ツンドール公爵令嬢よ」
「本日も恐ろしいわね」
「ご覧になって? あの釣り上がった目」
「まぁ。ごきげんよう? 全て聞こえていましてよ? タンザイト伯爵令嬢? ナニメア伯爵令嬢? そして、ハリアイヌ子爵令嬢?」
いつも通り、夜会ではわたくしの陰口が聞こえます。勇気を振り絞って言い返しております。わたくしの父にも母にも似ていない、この釣りあがった目。とてもキツく見えるのだそうですわ。
「サーシャ。傲慢に振る舞うでない」
その夜、騒ぎを聞いた父にそう言いつけられた私は、ショックのあまり倒れてしまいましたわ。あぁ、公爵令嬢として汚名が……いえ、もうどうでもいいのです。
◇◇◇
「お目覚めですか? サーシャお嬢様」
「あぁ、マリアね。ありがとう。目が覚めたわ」
「昨夜のことは覚えていらっしゃいますか?」
目を覚ますと、私の専属メイドのマリアがいました。心配そうなマリアの顔を見つめていると、ひとりでに涙が流れ落ちていきます。起きあがろうとしても身体が動かない……どうなっているのでしょうか?
「マリア。身体が動かなくて起き上がれないわ」
精一杯言葉にしてそう伝えると、悲しそうな表情を浮かべたマリアは、走ってどこかにいってしまいました。
水の中に沈んだように、気持ちも浮かび上がりません。どうして……あぁ、わたくしなんて死んでしまったらいいのかしら? そう思って護身用のナイフを探します。見当たりませんわ。どこに入れたのかしら。死のうとおもうとなぜか身体が動きましたわ。
「サーシャお嬢様! 医師を連れてまいりました! 診察していただきましょう?」
「そう……」
マリアに言われるがまま、診察を受けます。
「……お嬢様は身体的な面では問題ないかと思います。どちらかというと、精神的な面ではないかと……」
医師のそんなセリフは、わたくしの頭には入ってきません。
あぁ、私の部屋は二階ですわ。落ちたら、死ねるのかしら?
「……お薬を処方します。お一人にならないように見守って差し上げてください。お近くに刃物等は置かないように」
そんなセリフが聞こえてきましたが、わたくしの頭には処理し切れません。
「……わかりました。私が必ずお嬢様をお守りします」
◇◇◇
「おい、サーシャ。怠けていないで早く起きろ。家庭教師の先生がお待ちだ」
お父様のそんなセリフが聞こえてきました。
あれから、食欲もなくなり、ただただ眠気に襲われます。お薬の副作用でしょうか。起きると涙が止まらないのです。
「はい、お父様」
そう答えるものの、身体は動きません。
マリアと医者が必死にお父様を連れ出し、状況を説明します。ふん、と鼻を鳴らして出ていかれました。
「お嬢様。お召し上がりになりたいものはありますか?」
「何もいらないわ」
「ではお嬢様。お飲み物だけでも召し上がってください」
マリアがそう言って差し出してきた飲み物は、温かく、優しい香りがしました。
「……ポタージュ?」
「お嬢様のお好きなお芋のポタージュを、私がお作りいたしました。美味しくできたと思うので飲んでいただけますか?」
そこまで言われ、一口口に入れると、甘くて優しいお芋の香りが一気に鼻を抜けていきます。遅れて優しいハーブの香りも漂ってきました。温かくて優しい。
「……美味しい」
「お嬢様……ありがとうございます。お気に召してくださったのならば、私がどれだけでもお作りいたしますからね?」
「ありがとう。マリア」
マリアの優しさに少し気持ちが楽になった気がしました。
「マリア。本をとってちょうだい? 少しでも座学を進めておきたいわ」
「お嬢様……今はお身体を休めることを優先なさってください。お嬢様のお身体が悲鳴をあげていらっしゃいますわ」
「そう……」
「どうしても読者がしたいと思っしゃるのならば、マリアおすすめのお笑い小説になさってくださいませ」
「ありがとう。読ませてもらうわ」
そう言って視線を向けると、なぜか本が読めません。いつも余暇には読書をして過ごしていたわたくし。なぜ本が読めないのか、理解できません。読めても少しするとすぐに疲れてしまいます。
「……読めない、わ」
「お嬢様……では、なにもなさらずゆっくりすることが必要なのでしょう。まずはゆっくり過ごしてください」
「ありがとう」
そう言われたわたくしは、眠りました。お薬の影響で眠くなるのです。ただただ、ひたすら眠りました。
「本日も恐ろしいわね」
「ご覧になって? あの釣り上がった目」
「まぁ。ごきげんよう? 全て聞こえていましてよ? タンザイト伯爵令嬢? ナニメア伯爵令嬢? そして、ハリアイヌ子爵令嬢?」
いつも通り、夜会ではわたくしの陰口が聞こえます。勇気を振り絞って言い返しております。わたくしの父にも母にも似ていない、この釣りあがった目。とてもキツく見えるのだそうですわ。
「サーシャ。傲慢に振る舞うでない」
その夜、騒ぎを聞いた父にそう言いつけられた私は、ショックのあまり倒れてしまいましたわ。あぁ、公爵令嬢として汚名が……いえ、もうどうでもいいのです。
◇◇◇
「お目覚めですか? サーシャお嬢様」
「あぁ、マリアね。ありがとう。目が覚めたわ」
「昨夜のことは覚えていらっしゃいますか?」
目を覚ますと、私の専属メイドのマリアがいました。心配そうなマリアの顔を見つめていると、ひとりでに涙が流れ落ちていきます。起きあがろうとしても身体が動かない……どうなっているのでしょうか?
「マリア。身体が動かなくて起き上がれないわ」
精一杯言葉にしてそう伝えると、悲しそうな表情を浮かべたマリアは、走ってどこかにいってしまいました。
水の中に沈んだように、気持ちも浮かび上がりません。どうして……あぁ、わたくしなんて死んでしまったらいいのかしら? そう思って護身用のナイフを探します。見当たりませんわ。どこに入れたのかしら。死のうとおもうとなぜか身体が動きましたわ。
「サーシャお嬢様! 医師を連れてまいりました! 診察していただきましょう?」
「そう……」
マリアに言われるがまま、診察を受けます。
「……お嬢様は身体的な面では問題ないかと思います。どちらかというと、精神的な面ではないかと……」
医師のそんなセリフは、わたくしの頭には入ってきません。
あぁ、私の部屋は二階ですわ。落ちたら、死ねるのかしら?
「……お薬を処方します。お一人にならないように見守って差し上げてください。お近くに刃物等は置かないように」
そんなセリフが聞こえてきましたが、わたくしの頭には処理し切れません。
「……わかりました。私が必ずお嬢様をお守りします」
◇◇◇
「おい、サーシャ。怠けていないで早く起きろ。家庭教師の先生がお待ちだ」
お父様のそんなセリフが聞こえてきました。
あれから、食欲もなくなり、ただただ眠気に襲われます。お薬の副作用でしょうか。起きると涙が止まらないのです。
「はい、お父様」
そう答えるものの、身体は動きません。
マリアと医者が必死にお父様を連れ出し、状況を説明します。ふん、と鼻を鳴らして出ていかれました。
「お嬢様。お召し上がりになりたいものはありますか?」
「何もいらないわ」
「ではお嬢様。お飲み物だけでも召し上がってください」
マリアがそう言って差し出してきた飲み物は、温かく、優しい香りがしました。
「……ポタージュ?」
「お嬢様のお好きなお芋のポタージュを、私がお作りいたしました。美味しくできたと思うので飲んでいただけますか?」
そこまで言われ、一口口に入れると、甘くて優しいお芋の香りが一気に鼻を抜けていきます。遅れて優しいハーブの香りも漂ってきました。温かくて優しい。
「……美味しい」
「お嬢様……ありがとうございます。お気に召してくださったのならば、私がどれだけでもお作りいたしますからね?」
「ありがとう。マリア」
マリアの優しさに少し気持ちが楽になった気がしました。
「マリア。本をとってちょうだい? 少しでも座学を進めておきたいわ」
「お嬢様……今はお身体を休めることを優先なさってください。お嬢様のお身体が悲鳴をあげていらっしゃいますわ」
「そう……」
「どうしても読者がしたいと思っしゃるのならば、マリアおすすめのお笑い小説になさってくださいませ」
「ありがとう。読ませてもらうわ」
そう言って視線を向けると、なぜか本が読めません。いつも余暇には読書をして過ごしていたわたくし。なぜ本が読めないのか、理解できません。読めても少しするとすぐに疲れてしまいます。
「……読めない、わ」
「お嬢様……では、なにもなさらずゆっくりすることが必要なのでしょう。まずはゆっくり過ごしてください」
「ありがとう」
そう言われたわたくしは、眠りました。お薬の影響で眠くなるのです。ただただ、ひたすら眠りました。
310
あなたにおすすめの小説
私は《悪役令嬢》の役を降りさせて頂きます
・めぐめぐ・
恋愛
公爵令嬢であるアンティローゼは、婚約者エリオットの想い人であるルシア伯爵令嬢に嫌がらせをしていたことが原因で婚約破棄され、彼に突き飛ばされた拍子に頭をぶつけて死んでしまった。
気が付くと闇の世界にいた。
そこで彼女は、不思議な男の声によってこの世界の真実を知る。
この世界が恋愛小説であり《読者》という存在の影響下にあることを。
そしてアンティローゼが《悪役令嬢》であり、彼女が《悪役令嬢》である限り、断罪され死ぬ運命から逃れることができないことを――
全てを知った彼女は決意した。
「……もう、あなたたちの思惑には乗らない。私は、《悪役令嬢》の役を降りさせて頂くわ」
※全12話 約15,000字。完結してるのでエタりません♪
※よくある悪役令嬢設定です。
※頭空っぽにして読んでね!
※ご都合主義です。
※息抜きと勢いで書いた作品なので、生暖かく見守って頂けると嬉しいです(笑)
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
転生者だからって無条件に幸せになれると思うな。巻き込まれるこっちは迷惑なんだ、他所でやれ!!
柊
ファンタジー
「ソフィア・グラビーナ!」
卒業パーティの最中、突如響き渡る声に周りは騒めいた。
よくある断罪劇が始まる……筈が。
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。
10回目の婚約破棄。もう飽きたので、今回は断罪される前に自分で自分を追放します。二度と探さないでください(フリではありません)
放浪人
恋愛
「もう、疲れました。貴方の顔も見たくありません」
公爵令嬢リーゼロッテは、婚約者である王太子アレクセイに処刑される人生を9回繰り返してきた。 迎えた10回目の人生。もう努力も愛想笑いも無駄だと悟った彼女は、断罪イベントの一ヶ月前に自ら姿を消すことを決意する。 王城の宝物庫から慰謝料(国宝)を頂き、書き置きを残して国外逃亡! 目指せ、安眠と自由のスローライフ!
――のはずだったのだが。
「『顔も見たくない』だと? つまり、直視できないほど私が好きだという照れ隠しか!」 「『探さないで』? 地の果てまで追いかけて抱きしめてほしいというフリだな!」
実は1周目からリーゼロッテを溺愛していた(が、コミュ障すぎて伝わっていなかった)アレクセイ王子は、彼女の拒絶を「愛の試練(かくれんぼ)」と超ポジティブに誤解! 国家権力と軍隊、そしてS級ダンジョンすら踏破するチート能力を総動員して、全力で追いかけてきた!?
物理で逃げる最強令嬢VS愛が重すぎる勘違い王子。 聖女もドラゴンも帝国も巻き込んだ、史上最大規模の「国境なき痴話喧嘩」が今、始まる!
※表紙はNano Bananaで作成しています
蔑まされた没落貴族家の悪役令嬢ですが、この舞台の主役は私がやらせていただきます!
あぷりこっと
恋愛
「君の嫉妬深さにはもう辟易しているんだ」
婚約者のハイベルクにそう告げられた瞬間、レーウは確信した。
――計画通り。
何も知らない侯爵令嬢ランダ。王国最強と謳われた騎士団長ハイベルク。彼がその双剣を振るう相手を間違えた時、破滅のカウントダウンは始まった。
世間がレーウを嫉妬に狂った没落家の伯爵令嬢と蔑んでいる間、彼女は自警団と共に貴族院の秘密を暴き敵の逃げ場を奪い続けていた。
格安警備会社へのすり替え、配電盤の掌握、そして夜視の魔導具。
感情を切り捨て毒となった令嬢が公爵邸舞踏会を、社会的抹殺の舞台へと変える。
「不運と踊る?……いいえ。私に踊らされていたのだと、地獄で気づきなさい!!」
※ヒロインの活躍が凛々しいので応援してください♪
やはり婚約破棄ですか…あら?ヒロインはどこかしら?
桜梅花 空木
ファンタジー
「アリソン嬢、婚約破棄をしていただけませんか?」
やはり避けられなかった。頑張ったのですがね…。
婚姻発表をする予定だった社交会での婚約破棄。所詮私は悪役令嬢。目の前にいるであろう第2王子にせめて笑顔で挨拶しようと顔を上げる。
あら?王子様に騎士様など攻略メンバーは勢揃い…。けどヒロインが見当たらないわ……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる