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4.悪役令嬢、楽しみを探す
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「お嬢様。外に少しだけ散歩に出てみましょうか」
髪を結って欲しい、とマリアに伝えるとそう提案されました。庭を散歩するだけで、誰にも会わないようにする。そう言われて、庭を歩きます。美しい花たち、小さな小鳥たち。まじまじと見たのは初めてな気がしました。
「綺麗ね」
わたくしがそう呟くと、マリアが微笑んでくれました。
「お嬢様。こちらで少し、ティータイムにいたしませんか?」
わたくしの好物のお菓子を並べ、マリアがいい香りのお茶を淹れてくれます。
「ハーブティーです。気持ちをリラックスさせると言われています」
少しお菓子を齧り、つぶやきます。
「おいしいわ」
ほっとしたようにマリアが笑い、わたくしに問いかけます。
「お嬢様。一日の中で少しずつで構いません。お嬢様のお好きなこと、楽しいことをしませんか?」
「好きなこと……」
マリアに言われ、わたくしは首を傾げます。好きなこと……いったいわたくしの好きなことってなにかしら? 令嬢教育で忙しく、今まで好きなことをしたことがありません。そう思って、わたくしは思い悩みました。
「お嬢様。なんでもやってみたいことでいいんです。馬に乗って野を駆けてもかまいません。ここでは、誰もお嬢様を知らないのですから」
「そんなはしたないこと……してもいいのかしら?」
「はい。お菓子作りに刺繍、裁縫。なんでもやってみましょう。お嬢様の好きを探すのです」
それから、一日の中で少しずつ、いろんなことに挑戦しました。わたくしの“好き”がわからなくても、マリアがわたくしの表情を見て“好き”を見つけてくれました。馬に乗って駆けること。動物たちと触れ合うこと。
「わたくし、小鳥を飼ってみたいわ」
「奥様に相談しておきますね」
小鳥を一羽、飼うことにしました。
馬に乗って、野を駆けます。最初の頃よりも上手くなった気がします。マリアが笑ってくれます。
「何をやっている!?」
いつものように馬に跨ったところで、突然大きな声が響きました。お父様です。息が苦しくなり、わたくしは慌てて馬からおりました。
「療養と聞いていたが、遊んでいるだけじゃないか!? それに、令嬢として相応しくないことをして! 恥ずかしくないのか!?」
楽しかった気持ちが急速に萎んでいくのがわかります。マリアがお父様に反論してくれますが、わたくしはもうなんとも思えません。
「大体だな? お前が弱いから、こんなことになっている! 我が家の娘として恥ずかしくないのか!? 貴族社会の笑い者だぞ!? お前が悪いんだからな!?」
ひたすらに罵倒され、わたくしの目からは勝手に涙が流れ落ちます。あぁ、誰か。わたくしを助けて。他人に助けを求めることしかできない。わたくしは、なんて弱い。なんて無力。なんて役に立たない。なんて、人間失格……。生きている価値なんて……ないのだわ。
「あなた!? いえ、サーシャちゃんを追い詰める悪魔よ!」
走ってきたお母様がお父様とわたくしの間に立ちはだかってそう言います。
「大丈夫? マリア。サーシャちゃんを室内に。あなたは、わたくしとお話ししましょうね?」
「シャ、シャーリー。しかし、サーシャが遊んでいるんだ。貴族令嬢として相応しくない、乗馬なんてして!」
「わたくしだって馬くらい乗るわよ! 今はサーシャちゃんは療養中なの! わかっている!? そんな子を追い詰めるなんて……」
お母様の怒鳴り声が聞こえながら、わたくしはマリアに連れられて室内に入ります。ごめんなさい。お父様、お母様。わたくしのような不出来な娘のせいで喧嘩させてしまって。家の役に立たないわたくしは、なんと無価値なのでしょう。
「お嬢様。少し呼吸が苦しそうですね。お薬飲みましょうか」
マリアに薬を差し出され、わたくしは薬を飲み干します。この後、お父様と食事を取らないといけないのでしょうか。手が痺れ、呼吸が苦しくなります。涙も止まりません。
せっかくきていただいたのに、お父様に会えないわたくしはなんて悪い娘なのでしょう。
その日から、わたくしは涙が止まらなくなりました。
髪を結って欲しい、とマリアに伝えるとそう提案されました。庭を散歩するだけで、誰にも会わないようにする。そう言われて、庭を歩きます。美しい花たち、小さな小鳥たち。まじまじと見たのは初めてな気がしました。
「綺麗ね」
わたくしがそう呟くと、マリアが微笑んでくれました。
「お嬢様。こちらで少し、ティータイムにいたしませんか?」
わたくしの好物のお菓子を並べ、マリアがいい香りのお茶を淹れてくれます。
「ハーブティーです。気持ちをリラックスさせると言われています」
少しお菓子を齧り、つぶやきます。
「おいしいわ」
ほっとしたようにマリアが笑い、わたくしに問いかけます。
「お嬢様。一日の中で少しずつで構いません。お嬢様のお好きなこと、楽しいことをしませんか?」
「好きなこと……」
マリアに言われ、わたくしは首を傾げます。好きなこと……いったいわたくしの好きなことってなにかしら? 令嬢教育で忙しく、今まで好きなことをしたことがありません。そう思って、わたくしは思い悩みました。
「お嬢様。なんでもやってみたいことでいいんです。馬に乗って野を駆けてもかまいません。ここでは、誰もお嬢様を知らないのですから」
「そんなはしたないこと……してもいいのかしら?」
「はい。お菓子作りに刺繍、裁縫。なんでもやってみましょう。お嬢様の好きを探すのです」
それから、一日の中で少しずつ、いろんなことに挑戦しました。わたくしの“好き”がわからなくても、マリアがわたくしの表情を見て“好き”を見つけてくれました。馬に乗って駆けること。動物たちと触れ合うこと。
「わたくし、小鳥を飼ってみたいわ」
「奥様に相談しておきますね」
小鳥を一羽、飼うことにしました。
馬に乗って、野を駆けます。最初の頃よりも上手くなった気がします。マリアが笑ってくれます。
「何をやっている!?」
いつものように馬に跨ったところで、突然大きな声が響きました。お父様です。息が苦しくなり、わたくしは慌てて馬からおりました。
「療養と聞いていたが、遊んでいるだけじゃないか!? それに、令嬢として相応しくないことをして! 恥ずかしくないのか!?」
楽しかった気持ちが急速に萎んでいくのがわかります。マリアがお父様に反論してくれますが、わたくしはもうなんとも思えません。
「大体だな? お前が弱いから、こんなことになっている! 我が家の娘として恥ずかしくないのか!? 貴族社会の笑い者だぞ!? お前が悪いんだからな!?」
ひたすらに罵倒され、わたくしの目からは勝手に涙が流れ落ちます。あぁ、誰か。わたくしを助けて。他人に助けを求めることしかできない。わたくしは、なんて弱い。なんて無力。なんて役に立たない。なんて、人間失格……。生きている価値なんて……ないのだわ。
「あなた!? いえ、サーシャちゃんを追い詰める悪魔よ!」
走ってきたお母様がお父様とわたくしの間に立ちはだかってそう言います。
「大丈夫? マリア。サーシャちゃんを室内に。あなたは、わたくしとお話ししましょうね?」
「シャ、シャーリー。しかし、サーシャが遊んでいるんだ。貴族令嬢として相応しくない、乗馬なんてして!」
「わたくしだって馬くらい乗るわよ! 今はサーシャちゃんは療養中なの! わかっている!? そんな子を追い詰めるなんて……」
お母様の怒鳴り声が聞こえながら、わたくしはマリアに連れられて室内に入ります。ごめんなさい。お父様、お母様。わたくしのような不出来な娘のせいで喧嘩させてしまって。家の役に立たないわたくしは、なんと無価値なのでしょう。
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マリアに薬を差し出され、わたくしは薬を飲み干します。この後、お父様と食事を取らないといけないのでしょうか。手が痺れ、呼吸が苦しくなります。涙も止まりません。
せっかくきていただいたのに、お父様に会えないわたくしはなんて悪い娘なのでしょう。
その日から、わたくしは涙が止まらなくなりました。
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