159 / 312
新たな反逆者
3
しおりを挟む「幸いなことに、私はこの世界に転生したときから、身の安全なんてものは求めていないんだよ。リーミア・ミルクリン、君はその剣で、父を貫いたのかい?」
ランスはリーミアの剣に自らの剣をぶつけてみせる。
「え、転生……?」
それに、剣で王様を貫いたって今言っていたけど。
「国王の行いは赦されるものではありません。王妃様を求めるあまり、魔法兵器の実験を行い、死傷者を出しました。シュシュ様が身を削り、復興させたにもかかわらず、シュシュ様を処刑しようとなさる。そのような王こそが、処刑されるべきだったのです」
清らかな気配をまとっていたリーミアには、陰鬱な気配が濃厚になっている。まるで、出会ったばかりのランスのようだ。
「リーミア、まさか……。王様を殺しちゃったの?」
私の言葉に、リーミアはうなずいた。
「シュシュ様をお守りするためです。シュシュ様はこの国を出て、我が国へいらしてください。身の安全を確保いたします」
自分の正義に忠実なのは、いいと思うし、否定しない。でも、かつて殺された経験のある私は、一つだけ物申しておきたかった。
一つだけ、刺殺被害者代表として言っておかなければ!
「あのね、リーミア。知ってる?刃物で貫かれるのってかな~り痛いんだよ?転生してもね、まだ記憶に残ってる。きっと転生数回分は引きずるレベルで、めちゃくちゃ痛いよ。殺した相手の顔に似ている人には無条件で反応しちゃうくらい、魂に刻まれてる。左胸から刃物がズルって抜けたときはね、あ、魂が抜けたって思ったんだ。自分の正義を貫く精神もいいけど、刃物で殺されるのはめっちゃくちゃ痛いってことだけは、覚えといてね!」
「転生……?」
ランスが呟いた。
「シュシュ様は、刃物で貫かれたことがおありなのですか?」
と不思議そうにリーミアが尋ねてくる。
「ま、そんな感じ~。で、その王様はどこにいるの?王の間?」
と私が尋ねれば、リーミアは目を丸くしそして頷いた。
「リーミア、殺人現場じゃなくって……えーと。王様がいる場所に行くよ」
「行かせるわけには、参りませんっ!」
「じゃあ、バトルだね」
「えっ!?」
私はランスに視線を送る。ランスは明後日の方向を一度見た後で、ため息をつきながら細身剣を数回振りかざし、私のドレスの裾を切り裂いた。
「ランス様!何を……っ!」
ランスは私の意図を完璧にくみ取ってくれるようだ。おかげで動きやすくなった。
怪訝そうにシュシュ様?とリーミアが私の名を呼んだとき、私は両腕でリーミアの胴体に巻きつく。即座に身体を背中側にひねって、床に落とした。
スープレックスだ。
リーミアは受け身を取ったけれども、強かに床に打ち受ければさすがにすぐには起き上がれないらしい。私は睫毛の上に隠していた針を一本抜き取り、リーミアの首元に差し込む。ロアシュ特製の麻酔針だ。
「シュ、シュシュ様……。なぜ……っ!?」
私の方に手を伸ばしたリーミアの瞳から、スッと光が消え、その場で気を失った。
「ごめんね、リーミア!私はまだ悪役を全うしていないのだ~!」
ちょうどその時民衆の間を縫い、クラドとギリアン兄がちらにやっと近づいてくるのが見える。
「シュシュ、無事でよかった」
クラドとギリアン兄には伝えておいた方がいいことがあった。けれど今は、それ以上に急ぎの用事がある。
「二人とも後で~っ!」
二人の脇をすり抜けて、私は城へ向かって駆けだした。
王の間に行かなければ!
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる