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ヒロインと婚約者とアカデミー生活
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しおりを挟む魔法有力派と魔法無力派の対立はどんどん弱まっていた。筆頭であるクラドとギリアン兄が友好的な姿をアピール出来たことで、対立構造が緩んでいったのだ。
けれど、今は、別の派閥が出来ていた。
学園のプリンス推進派閥と、学園のダーリン推進派閥だ。クラド、ルーカスや、ギリアン兄、ロアシュを中心に学園のプリンスを選びたい派閥と、学園のダーリン、恋愛相手を選びたい派閥が生まれている。
そこにどんな違いがあるのか分からない。サニィが言うには、男の子同士のラブを見たい派閥と自分の恋愛相手としてふさわしい相手を選びたい派閥の対立らしい。
説明を受けてもよく分からない。
リーミアとキャディ、ロミアは学園のダーリン推進派閥で、コルフィやココワが学園のプリンス推進派閥だという。
しょせん女の子達の間の遊びだと男子生徒はほとんど無関心だった。私も同じように無関心だったけれど、しばらくすると、私とクラドやルーカス、ダートやギリアン兄、ロアシュのツーショットの絵が描かれている段幕が飾られるようになる。
一方で学園の男子生徒のワンショットの段幕も飾られるようになり。それぞれの派閥の筆頭が派閥への投票を求めはじめていた。食堂やホールに飾られる段幕は、教員が日夜引き剥がしていく。絵が扇情的だという理由らしい。ただ、熱心な女の子達が毎朝飾り直しているのだった。
推し活みたいなものかな?とぼんやりと段幕を見あげる。見ようによってはアイドルのポスターのようにも思えた。
投票したい段幕の下に、自分の家の紋章や名前を縫い込むのが投票方法らしい。現状で票数の多いツーショットの段幕を見つけ、私は見なかったことにする。その組み合わせは、あまり好きじゃない。
そして今度はワンショットの段幕を見あげて、自分なら誰に投票したかな?と数秒悩む。
単純な見た目の好みなら一択だ。その首筋のラインや筋肉の感じは申し訳ない。前世からその点の好みは変わっていないようだ。
でも――――
「ラッキーは人気があるね。プリンスとしても、ダーリンとしても」
と声もなくダートが言う。音もなくやって来て、声もなく話しかけるダートはやっぱり不思議だ。
今回アカデミーで初めて出会ったのに、初めて会った気がしない。深海色の瞳を見ていると容姿は全く違うのに思い出す人物がいるのだ。
そう目の色だけは同じだった。
「奉納の日が近づいているよ。領主達が城内に入るチャンスだ。君はロアシュ達と作戦を実行するんだろう?」
隣にやって来たダートは言う。
年に二回ある宝物を捧げる期間がやって来たのだという。前回は奉納の日を私自身は経験していない。
ただギリアン兄に協力して、リーブル家にあった宝石に片っ端から魔法を込めて、宝物を作っていた記憶だけはある。
地下室にはギリアン兄の作った美術品がたくさん置かれていた。今回ギリアン兄はサニィの別荘で一緒に作った呪具を奉納するらしい。
ルイドラン家では自由気ままに遊び回っていたので奉納の日を気にしたことはない。ルイドラン家の家族は、魔法力はそれほどではないにしても、交友関係が広いので奉納の日の前になると、クラドのお父さんがどこからともなく宝物を持ち帰って来ていた。
クラドも少し魔法力を持っていたから、自作することもあったらしい。今もまた、クラドはルイドラン家に戻っているみたいだ。
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