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しおりを挟む応募してくれた4人を送り出し、朔耶が訓練室から出たところで、学と名都と鉢合わせた。
「げ」
朔耶は一度声を漏らしてしまうが、見て見ぬふりをしよう、と思って視線を逸らして、そそくさと逃げることにする。
まず、学が朔耶を見咎めたのが最初で、
「よ」
と声をかけてきた。
朔耶は思わず視線を逸らす。その後、気づいた名都が、
「朔耶、ごめん。その。学とのこと」
と声をかけてくる。
名都は話を続けたいようだったけれど、朔耶は色恋沙汰の泥沼ようなことを名都と演じたくはない。ペアとして良好かどうか、学園生活で重要なのはそれだけだ、と朔耶は思っている。
「謝る必要ないよ。最良のペアを探すのは普通のことだし。またね、名都」
と強引に話を終えて、通り過ぎようとするけれど、学が手首を掴んできた。
「無視すんな。どうせ、ペアが見つからないんだろ。朔耶の構造理解、リミッター解除への抵抗力。どれも俺に及ぶ奴なんか出てくるわけない」
と言う。
ああ面倒くさい、と朔耶は思った。岬が男女のペアは問題が多い、というのに心底共感する。
「訓練室行くんでしょ。二人はペアになりたてなんだし、いくら天才でも、シミュレーターは必須。私生活での功績のおかげで、ラブラブ~な意味でのペアリングには問題ないかもしれないけど」
朔耶は皮肉たっぷりに言って、学の手を振り払った。
名都が息を飲むのが分かる。
「私は学と違って、ランキング上位に入りたいとは思わない。学園卒業したらまたはぐれに戻るつもりだから。貞操措置相手を探しているエリートとは違うんだよ」
朔耶がそう言うと、学は目を見開いた。入学当初、学が貞操措置相手を探していると言っていたのを思い出したのだ。
今ではその気配は一切ないので、最大限の皮肉のつもりだった。
「は、なんだそれ。はぐれ?それでいいのかよ」
吐き捨てるように学は言う。
いくら自分が一番上手く操作できるからといって、自分のもの扱いはうんざりだ、と朔耶は思った。
「心配してもらわなくても、最高のペアを見つけたから」
とうそぶく。
名都が何か言いかけた気がしたけれど、面倒事からは逃げるに限る、の姿勢で朔耶は逃げ出した。
今のところ最高のペアなんていない。
学はたしかにペアとしては良かった。生活や素行はともかくとして、優秀なパペッティアなのだ。そこまで考えた後、朔耶は思いつく。
学はたしかに優秀だが、2回生レベルでの最強だ。もし上の学年であれば、どうだろう?
情報室に行き、端末から生徒の情報を検索にかければ、パペッティアとペアの一覧を閲覧できた。基本的に学園は4年の在籍期間で卒業だが、様々な事情でそれ以上の在籍歴の者もいる。3回生以上のペアがいないパペッティアを絞り込み検索にかけた。
数名ヒットするがランクを見てみれば、Cランク以下がほとんどだ。
全体のパラメーターを見て、精神力が高ければいいか、と思ったけれど、著し精神力低いため、ランクが低いものもいた。
朔耶とのペアリングは精神的な負荷が高いため、精神力は必須だ。中で目を引いたのは、Sランクの8回生という人物だ。登其亮(とき りょう)。その名前を見て驚いた。学と同じ姓だったからだ。
朔耶は連絡先を確認し、その人物にコンタクトをとってみることにする。
学に聞けば知っているかもしれない、とは思ったけれど、極力接触したくなかったので、本人へ直接コンタクトした。
モバイルの連絡先に、
「ペアを探しています、ぜひシミュレーターをしてくれませんか」
と連絡を入れたら、すぐに返信が来る。
「IDを調べた。特例ドール、朔耶。学のペアだろ」
「解消しています、ランクバトル前に新しいペアを探したいんです」
「目的は?」
「ランク中以上。グレードが下がらない程度に」
「優勝を目指せ。それならペアになる」
優勝なんて出来るわけがない、と朔耶は思ったが、目指すだけなら自由だ。
「目指します」と連絡したら、訓練室へ来いと言われたので、訓練室へ行く。
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