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しおりを挟む待っていたのは、伸び放題にしたくせのある髪で目が覆われてしまっている長身の人物だ。
表情が分からなかったが、前置きは一切抜きに、
「さっさと始めよう」
と言う。
朔耶は着替え室に行き、シミュレーター用の装備を装着した。
亮の元へ行くと、朔耶の後ろ髪をかき分け、延髄にプラグを差し込んでくる。
その瞬間から、違和感があった。
同年代のパペッティアとのペアリングでは感じたことがないくらいに、五感がクリアだ。
イメージ通りに操作されている感覚がある。
シミュレーターではターゲットの補足も早く、攻撃のスピードも速く的確だ。ペアリング性も非常に高い。さすがSランクだと思ったが、その次の瞬間、頭に強い痛みを感じた。
視界がぐらりと揺れたかと思えば、身体に強い重力が襲いかかって来る。
さっきまでの軽快な動きが嘘のように、身体が鉛のように重くなるのだ。
限界だ、と思ったときにプラグを引き抜かれた。
「ペアリングが弱いな」
と亮は言い、髪をかき上げる。
目鼻立ちが見え、学に似た顔が明らかになった。
朔耶は動揺を隠せない。その次の瞬間、装備のスーツの襟首をつかまれ、唇を重ねられた。スーツのジップをおろされて、隙間から手を入れこまれる。
「何を」
「ペアリング向上には接触が有効だ。そのくらい知っているだろ」
「そんな方法じゃ、その場で一時上がるだけ。相性が悪ければ、長期的に見れば下がる。恋愛ごっこをするつもりは、ないです」
「それはお前の一方的な意見だな」
スーツを一気にずりさげられたので、朔耶の素肌が露になる。
「本当にペアリングのためか、疑わしい」
皮肉を言いたくもなった。
壁に背をあずけさせて、片足をあげるように誘導された。こちらからもプラグを挿せば、一時的なペアリングは強化されるだろう。かつて経験済みだ。そのペアは既に解消したわけだが。
「やめる」
「一度言ったことを撤回するのか?」
「別の方法で引き上げる」
「それは出来ない相談だ」
亮の身体がグイと近づき、プラグが核に掠める気配がした。ビリビリと下腿がしびれ、ううう、と呻き声がもれてしまう。
恐らく、器が違いすぎるのだ。強引にねじりこもうとする動きに、電撃のような痛みと痺れを感じた。
脳内に戦闘の映像が流れ込んできて、亮のリミッターが外れ、朔耶を巻き込もうとしているのが分かる。恐らく、亮は特例のパペッティアなのだ。
「やめ」
言葉が叫び声になり、気が遠くなったとき、ドアが開く音がした。
「俺の朔耶になにしてんだよ!」
俺のではない、と朔耶は心の中で訂正しながら、意識が巻き取られていくのを感じた。
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