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家族顔合わせの約束
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佐鶴夫婦の死は、夫婦間のトラブルとして報じられていた。本局のデータベースには、野生の生き物による強襲と書かれている。
随分と適当で処理が雑だ、と私は思う。
今回の事件は、解文師により禁書の保管場所にされた佐鶴沙織が暴走した。巻き込まれた夫の佐鶴涼介もまた、暴走し互いに殺傷し合った事件だ。
ただ本局のデータベースは、禁書と直接接触したことのない者も閲覧できる。漠の浄化に携わっているだけの挑文師からすれば、不安をあおるだけの不要な情報だ。
禁書や禁術に特別関心がない限りには、そんな情報は必要ない。
「美景さん、一つ。伝え忘れていたことがあるんです」
佐鶴夫婦の情報が載っているデータベースを共に確認していたときに、融はおもむろに口を開いた。
「何ですか?」
カウンターテーブルで横並びの状態で、私は融を見あげる。融は少し極まりの悪そうな顔になっていた。
「最初があやとりでの自己紹介となってしまったので。俺の家族の話をしていませんでしたよね」
融とは初対面で結婚を申し込まれ、その場で成婚したようなものだ。あやとりで見た光景で、私は彼と結婚することを決めたと言っていい。
「融さんのご家族ですか?」
「はい。俺には父と妹がいます。父は寧月幻哉(げんや)、妹は解(さとり)といいます」
「お父様と妹さんがいらっしゃるんですね」
私は完全に失念していた。私に千景がいるように、融にだって他に家族がいる可能性は高いのに、お母さんのことしか念頭になかった。
「結婚のご挨拶にはうかがっていませんでしたよね」
「父が寧幻神明宮の宮司で妹がその跡取りです。本局からいらぬ探りを入れられないように、世帯分離をしていました」
「寧幻神明宮ですか?志野尾ではかなり有名ですよね。境内の梛木が美しいと聞いています」
ありがとうございます、父は喜ぶと思いますよ、と融は言う。
「妹さんがいらっしゃるんですね?」
「はい、双子の」
と融が言ったので、私はえ、と声をあげてしまった。そのパターンは想定していなかったのだ。
随分と適当で処理が雑だ、と私は思う。
今回の事件は、解文師により禁書の保管場所にされた佐鶴沙織が暴走した。巻き込まれた夫の佐鶴涼介もまた、暴走し互いに殺傷し合った事件だ。
ただ本局のデータベースは、禁書と直接接触したことのない者も閲覧できる。漠の浄化に携わっているだけの挑文師からすれば、不安をあおるだけの不要な情報だ。
禁書や禁術に特別関心がない限りには、そんな情報は必要ない。
「美景さん、一つ。伝え忘れていたことがあるんです」
佐鶴夫婦の情報が載っているデータベースを共に確認していたときに、融はおもむろに口を開いた。
「何ですか?」
カウンターテーブルで横並びの状態で、私は融を見あげる。融は少し極まりの悪そうな顔になっていた。
「最初があやとりでの自己紹介となってしまったので。俺の家族の話をしていませんでしたよね」
融とは初対面で結婚を申し込まれ、その場で成婚したようなものだ。あやとりで見た光景で、私は彼と結婚することを決めたと言っていい。
「融さんのご家族ですか?」
「はい。俺には父と妹がいます。父は寧月幻哉(げんや)、妹は解(さとり)といいます」
「お父様と妹さんがいらっしゃるんですね」
私は完全に失念していた。私に千景がいるように、融にだって他に家族がいる可能性は高いのに、お母さんのことしか念頭になかった。
「結婚のご挨拶にはうかがっていませんでしたよね」
「父が寧幻神明宮の宮司で妹がその跡取りです。本局からいらぬ探りを入れられないように、世帯分離をしていました」
「寧幻神明宮ですか?志野尾ではかなり有名ですよね。境内の梛木が美しいと聞いています」
ありがとうございます、父は喜ぶと思いますよ、と融は言う。
「妹さんがいらっしゃるんですね?」
「はい、双子の」
と融が言ったので、私はえ、と声をあげてしまった。そのパターンは想定していなかったのだ。
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