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家族顔合わせの約束

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「ハヤテ先生は双子しかスカウトしませんよね。ハヤテ先生は雌雄眼ですから。ハヤテ先生の術を継承するのは雌雄の双子だけです」
「そういえば、そうですね。どうしてハヤテ先生から融さんがスカウトされたのか、と思っていました」
「美景さんも、双子の弟さんがいらっしゃるので。恐らく同じなのでは、と思うのですが」

 融はそう言って言葉を切る。
 私と千景には、雌雄鳥の姿があった。その姿をとれば、ハヤテ先生からそれぞれ継承した術を合わせられるのだ。

「この頃は漠の浄化に手こずることが増えています。数も多いですし、何より広範囲です。一度、能力に関して美景さんと情報共有をしておきたいと思っていました。それに、いわくつきの弟子たちがいつやって来るとも、分かりません」
「そうですね。私たちには雌雄鳥の姿があります。ただ、私は力に関しての記憶がほとんどないんです。弟と記憶と力を分け合っていました。本局の監査があったときに、禁術に関してバレないようにと。私は水盤表にいますから、禁術に関する記憶は弟が持っています」

「なるほど、理に適っていますね。例え美景さんがあやとりをされても、禁術の痕跡は見えない」
「そうなりますね。弟は小賢しいので、その辺りは抜け目ないんです」
「俺たちも雌雄鳥ですが、その形を取ることはないと思います。馬が合わないので」
「馬が合わないんですか?」
「はい、全く合いません」
 融はバッサリと切り捨て、
「けれど、役立つとは思います。いざとなれば志野尾から召喚します」
 と言った。

 スクールでハヤテ先生から継承してもらったときを最後に、その姿をとったことはない。これまでの漠の浄化程度であれば、その姿は必要なかったからだ。
 けれど、甲子童子の弟子たちがやって来るとなれば、必要になるかもしれない。
 佐鶴汐の記憶が欲しいとなれば、彼女の友人であったルイしゃんを放っておくわけがないからだ。
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